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暗がりのなかに灯したランプのようなモダン・クラシカルの世界

2015.10.19

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モダン・クラシカルは、静寂と最も相性のよい音楽だ。しかし、残念な事に日本での認知度はまだ低い。

この音楽の特徴は、クラシックで用いられる楽器が奏でているところへ、時折、電子音を取り入れるところにある。
そうして創られた音楽は、柔らかで、とても親しみやすい。
そして、イージーリスニングと呼ばれる音楽とは一線を引く。

モダン・クラシカルの音楽は、終始静かな哀しみに満ちている。
けれでも、決して暗くはない。暗がりのなかに灯したランプのような暖かさが、辺りを包むからだ。

モダン・クラシカルの作曲家としてよく知られているのがピーター・ブロデリック、ニルス・フラーム、ダスティン・オハロラン。彼らはベルリンを中心にして創作活動に勤しんでいる。

その中で今回はダスティン・オハロランについて紹介したい。

ダスティン・オハロランの音楽は、とりわけ親しみやすい。
特に、独学で身につけたという彼のピアノは、かざりけがなく、どこか懐かしい香りがする。
彼のソロピアノの作品をまとめた『Piano Solos Vol.1 and 2』というアルバムでは、その魅力を存分に堪能する事が出来る。特に、「Opus 20」は、映画『Breathe』の中でも奏でられているだけあって、印象的だ。



また、アルバム『Lumiere』では、弦楽器や電子音を取り入れて、ソロピアノとはひと味違った色気を魅せている。
「We Move Lightly」では、ミニマリズムのピアノに弦楽器が重なり、電子音が細かな砂塵のように舞う。まるで、砂漠を歩く一人の男の絵だ。

 

ダスティン・オハロランは、音を聴くと色が見える、という共感覚の持ち主である。

その感覚は、彼の音楽創作上、欠かす事の出来ない大切な要素となっている。

彼はあるインタビューの中で、作曲のアプローチの方法は、画家がキャンバスに色を足して描いていく事と似ている、と述べている。

ダスティン・オハロランの音楽から、懐かしい気持ちや、どこか絵画的印象を受けるのは、そんな彼の感覚によるものなのかもしれない。

ソフィア・コッポラ監督による『マリー・アントワネット』の音楽を担当した後、彼の昨今の創作活動は、映画音楽が中心となっている。

これから先、ますます彼の音楽が世界に羽ばたくことになりそうだ。

(横山起朗)

Dustin O’halloran『Piano Solos Vol.1 and 2』
p*dis



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