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もう青い瞳のソウルなんて言わせない~ダリル・ホール&ジョン・オーツ

2015.11.02

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ダリル・ホール&ジョン・オーツが真のソウル・シンガーであることを証明したのは1980年代になってからだ。

ウィリアム・ペンが17世紀にアメリカでペンシルバニアを建設し、あらゆる人種に宗教の自由を保障したことから、宗教的迫害を受けた人々がヨーロッパ中からペンシルバニアに押し寄せた。
だからペンシルバニア州には古くから、多種多様な宗教や人種の移民が共に暮らしている。

ペンシルバニア州の農村地帯であったノース・コベントリーで生まれたダリル・ホールは、いち早く工業化が始まっていた隣町のポッツタウンの、イタリア人や黒人が多く住むゲットーに子供の頃からよく出入りしていた。
そして14歳の時にはポッツタウンの聖歌隊のメンバーだった4人と、ディー&ジ・オリジナルズというドゥーワップ・グループを結成して歌った。

その頃のフィラデルフィアでは、ドゥーワップがリバイバルしていたのだ。

フィラデルフィアのテンプル大学に入学してからは、当時アイドルだったテンプテーションズと大学名を掛け合わせて、テンプトーンズというドゥーワップ・グループを結成した。
アップタウン・シアターのタレント・ショウに出演した時、ゲストだったジェームス・ブラウンのバンドがテンプトーンズの伴奏も引き受けてくれて、本人たちも観客も多いに盛り上がった。

そのことがきっかけで、フィラデルフィアで人気のソウル・ミュージック・ステーション(ラジオ局)のDJだったジミー・ビショップのレコード・レーベルで、初のレコーディングをしてローカル・デビューを果たした。

やがてテンプトーンズが出演していた劇場で、ダリルはテンプテーションズのポール・ウィリアムスとエディ・ケンドリックスに出会い、仲良くなって彼らからアドバイスをもらったり衣装を貸してもらうようになる。

すごく励みになった。
二人は僕にとっては神だったからね。
テンプテーションズが大好きだったし、実際に会い一緒に過ごせたことは、とても貴重な経験となったね。


その後にダリルはジョン・オーツと出会って二人でコンビを結成するのだが、それもテンプテーションズをジョンに紹介したことがきっかけだったという。

1976年の「サラ・スマイル」と「追憶のメロディ」、1977年の「リッチ・ガール」がヒットして以降はしばらくヒット曲にめぐまれなかった。
だが、彼らはめげなかった。

ー1980年代は僕らの時代だー


ダリル・ホールの言葉の通り、1980年代に入ってからは「キッス・オン・マイ・リスト」「ふられた気持ち」「ユー・メイク・マイ・ドリームス」と、アルバム『モダン・ヴォイス』から立て続けにヒット曲が生まれたのだ。

1981年のアルバム『プライベート・アイズ』からもタイトル・ナンバーが全米ナンバーワンのヒットとなり、続けて「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」は全米チャートのみでなく、ソウル・チャートでも初の1位にランクインした。
このことは彼らの大きな自信につながった。

「I Can’t Go For That (No Can Do)」


R&Bやソウル・ミュージックに強く影響を受けた白人ミュージシャンを『ブルー・アイド・ソウル』と呼ぶ。
これは黒人と白人の両方からの揶揄が含まれることもある。

ライチャス・ブラザーズを始め、ロバート・パーマーやヴァン・モリソンなど、ここに括られて語られることも多い。
ダリル・ホール&ジョン・オーツも、ずっとそう言われ続けてきた。

しかし、ダリルはそのことを嫌っていた。

ひどい言われ方だったよ。だから僕はいつもジョークを言っていたんだ。
「もし黒人がオペラを歌ったら“ブラウン・アイド・オペラ”とでも呼ぶのかい?」
僕はソウル・シンガーなんだ。
目の色なんか関係ない。


そして1985年5月23日、彼らはアポロ・シアターでテンプテーションズのデヴィッド・ラフィンとエディ・ケンドリックスとともにライブを行い、名実ともにソウル・シンガーであることを示した。
その様子はアルバム『ライヴ・アット・ジ・アポロ』として発売された。

さらには同年7月13日のライヴ・エイドにもこのメンバーで出演した。

ポップ・ヒットが続いた1980年代も彼らのソウルは、ずっと変わらず燃え続けていたのだった。

「My Girl」David Ruffin, Eddie Kendricks, Hall & Oates live at the Apollo 1985


(ミュージックソムリエ 阪口マサコ)


参考:「ホール&オーツ ロックン・ソウルを求めて」林洋子著 シンコーミュージック
    NHK SONGS 2011年2月ダリル・ホール独占インタビュー

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