ミュージックソムリエ

ギター・ヒーローはまた生まれる

2017.02.20

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 かつてロックの華として活躍していたギター・ヒーロー。派手なアクションと目の覚めるようなテクニックで、ロック・ファンを夢中にさせてくれた。

Chris spedding – guitar jamboree



「ギター・ジャンボリーで音楽史を作った男達を見てくれ!」
ブルース、ジャズ、プログレ、パブ・ロックと様々なジャンルを渡り歩き、雇い主の要望通りのギター・プレイを提供していたセッション・ギタリスト、クリス・スペディング。
 彼が1975年に作った曲「Guitar Jamboree」は70年代、ロック少年の憧れであったギター・ヒーロー達に敬意を表したモノマネソングだ。それぞれのギタリストの個性を端的に表すフレーズを切り取るセンスが素晴らしい。
 アルバート・キングのようなレジェンドや、デビュー間もないクリスをレコーディング・メンバーに抜擢してくれたジャック・ブルースといった先輩はともかく、クリスと同期デビュー(1969年)だったポール・コゾフやレスリー・ウエストもバッチリ取り上げている。
 この曲を聴くと、クリス・スペディングがロックを楽しみ、ギター・ヒーローに夢中だったことが伝わってくる。

 ギター・ヒーローが活躍していたのは70年代ばかりではない。
 ブルースを蘇らせたスティーヴィー・レイ・ヴォーンが出現した80年代、アンガス・ヤングやスティーヴ・ヴァイなどが活躍したヘヴィ・メタル全盛期の90年代と、ギター・ヒーローはロックの歴史をいつも彩っていた。ただここ何年かはセンセーショナルなギター・ヒーローは現れていなかった。
 それでも憧れは不変であり、新しいギター・ヒーローの出現を心のどこかで皆、期待しているのではないか。

 2017年1月にデビューした、イギリス、オックスフォード出身のアーロン・キーロック。現在18歳の彼は新しいギター・ヒーローになる可能性を秘めている。
 ギターをおもちゃの代わりに与えられ、幼い頃からギタリストとして目覚めていたというアーロン。ブラックフットやスワンプ期のローリング・ストーンズ、フェイセズといった音楽と出会うことで、70年代のギタリスト達に憧れを抱き、特に好んで聴いていたブルース・ロックのルーツを探求することになる。ニューヨークで録音されたデビュー作『Cut Against The Grain』をプロデュースするのは、スティーヴ・ヴァイやザック・ワイルドの作品を担当したファブリジオ・グロッシだ。

Aaron Keylock – Spin The Bottle


 一つ一つの音を伸ばして揺らすブルージーなギターがミック・テイラーを彷彿とさせる、スワンプ・ロック・ナンバー「Spin The Bottle」。

Aaron Keylock – Just One Question @ The Borderline 2015


 エリック・クラプトンやゲイリー・ムーアが「Summer Time」を演奏しているかのようなスロウ・ブルース「Just One Question」。細身にして長身長髪。長い手足でうつむき加減に演奏する姿がかっこいい。ちなみにこの曲の動画には彼が12歳の頃に撮った2010年のものも残っている。
 これらの曲を始め、アルバムではジョニー・ウィンター、ロリー・ギャラガー、など様々なギタリストが乗り移っていくかのようなギター・プレイを披露している。

Aaron-Keylock-against-the-grain

 日本ではまだまだ知名度の低いアーロン・キーロックだが、彼は既にイギリス、アメリカ、ヨーロッパのロック・フェスティバルを経験しており、世界から注目されるギタリストになりつつある。
 残念ながら21世紀では「Guitar Jamboree」の世界をそのまま体験することは出来ない。それでも、ギター・ヒーローはまた生まれるのだ。

(文:ジェシー芝池)


Aaron Keylock『Cut Against the Grain』
Mascot Label Group

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