ミュージックソムリエ

マスター・ブラスター~7月よりも熱いスティーヴィー・ワンダーのレゲエ

2017.08.07

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みんな結構感じているんだ
7月よりも熱いってこと
世界はいろんな問題であふれているけれど
なんとしようとも俺たちには関係ないさ
公園からリズムが聴こえてくる
(ボブ)マーリーが箱の上で熱いぜ
今夜パーティーがあるらしい
街の外れの一角で


Master Blaster



強烈なレゲエ・ビートが印象的なスティーヴィー・ワンダーの大ヒット曲「マスター・ブラスター」(1980年)は、街角で夜通し繰り広げられるレゲエ・パーティーの熱いグルーヴを伝えている。
そのホットなグルーヴの火付け役(マスター・ブラスター)として、ジャム・セッションの中心にいるのが、ボブ・マーリーだ。

夜明けまでジャム・セッションするとは知らなかったよ
確かに誰も言ってなかったよな
夜明けまでジャムるだろうなんてさ
ジャムって、ジャムって
ジャムし続けるだろう


スティーヴィーは、1974年にアルバム『ファースト・フィナーレ』をリリースしてから、次のアルバム『キー・オブ・ライフ』のレコーディングに取り掛かっている合間の1975年にジャマイカを訪れ、ボブ・マーリーとライヴを行なっていた。
ボブ・マーリーとのセッションでスティーヴィーは、ボブの熱いレゲエのグルーヴと、そのうねるリズムに乗せて歌われるラディカルなメッセージに強く共感したに違いない。



しかし、当時のボブ・マーリーのアメリカでの知名度は、まだまだ一部の音楽ファンに限られていた。1974年にエリック・クラプトンによるカヴァー「アイ・ショット・ザ・シェリフ」が大ヒットしても、そのオリジナルが収録されているボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのアルバム『バーニン』は、アメリカのソウル・チャートでは41位にとどまっていたし、1976年のアルバム『ラスタマン・ヴァイブレーション』がようやくビルボード・チャート8位のヒットを記録するが、英国に比べればまだまだアメリカでボブ・マーリーの音楽やレゲエのリズムが全国的に浸透したとまでは言えなかった。
そんな状況にスティーヴィーは、内心少し苛立ちを覚えていたようだった。

1979年にフィラデルフィアで開催されたブラック・ミュージック・アソシエーションのライヴ・イベントで、再びボブとスティーヴィーは共演を果たす。その直後、スティーヴィーはこの「マスター・ブラスター」を書き上げたと言われている。





「マスター・ブラスター」の歌詞には、“ジャーの子供”や“ジンバブエに平和がやってきた”などというフレーズも登場する。
“ジャー”はジャマイカを発祥とした宗教運動、ラスタ(ラスタファリ運動)の神と言われ、信仰していたボブ・マーリーによって全世界に知られることとなった。
また、アフリカのジンバブエで1965年から79年まで続いていた、白人政権と有色人種の抵抗勢力によるローデシア紛争について、ボブ・マーリーは1979年に「ジンバブエ」という歌をリリースしている。そして1980年のジンバブエ独立のセレモニーに、ボブは招待された。

したがってスティーヴィーは、この「マスター・ブラスター」でボブを讃え、そしてもっと多くの人にボブ・マーリーという偉大なミュージシャンの存在を知ってもらいたい、という熱い思いをこの歌に込めたのだった。

アルバム『ホッター・ザン・ジュライ』には、キング牧師の誕生日を祝日にする法案の制定を訴えた、スティーヴィーが中心となって起こした運動のアンセム「ハッピー・バースデイ」も収録されている。
スティーヴィーは、そのような自身の活動にもボブの姿勢と重なる部分を見出したのではないだろうか。アルバムのタイトルには「マスター・ブラスター」の歌詞の一部から『ホッター・ザン・ジュライ』と名付けられ、ジャケットはラスタカラーを思わせるデザインとなっている。
まさに“7月よりも熱い”スティーヴィーの思いが込められていると言えるだろう。

1980年11月から始まる「ホッター・ザン・ジュライ・ツアー」の全日程では、ボブ・マーリーの出演が予定されていた。
しかしボブ・マーリーは、9月にコモドアーズとのツアー中に倒れて入院し、スティーヴィーのツアーにはボブの代わりに急遽ギル・スコット=ヘロンが同行した。そして翌年の5月にボブは帰らぬ人となってしまった。

ボブ・マーリーに捧げられたこの「マスター・ブラスター」は、今でもスティーヴィー・ワンダーのライヴでは必ずと言っていいほど演奏されている。
1995年のロンドンでのスタジオ・ライヴでは、歌詞に「ボブ&ジギー・マーリーが箱の上で熱いぜ」と、ボブの息子のジギーの名も入れて歌われた。
今でもなおスティーヴィーの熱い思いは変わらないのだ。



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名前『Hotter Than July』
Motown

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