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King Gnuの言葉とメロディから生まれる、日本人に届くミクスチャー

2017.12.25

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 1990年代から2000年代にかけて、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンをはじめとした、ロックに新しい要素を掛け合わせたバンドが世界中を席巻した。彼らは60年代や70年代のロックに、ヒップホップやレゲエなど別ジャンルのエッセンスを次々と取り込み、ロックをアップデートさせていった。

 日本では、それらの音楽は「ミクスチャーロック」という名称で知られている。ロックに新しい要素を加えていくことは今や当たり前のことになっている。

 日本のKing Gnu(キングヌー)も、そんなミクスチャーな感覚を持ったバンドだ。彼らはミクスチャーロックをさらに日本らしく発展させた「トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル」というテーマを掲げている。
 彼らの根底にあるものは、日本の歌謡曲やフォークだ。

 King Gnuはギター・ヴォーカルの常田大希を中心にSrv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)として結成された。常田は東京藝術大学でチェロを学んでいたが、そこで様々なミュージシャンと知り合ったことにより、クラシック以外への深い興味が生まれ、大学を中退する。

 その後、同じ大学で声楽を学んでいた井口理や、国立音大のビッグバンドに所属していたベーシストの新井和輝、上京してセッションドラマーとして活動していた勢喜遊とともに活動を本格化させる。
 クラシックやジャズなど、異なる世界で活動していたメンバーたちをつないだのはロックだった。



 ギター、ベース、ドラムを中心としたロックバンドのサウンドでありながらも、ジャズやR&Bなどの影響も感じさせるようなアレンジが印象的だ。それだけではなく、ヴォーカルの井口の伸びやかな高音と、日本的な情緒のあるメロディも光る。

 彼らはライヴハウスシーンで注目を浴び、2017年にはテキサスで行われる世界のカルチャー見本市「SXSW」への出演を果たす。
 そして、流動的だった4人のメンバーが固定化したことを機にKing Gnuへと改名し、FUJI ROCK FESTIVALにも出演する。その後、日本各地でライヴを行い、圧倒的な演奏力と楽曲のフックの強さで大きな話題を呼んだ。
 
 そんな彼らが改名後に初めてリリースしたアルバムが『Tokyo Rendez-Vous(トーキョウ・ランデブー)』である。
 不穏なエレクトロビートが耳を惹きつけるタイトル曲から始まるこの作品には、一つのジャンルでくくれないほど様々な音楽的要素がミックスされていて、どこか異国的な匂いを感じる。



 しかしながら、楽曲を支えているのは歌謡曲や70年代フォークから脈々と続く、日本語ポップスのメロディと情感のある歌詞であった。
 このアルバムの2曲目に収められている「McDonald Romance」は、アメリカのヒップホップやジャズのテイストを織り交ぜたアレンジに、歌謡曲のような切なさを感じるメロディと歌詞が乗った楽曲である。


もう財布の底は 見えてしまったけど
それさえも 笑いあった。それさえも 恋だった。

きっと永遠には続かないの。 明日の明日の風が吹くでしょ。
いつもの事さ、全て失うの。 その前に、今を鮮明に焼き付けて。


 メンバーの常田と新井はこの曲について、以下のように語っている。

常田「井上陽水さんとかの詩の世界観が好きなんですよ。その時代の人たちの強さと言うか、色気が欲しいなと思っていて」
新井「サウンドに関してはピアノが今っぽくて、トラックはヒップホップで。でも歌詞は日本語でメロディには歌謡感があって、ミックス感を上手くだせたかなと」
(音楽ナタリー インタビューより)


 彼らの歌詞は、一つの風景をどこか遠くの視点から見ているようなものが多い。「McDonald Romance」で描かれているのは主観的な心情ではなく、笑いあう男女をストーリーテラーのような視点から観た風景である。それはまさに一本の短編映画のようであり、淡々とした視点が哀愁や色気を感じさせる。

 そんな言葉たちは、井上陽水のような日本のフォークシンガーや阿久悠に代表される歌謡曲の作詞家たちが紡ぎ出した、切なさを帯びたストーリー性のある歌詞を彷彿とさせる。新井が言う「歌謡感」は、先人たちが紡ぎだした歌詞の世界観を継承することで、生まれているのではないだろうか。

 井上陽水や阿久悠の言葉は多くの人々の心に届き、愛されている。彼らと同じように、King Gnuのメンバーにも多くの人々に音楽を届けたいという想いがあるという。

常田「オアシスの「Live Forever」という曲があるんですけど、それをやると大合唱が起こるんですよ。
それはイギリス人の若者たちに歌が刺さっているというか、共鳴し合ってその場が生まれるからだと思うんです。それを日本でやりたい。King Gnuの曲で大合唱が起きる様に、もっと大きい場所に行きたい。」
(Music Voice インタビューより)


 国外の様々な音楽のエッセンスを取り入れながらも、日本の歌謡曲のような世界観とメロディを持った音楽を作り続けるKing Gnu。彼らは今、本気で日本人の心に届く新しい音楽を創り出そうとしているのである。

(文・吉田ボブ)

King Gnu『Tokyo Rendez-Vous』
PERIMETRON

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