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終わりが来るまで終わりじゃないんだ~レニー・クラヴィッツの90年代を代表するソウル・ナンバー

2018.05.07

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レニー・クラヴィッツの名が多くに知られるきっかけとなったのは、1991年にリリースされた彼のオリジナル・セカンド・アルバム『ママ・セッド』だった。
ジョン・レノンの息子のショーン・レノンや、ガンズ&ローゼスのスラッシュの名がクレッジットされているこのアルバムは、当時ヒットしていたリヴィング・カラーやテレンス・トレント・ダービーらとともに、“ブラック・ロック”のちょっとしたブームにのる形で注目を集め、大ヒットした。

しかしマルチプレイヤーでもあり、R&Bだけにとどまらないレニーの幅広い音楽性は、理解されるまでにしばらく時間がかかった。
高校生の頃から音楽的才能を発揮していたレニーは、デモ・テープを作っては色々なレコード会社に持って行ったが、なかなか相手にされなかったという。

君の音楽はブラックっぽくないねっていうのが彼らのお決まりの答えだったよ。

尊敬するギタリストとしてジミ・ヘンドリックスを、マルチ・プレイヤーとしてはポール・マッカートニーやスティーヴィー・ワンダー、プリンス、トッド・ラングレンなどの名をあげ、音楽家としてジョン・レノンやボブ・マーリーを敬愛するというレニー・クラヴィッツの幅広さは、彼のアルバム『ママ・セッド』にも表れている。
単に“ブラック・ロック”だけに括れない豊かな音楽表現が彼の魅力なのだ

その中でも、モータウンやフィリー・ソウルの雰囲気を感じさせる「イット・エイント・オーヴァー・ティル・イッツ・オーヴァー」は、このアルバムからのセカンド・シングルとして91年にリリースされ、全米2位を記録する大ヒットとなった。
ヴィンテージ感のある、ミドル・テンポのソウルフルなバラードだ。

It Ain’t Over ’Til It’s Over



ちなみにこのタイトルは、ニューヨーク・ヤンキースの永久欠番となっている選手、ローレンス・ピーター・ベラ(愛称:ヨギ・ベラ)のヨギイズムとも呼ばれた数々の名言からの引用とされている。

1973年ニューヨーク・メッツの監督時代、ワールド・シリーズをかけて戦っていた終盤戦に「It ain’t over ’til it’s over~終わりが来るまで、終わりじゃないんだ」と言い、最終試合でワールド・シリーズ進出を果たしたという。ベースボール・ファンにはよく知られている逸話で、ヨギ・ベラの名言として語り継がれているフレーズだ。

しかし、レニーの歌の中ではラヴ・ソングとして、最後の最後まで愛は終わってはいないんだよ、という意味で歌われている。

ずいぶんと涙を流し、たくさん傷ついたけれど
終わりが来るまで終わりじゃないんだよ
何年もの間、僕たちは愛を生かし続けようと試みてきたよね
だって、終わりが来るまで終わりじゃないんだから


二十数年経っても色あせないこの歌が、2018年5月、人気のコンピレーション・シリーズ「フリー・ソウル」のスピン・アウト企画として、登場する。橋本徹(SUBURBIA)選曲・監修、Free Soul 90s~スペシャル・7インチ・コレクション Vol.1に、アナログ・シングル・レコードとして、メアリー・J. ブライジの「リアル・ラヴ」とのカップリングでリリースされることとなったのだ。
ロックだけにとどまらないレニーのソウル溢れるこの曲は、今では正真正銘1990年代を代表するソウル・スタンダードとなっている。

https://www.universal-music.co.jp/lenny-kravitz/products/uiky-75052/



参考文献:『Mama Said』アルバム・ライナーノーツ 大友博著、Web版RollingStone 2016年5月レニー・クラヴィッツ・インタビュー

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