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アーケイド・ファイア~デヴィット・ボウイが共鳴してコラボレートしたバンド、

2019.01.07

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2016年の1月10日、デヴィット・ボウイが亡くなったというニュースが駆け巡り、多くの音楽ファンやアーティストたちが哀悼の意を示した。
その後、世界中のファンやアーティストが彼の曲を歌い演奏し、彼の功績をたたえるイベントが開催された。

その中で唯一ボウイの公式サイトが紹介したイベントがある。

「今世界中でボウイの追悼がいくつも行われていて、グーグルでデヴィット・ボウイ追悼と検索すると8600万くらいの結果が出てきます。なので、一つだけここで紹介するのは不公平とは思いつつ、でもデヴィット・ボウイ自身がおそらく一つだけ紹介するであろうバンドがいます。アーケイド・ファイアです。」

カナダのロックバンド、アーケイド・ファイアはニューオーリンズでジャズバンドと共に街を練り歩く「Pretty Things」を行った。
音楽を愛したボウイを、セカンド・ラインというニューオーリンズ独特の葬列で悼んだのである。
バンドのフロントマン、ウィン・バトラーは、ファンとジャズバンドと共にボウイの「Heroes」を歌いながら街中を歩き回った。



彼らとデヴィット・ボウイは、30歳近く年齢が離れていた。
しかし、音楽を通して固い絆で結ばれていたのである。

カリフォルニアで生まれたウィン・バトラーは、祖父がジャズ・ギタリストであったこともあり、生まれた時から様々な音楽に囲まれて育った。
大学進学を機にカナダへ移住した彼は、ハイチ系移民であったレジヌー・シャサーニュと出会う。

お互いにソングライターを志していた二人は、周囲のミュージシャン志望の若者たちを集めてアーケイド・ファイアを結成する。
ロックや民族音楽、クラシックまで、様々なジャンルの音楽の素養を持っていた二人は、多種多様な楽器を演奏できるメンバーをバンドに加えた。
そうして生まれた音楽は、既存のロックやポップスの範疇に収まらないものになった。

地元カナダのインディー・レーベルと契約した彼らは、2004年9月にファースト・アルバム『フューネラル』をリリースする。
この作品からは無骨なロックサウンドと、アコースティックな楽器の荘厳な音が融合したサウンドが聴こえてくる。
それでかつウィン・バトラーの憂いのある声や、叙情的な歌詞、そして力強く雄大なメロディは普遍的なものであった。

最初はカナダのわずかな地域でしか売られていなかったが、音楽ファンたちの熱狂的な支持を得る。
そして、翌年2月にイギリスでリリースされたことを皮切りに世界的な大ヒットを記録した。
カナダの無名バンドは、わずか一年で世界中の人々が知るバンドになったのだ。

アーケイド・ファイアの音楽は、キャリアの長いミュージシャンたちをも唸らせた。
その一人がデヴィット・ボウイだ。

彼は2003年のツアー中に病に侵されて以来、表舞台から姿を消していた。
しかしアーケイド・ファイアの音楽に触発され、2005年9月にニューヨークで行われたイベント「ファッション・ロックス」で、突如としてステージに復帰する。

ボウイはアーケイド・ファイアとともに、『フューネラル』に収録された楽曲「Wake Up」を披露する。

なにかがこみ上げて
心を無で埋めてしまった
誰かが僕に「泣くな」と言った

子供たちよ、目を覚ませ
君たちの間違えを掲げよう
奴らが夏を台無しにしてしまう前に


ボウイの楽曲とも通じる繊細でエネルギッシュなメッセージを孕んだアーケイド・ファイアの音楽が、互いに共鳴し、新たな輝きを持った瞬間であった。

ウィンはこのコラボレーションをこのように振り返っている。

「デヴィット・ボウイは僕たちの最初の応援者、そして支持者の一人だったんだ」
「彼と話したり、一緒に演奏したり、コラボレーションした経験は、僕たちの人生の中でも一番奥深く忘れがたい時間だね」




それから8年後、ボウイはアルバム『ザ・ネクスト・デイ』で第一線に復帰。
そして、アーケイド・ファイアの楽曲「リフレクター」にシンガーとして参加する。
「フェイム」や「レッツ・ダンス」を彷彿とさせる憂いを含んだディスコナンバーは、彼らの成長とボウイの復活を印象付けた。

ウィン・バトラーはボウイの死後、彼の存在をこのように評した。

「亡くなってもなお真のアーティストであり、彼のおかげでこの世界はより明るく、そしてより神秘的になったんだ。僕たちは、彼が創り上げた世界へ祈りの言葉を叫び続けるよ」

飽くなき探究心で、新たな音楽を追求し続けたデヴィット・ボウイ。
彼の音楽に対する姿勢は、次世代のミュージシャンにも確かに受け継がれている。

(文・吉田ボブ)

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