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引用で表すロックへの敬意~リクオ『グラデーション・ワールド』

2019.07.01

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あれからもう30年 まだ何も終わっちゃいない
靴の踵をすり減らし 方々うろつく風来坊
あれからもう30年 ブルーハーツが聴こえる
誰かのそばで咲いてるかい 人にやさしくなれたかい


ラジオから流れてきたこのフレーズに、ギュっと心を掴まれた大人は少なくないだろう。
6月にリリースされたばかりのリクオのアルバム『グラデーション・ワールド』から、4月に先行で配信された「オマージュ – ブルーハーツが聴こえる」の一節だ。



「RCサクセションが聴こえる」と歌われた、忌野清志郎と仲井戸”CHABO”麗市の最後の共作「激しい雨」にインスパイアされて、この歌は生まれた。ゴキゲンなギターを聴かせてくれるのは、ゲストで参加している仲井戸”CHABO”麗市だ。
また、ラストにはRCサクセションの歌からも引用され、「勇気を出せよ!」のフレーズが突き刺さる。

10代でRCサクセションに衝撃を受け、昭和から平成に変わるちょうど30年前にはブルーハーツの歌に胸を熱くした20代は、今50代でリクオとほぼ同世代だ。
「オマージュ – ブルーハーツが聴こえる」は、そんな若かりし頃のロックアイコンを今も大切にしている大人たちに響く、熱いロックンロールに仕上がっている。

他にも小沢健二やかまやつひろしなど多くのロックから引用されていて、聴きながら知っているフレーズを見つける楽しみもある。
日本のロックを追いかけてきた音楽ファンにとってはたまらない1曲だ。

引用によって自分の今の心情を表現するというのがテーマだと語るリクオ。前の世代から受け取ったものを、自身の音楽を通して次の世代に繋げることも重要だと考えている。

言葉とかメロディは共有物だと思っている。自分が何をインプットして、どういう風にアウトプットしたかということを表明するのは歴史の連続性においても、とても重要なこと。自分の表現は自分がゼロから編み出したものではなくて、受け取ったものがあってこそなんです。どれだけ豊かなものを受け取ってきたかを伝えることに対しては自覚的にありたいですね。

また、インタビューでは「正直に音楽をしていこうという気持ち」だと語っている。
同世代のサラリーマンに向けてエールを送る「満員電車」や、タイトルからしてポジティヴな「だんだんよくなる」など、聴く者が心を重ねられたり、または勇気をもらったりする部分も多い。

そして、アルバムのタイトルにもなっている曲「グラデーション・ワールド」で歌われるのは、世の中は黒か白だけではなく、もっと豊かな色彩のグラデーションに彩られていて、そんな多様性を受け入れられる寛容な社会こそが、幸せに繋がるのではないかというメッセージ・ソングだ。



50代になった今、また表現が初期衝動に戻ってきているような気がする、とリクオ自身が語っているように、今回のアルバムはメロディーも歌詞もシンプルでストレートだ。
アルバムのオープニングを飾る「永遠のロックンロール」がその象徴とも言える。ゲストにはウルフルケイスケが参加している。


ロックンロール・ミュージック 今も魔法がとけない
ロックンロール・ミュージック ときめきの最中
ロックンロール・ミュージック 夢の途中で
君を誘って 旅を続ける




『グラデーション・ワールド』で表現されたリクオのロックへの熱い想いと敬意は、同世代だけでなく、幅広い世代の音楽ファンの心にも響くだろう。



参考文献および引用元:ANTENNA「今また初期衝動に戻ってきたーリクオ『Gradation World』リリースインタビュー」


リクオ『グラデーション・ワールド』
Hello Records

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