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夭折の画家の自画像と共鳴するイースタンユースのアルバム『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』

2019.08.12

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イースタンユースの名作の一つと言われるアルバム『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』(1998年)は画家、佐伯祐三の作品がジャケットに使用されたことでも話題を呼んだ。

佐伯祐三は1898年に大阪で生まれ、26歳の時に初めて憧れの地、パリの土を踏み、一度は帰国したものの再度フランスへ渡り多くの作品を残す。しかし病に倒れてしまい、1928年8月16日にフランスで僅か30年の生涯を閉じた。

初めてフランスを訪れた1924年、佐伯は渡仏後に描いた自信作の裸婦像を持って、尊敬する画家ブラマンクを訪ねている。しかしブラマンクにその絵を見せた時「アカデミック!」と批判されてしまった。
伝統や教育を嫌い、独学で絵を学んできたブラマンクにとって、古典的な画風で英才教育によって支えられたアカデミック美術はもっとも忌むべき対象だったのだ。

ブラマンクの言葉に大きなショックを受けた佐伯は、これを機に大きく作風を変貌させていくのだが、その頃に描かれたのが、この「立てる自画像」だ。この絵は実は翌年に完成させた作品の裏側に描かれていたものだ。
パレットと筆を持って呆然と立ち尽くす青年が荒々しいタッチで描かれ、顔はナイフで削り取られている。
夢と憧れを胸に抱いてフランスに渡った若き青年画家の、挫折と苦悩の跡が感じられる作品だ。

イースタンユースは、近代詩的な言葉を散りばめた歌詞を、ラウドなギターロックのメロディーに乗せ、シャウトして歌うのが特徴的なバンドだ。それは、時にエモーショナルと形容されることもある。
歌詞は文学的でありながらも、内容は底辺に生きる者たちの生きにくさや反骨心、自己の葛藤などが叫ばれていて、それらは時として前向きであり、まさに彼らがパンクロックにカテゴライズされる所以である。

アルバムの1曲目を飾る「夏の日の午後」は、2018年のフジロックでも注目を浴びた1曲だ。

「夏の日の午後」


歌詞は、まるで若き画家の苦悩と重なるようでもある。

「泥濘に住む男」

アルバムのタイトル『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』は、楽曲「寄る辺ない旅」の歌詞の一部から取られたものだ。故郷から遠く離れた旅先での孤独が歌われるが、まさに若き画家の佐伯祐三が、故郷から遠く離れたフランスの地で、孤独に苦悩と戦いながらも前を向く姿が目に浮かぶようだ。

「寄る辺ない旅」

アルバムは、1998年にアメリカでレコーディングされた。もともと北海道で結成されたバンドということもあり、パンクロックというよりは、大陸を感じさせるようなスケール感のある伸びやかなギターサウンドだ。それが孤独感を際立たせながら、個であることの大切さも伝えているような包容力を持って響く。  
佐伯の『立てる自画像』が、挫折や苦悩や孤独と戦う若者と共鳴し合うように、イースタンユースの音楽も多くの若者の共感を得た。
アルバム『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』は、まさに時代を超えた素晴らしいアーティストのコラボレーションと言っていいだろう。

「青すぎる空」





eastern youth『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』
トイズファクトリー


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