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西城秀樹がカヴァーした日本のスタンダード曲①~矢沢永吉のソロ・アルバムから「恋の列車はリバプール発」

2019.12.27

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1977年にリリースされた西城秀樹のカヴァー・アルバム『ロックンロール・ミュージック』の最後を飾ったのが、矢沢永吉の「恋の列車はリバプール発」であった。

もともとは矢沢永吉が初のソロとして単身で乗り込んだロスアンゼルスで、1975年に制作したデビュー・アルバム『I LOVE YOU、OK』に収録された楽曲である。

西城秀樹がキャロルや矢沢永吉に強く惹かれた理由のひとつには、初期のビート「ルズに影響を受けて育ったという、お互いの共通項があったと考えられる。



西城秀樹は「恋の列車はリバプール発」を、ライブでは何度も取り上げていた。



ところで二人が初めて顔を合わせたのは、キャロルが毎週木曜日にレギュラーしていた夕方5時半から始まるテレビ番組、TBSローカルの『ぎんざNOW!』だったという。

そのことが1978年に発行された女性誌の「セブンティーン」で、取材記事のなかにコメントとして掲載されていた。
そもそもの記事は、まもなく後楽園スタジアムで開催される矢沢永吉のワンマンコンサートの告知を兼ねた内容であった。

当時の矢沢永吉は資生堂のCMキャンペーンとタイアップした「時間よ止まれ」が大ヒット中で、時の人になりつつあった。
だから女性のティーンに向けた雑誌のなかでも、あらためてアーティスト・パワーを紹介していたのであろう。

ここからはその紹介記事になる。

夏、汗がしぶきのように飛び散るロックンローラーにぴったりの季節。「時間よ止まれ」の大ヒットでにわかに注目を集めた男・矢沢永吉。
TVに出演しない話。8月28日、後楽園スタジアムに5万人を集めるコンサートの話。年間150回のステージ活動を、4トン積みのトラックに乗って地道に続けている話。
それら全てが実は事実なのに、まるで伝説のように聞こえる。
きみは、いちどでも矢沢のステージを見たことがあるだろうか?


かなり肩に力が入った思い入れの強い記事で、記者の気持ちと熱が文章から伝わってくる。

そこにコメントを寄せていた西城秀樹はごく自然体で、普段から思っている気持ちをそのまま、素直に取材記者に語ったものだった。
それがこんなふうにまとまっていた。

実はね、矢沢さんのステージ自体を見たことがないんだ。ただ、数年前に『ぎんざNOW!』でキャロルと一緒になったことがあるんだ。
そのとき、「僕も、広島県出身なんですよ」って話しかけられてネ、ずいぶん腰の低いていねいな人だななんて思った。
でも、スッゲエいい曲歌ってるんだ。ボクが矢沢さんを尊敬しているのは、このソング・ライターの面が多いかもしれないよ。
今のボクのコンサート・ツアーにも「セクシー・キャッツ」と「恋の列車はリバプール発」の2曲がはいっているけど、何といっても矢沢さんにボクのオリジナル曲を書いて欲しいな。


コメントの中で語った言葉からは良い楽曲と出会って、それを自分の表現で歌ってみたいと思っている若者が、素直に音楽に向き合おうとしている向上心が感じられる。

ソングライターとしての矢沢永吉を高く評価しているところが、西城秀樹が“ロックの申し子”であることを示していた。



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