TAP the SONG

「なあ、泣くな、泣かないでくれ」とボブ・マーリーが祈る「ノー・ウーマン・ノー・クライ」

2017.02.06

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1975年の6月から始まった初のワールド・ツアーで、ボブ・マーリー&ウェイラーズは北米各地にある400人キャパのクラブを回って公演をしていた。
ところが6月18日にニューヨークのセントラルパークで開かれたサマーフェスティバルには、なんと1万5000人もの観衆が集まったのだ。

きっかけはエリック・クラプトンがアルバム「461オーシャン・ブールヴァード」で、「アイ・ショット・ザ・シェリフ」をカヴァーして取り上げたことだった。
シングル・カットされた「アイ・ショット・ザ・シェリフ」は、74年9月14日に全米1位となって世界中の若者にレゲエを知らせる役目を果たしたのである。

461-ocean-boulevard-front-coverエリック・クラプトン

本物のレゲエに向けられる関心はこれによって、格段にヒートアップしていった。
この時点でボブ・マーリーはロック・ミュージシャンたちから、最も関心を集める存在になったとも言える。

全米ツアーの最終日となったロスアンゼルスのロキシークラブには、ボブ・ディラン、ジョニ・ミッチェル、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、ローリング・ストーンズ、ザ・バンド、グレイトフル・デッドのメンバーたちが客席に詰めかけた。

ライブ終了後にはジョージ・ハリスンが、「この10年で最高のライブ」と語って、それがメディアを通して世界にまで広まった。


2日間にわたるロンドン公演が開かれたのはその年の7月18日からだったが、「ノー・ウーマン・ノー・クライ」のイントロが始まると、観客席からはごく自然に歌声が上がった。

すべてうまくいくよ
だいじょうぶさ
だから、女よ、泣かないでくれ
なあ、泣くな、泣かないでくれ
いい子だから、涙を流さないでくれ


「♫ なあ、泣くな、泣かないでくれ」とボブ・マーリーが、何度もなんどもくり返す「ノー・ウーマン・ノー・クライ」は、あまりにもシンプルな歌詞であるがゆえに聴く側が自由に解釈できる。
 
そして同じように延々と繰り返されるのが、「♪ Everything’s gonna be all right」というフレーズだ。
「いつかきっとすべてが良くなる」というボブ・マーリーの声からは、意味ではなく祈りが伝わってくる。

そしていつしか「ノー・ウーマン・ノー・クライ」からも、意味を超えて希望が伝わってくることになる。

この曲を一緒に口ずむことで、音楽から願いを感じ取るのは聴き手の感性だ。
カリブ海に浮かぶからジャマイカから世界中に届けられたこの歌に、命の灯火を与えるのは聴いた人間の方なのである。

初日のライブで、諭すように、訴えるように、祈るように歌われて、ステージと客席がひとつになった「ノー・ウーマン・ノー・クライ」を目撃したプロデューサー、クリス・ブラックウェルはレゲエが白人に受け入れられた歴史的瞬間を記録しようと、翌日の公演をレコーディングすることにした。

ボブ・マーリーLIVE!

こうして出来上がったアルバム「ライブ!(Live)」には、カリブ海の小さな島国に生まれたレゲエが、辺境から世界の舞台へと躍り出る瞬間の熱気が記録された。

こうして世界の音楽の歴史にレゲエという新しいページが開かれたのだった。


(注)本コラムは2014年7月25日に公開した『女よ、泣かないでくれ、ボブ・マーリーの「ノー・ウーマン・ノー・クライ」』を改題、大幅に加筆したものです。

<関連コラム>
*TAP the STORY「ロンドンに置き去りにされたウェイラーズ」
http://www.tapthepop.net/extra/29050

「ボブ・マーリィ〜心臓の鼓動をとらえた音楽レゲエで世界を一つにした男」
「劇的な和解でジャマイカに平和の可能性を見せたボブ・マーリィ」

Bob Marley『Live』
Island

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