TAP the SONG

こんなへたくそな歌手に、これほどつまらん歌詞をつけられてリメイクされていると知ったら?

2015.09.11

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「明日なき世界(Eve of Destruction)」は1965年9月25日、バリー・マクガイアが発表したシングルが全米チャートの1位になり、世界中でもヒットした。

東の世界が燃えている
暴力が蔓延し、銃弾が装填される
選挙権はなくとも人殺しは出来る年齢
戦争だなんて信じられなくとも
銃を持たなくちゃいけない
ヨルダン川でさえ死体が浮いている
でも言ってくれ
何度も、何度でも繰り返して、
我が友よ、あぁ、あんたは思ってないと
俺たちが 滅亡が目の前にいるなんて


この曲を書いたのP.F.スローンは卓越した作曲センスを買われて、10代半ばにして大手の音楽出版社と契約してソングライター兼スタジオ・ミュージシャンとして働き始めている。
ボブ・ディランの影響を受けて「明日なき世界」を書いたの19歳の時だった。

1965年はアメリカが北ベトナムへで空爆を開始した年であり、P.F.スローンは当時のアメリカにおける国内と国外の災いを3分弱の曲に詰め込んで、核戦争後の恐怖を描いている。

歌詞の内容が強烈すぎるという理由で、一部の地域では放送禁止にもなった。
しかしそれがかえってメディアや人々の関心を引いて、大ヒットにつながったともいわれる。


これを日本語でカヴァーした高石ともやは、1966年からピート・シーガーやボブ・ディランの歌を訳してうたい始めて、フォーク・ソングを広めた先駆者だ。

日本のロックの祖とも言われるジャックスとのコラボレーションによる、当時の貴重なライブ音源が残っている。

訳詞はオリジナルの痛烈なメッセージを、可能な限り受け継いでいた。

東の空が燃えてるぜ
大砲の弾が破裂してる
おまえは殺しの出来る年齢
でも選挙権もまだ持たされちゃいねえ
鉄砲かついで得意になって
これじゃ世界中が死人の山さ
でもよぉー 何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅するなんて嘘だろ
嘘だろ


しかし時代の移り変わりとともに、核戦争の恐怖を描いたこの歌は少しずつ忘れられていった。
それからおよそ20年後、日本では忌野清志郎がこの歌をカヴァーし、あらためて多くの人に広めていった。

「明日なき世界」は反核をテーマにしたメッセージ・アルバム、『COVERS』(1988年)のA面の1曲目に収められた。

奴らは俺がおかしいと言う
でも本当のことはまげられやしねぇ
政治家はいつもゴマカシばかり
法律で真実は隠せやしねえ
そりゃ デモをするだけで平和がくるなんて
甘い夢など見ちゃいねえさ

でもよぉー 何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破裂するなんて嘘だろ
嘘だろ


『COVERS』はRCサクセションのシングル・アルバムを通じて唯一、オリコンチャートで1位になった。
「明日なき世界」の歌詞を引用して、ある音楽専門誌はこう絶賛していた。

『カヴァーズ』の清志郎は怒っている。
それは血の涙を流さんばかりの怒りだ。
「世界が終わるなんて嘘だろ?」と叫ぶ清志郎は最大の「敵」を見つけたのだ。
だから88年のRCがこんなにも危うくて熱い。
よみがえったゴジラの大進撃を見るようなとにかく痛快な1枚だ。大推薦盤。(編集部)
(「シンプジャーナル」88年10月号)


その一方では忌野清志郎のことをまったく理解できていない文芸評論家から、アルバム自体がこんな風に貶されたりもしていた。

このLPはすべて、六〇年代ポップスの替え歌なのだ。
こんなへたくそな歌手に、これほどつまらん歌詞をつけられてリメイクされていると知ったら、ディランもレノンもアダモも、「ポップの魂」の名にかけてきっと怒り狂うだろうし、実際、彼らの歌声とともに思春期を送ったわたしなどは、怒りを越えてひたすら赤面してしまった。(渡部直己)
(「朝日ジャーナル」88年9月2日号)


それから四半世紀もの年月が過ぎて文芸評論家の発言はすっかり忘れ去られ、忌野清志郎が逝ってしまった後になっても歌は生きている。ししかも歌詞は古びるどころか、逆にリアリティを増しているのである。

忌野清志郎が訴えかけたメッセージは、21世紀になっていよいよ貴重なものになっている。

<EXTRA便「できることなら、この胸を切り裂いて、どんな気持ちで歌を作ったのか、見せてやりたいよ。」に続く>

高石ともや&ジャックス



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