どんと節

TAP the SONG

音楽と笑いでブームを巻き起こしたクレイジーキャッツの”変な歌”①「スーダラ節」

2016.05.20

1960年代初頭からテレビで人気が上昇してたクレイジーキャッツだが、最初の爆発は植木等の歌った「スーダラ節」の大ヒットから始まった。

そこから「ドント節」「五万節」「ハイそれまでヨ」「無責任一代男」と、加速度的にコミックソングでブームを巻き起こしていった。
その快進撃を支えていたのは植木等というキャラクターを確立させた作詞の青島幸男と、作曲・編曲の萩原哲晶によるソングライティング・チーム、およびテレビ番組と映画とライブを組み合わせたトータル・プロデュースの力によるものだ。

それらを陣頭指揮していたのがゼネラル・プロデューサー、渡辺プロダクションの創始者だった渡邊晋である。
その存在と指導力はクレイジーキャッツにとって、実に大きいものであったはずだ。

クレイジーキャッツ ライブ

進駐軍バンドとして活躍していたジャズメンたちが、コミックバンドを目指して結成したクレイジーキャッツは、放送作家だった青島幸男が作った歌詞と、萩原哲晶の革命的なサウンドによって、自由奔放で開放的、かつ破壊的なイメージが完成することになる。

月曜から金曜まで放送されるテレビの帯番組『おとなの漫画』の構成作家として、なかなかアイデアが生まれず締め切りに追われて苦しんでいた青島幸男は、安定した身分が保証されているサラリーマンを”気楽な稼業”とうらやましがって書いたという。

「スーダラ節」の歌詞の中で描かれていたのは、当時のありふれたサラリーマン像だった。
その歌詞に込められていた青島幸男の本音が、当のサラリーマンにも共感を持って受け入れられたのだ。

🎵チョイト一杯のつもりで飲んで
いつの間にやら ハシゴ酒
気がつきゃ ホームのベンチでゴロ寝
これじゃ 身体にいいわきゃないよ
分かっちゃいるけどやめられねぇ
ア ホレ スイスイ スーダララッタ スラスラ スイスイスイ
スイスイ スーダララッタ スラスラ スイスイスイ
スイスイ スーダララッタ スラスラ スイスイスイ
スイスイ スーダララッタ スーダララッタ スイスイ


これが爆発的に受けたのは歌詞に「意味がある前半を受けて、後半に展開する植木等のウキウキしてくるようなフレーズが秀逸だったからである。
意味不明ながらも不思議な調子の良さが、音楽的に心地よくて得も言われずおかしかったのだ。


「シャボン玉ホリデー」でのアレンジを皮切りに、10数年間にわたってクレージーキャッツと日常的に仕事をしてきた作曲家の宮川泰は、歌が生まれてきたときの様子をこう述べている。

僕もアレンジを担当するようになったから曲の会合に出てたんだけど、詞は青島(幸男)さんでしょ。
青島さんが書いてきて渡辺晋さんの家でミーティングするの。
もちろん植木(等)さんも来て、今度歌うのはどんなのかな、って興味持ってるでしょ。
そうすると青島さんが詞を読んで聞かせる。
あの人が読むとおかしいのよ。
「ちょいと1杯のつもりで飲んで~」って飲んでる格好するわけ。
ムチャクチャおかしいのよ。
それを渡辺晋社長がね、「うん、そこわかるけどね、ちょっとしつこいからもう少し変えてね」とか言ってね。
それで萩原さんがメロディー作ってくるとA、B、Cと3つぐらい作ってくるの。
それを歌いながら「そこもうちょっと下世話にできないかな」とか社長たちにいろいろ言われながら作ってたのよ。


渡邊晋がプロデューサーとして先頭に立って歌作りを行っていたことが、宮川の話から明らかになってくる。
植木等が機嫌がいい時に発する口ぐせだった「スイスイスイ」とか、「スンダラダッタ」という意味不明のフレーズを使って、それを歌にしようと考えた渡邊晋は、『おとなの漫画』でクレージーキャッツのコント作家だった青島幸男に作詞をさせることを思いつく。

そこから生まれたしがないサラリーマンの生活や気分を綴った歌詞と、「わかっちゃいるけど やめられない」という決めフレーズが上手くハマった。

ところで後に”無責任男”として一世を風靡する植木等だったが、実は根っから生真面目な性格であり、かつてはオーソドックスな歌手を志していた時期もあった。
そのために出来上がってきた「スーダラ節」を歌うことには抵抗があり、はじめのうちはずっと嫌がっていたという。

だが意を決して歌ったところ、レコーディングの現場ではミュージシャンが笑い転げてしまい、NGが続出する事態になった。
こうして「スーダラ節」は大ヒットし、植木等の人気が一気に急上昇したのである。

「スーダラ節」の思わぬ大ヒットで、その年の12月には芸能界とレコード業界の鉄則にしたがって、第二弾の「ドント節」が発売されることになった。

ドント節ジャケット

♪ サラリーマンは 気楽な稼業ときたもんだ
二日酔いでも 寝ぼけていても
タイムレコーダー ガチャンと押せば
どうにか格好が つくものさ
チョッコラ チョイと
パァにはなりゃしねェ
アッソレ ドンと行こうぜ ドンとね 
ア、ドンガラガッタ ドンとドンと 行きましょう


だが「ドント節」の発売にはブレーキがかかり、翌年に持ち越されることになる。
そして爆発的な植木等の人気を反映して、それなりのヒットにはなったが、爆発とまではいかなかった。





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