TAP the SONG

〈吐きすて〉の歌の系譜③ 発売禁止にならないように計算された頭脳警察の「ふざけるんじゃねえよ」

2016.09.30

Pocket
LINEで送る

タイトルからも想像がつくように「ふざけるんじゃねえよ」は、詞も曲もサウンドもパンクそのものといって過言ではない。
社会に対するストレートな異議申し立ては、まさに〈吐きすて〉の歌であった。 

ここまで突出したロックが1972年の日本で生まれていたのだ。

「ふざけるんじゃねえよ」は1973年の2月に公開された渡瀬恒彦主演の映画「鉄砲玉の美学」(中島貞夫監督)で、オープニングからエンディング・テーマにまで使われたことで映画ファンにも知られていった。
当時はやくざ映画の主題歌としてロックが使われるのは、きわめて異例のことだった。

「鉄砲玉の美学」はその後、芸術志向の強かったATGにおける異色の映画として、カルト化して伝説的に語られるようになった。



  「ふざけるんじゃねえよ」
 作詞・作曲 Pantax’s World 

 まわりを気にして 生きるよりゃひとりで
 勝手気ままに グラスでも決めてる方がいいのさ
 だけどみんな俺に 手錠をかけたがるのさ
 ふっざけるんじゃねえよ 動物じゃねえんだぜ

 バカに愛想をつかすより ぶんなぐる方が好きさ
 俺をジャマするシキタリは 人が勝手に決めたモノ
 それでやられたって 生きてるよりゃマシさ
 ふっざけるんじゃねえよ やられる前にやるさ

 だけど縄がかけられる だんだんからみつく
 どんどんからみつく もう身動き出来やしねえ
 クソッタレ! バカ野郎! 満足だろう
 ふっざけるんじゃねえよ 今に吠え面かくなよ


PANTA(本名・中村治雄)は1968年に関東学院大学に入学するとバンド活動を始めて、グループ・サウンズを経てロックバンドの「頭脳警察」を結成した。

その不思議なバンド名はフランク・ザッパが率いるマザーズ・オブ・インヴェンションのデビュー・アルバム『フリーク・アウト』の中にあった「Who Are The Brain Police?」という歌からとられたものだという。

%e9%a0%ad%e8%84%b3%e8%ad%a6%e5%af%9f%e3%83%95%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%af%e3%83%bb%e3%82%a2%e3%82%a6%e3%83%88

フォークやロックを日本語で歌うことは出来ないのか、そうした試行錯誤が始まったばかりの1970年にロック・シーンに登場した頭脳警察は、過激なアジテーションや左翼思想をロックで表現した「銃をとれ!」や「世界革命戦争宣言」、「赤軍兵士の詩」などで注目を集めた。

バンド活動していくなかで本番直前にメンバーがいなくなったりしたため、PANTAが生ギターでTOSHI(石塚俊明)がボンゴという編成になったが、ふたりのライブが最も熱かったこともあって固定化した。
相棒となったTOSHIがそのことをこう語っている。 

あ、そうだね。初めてボンゴを触ったときに、ドラムより自由だなって思った。俺、キープ、ヘタだからさ。ドラムだとちょっと鬱陶しいんだけど、ボンゴの場合だとPANTAのギターに合わせられるから、そのへんは自由でいいなって感じたね。


あらゆる束縛から逃れて自由であること、オリジナリティを追求することが、頭脳警察では技術やスタイルより優先された。

モップスや井上堯之グループ、村八分、ブルース・クリエイションなどとともに、1972年1月に京都府立体育館の「MOJO WEST」に出演した頭脳警察は、その後で東京都立体育館で開かれた「オール・ジャパン・ロック・フェスティバル」にも出た。
彼らはそのときのライヴを録音した音源でビクターからファースト・アルバムを出す予定になっていた。

%e4%ba%ac%e9%83%bd%e5%ba%9c%e7%ab%8b%e4%bd%93%e8%82%b2%e9%a4%a8

しかし楽曲の内容に問題があるとの理由で、レコード会社は3月5日に予定していたアルバム『頭脳警察1』の発売を中止する。
収録予定曲のタイトルはこうだった。

『頭脳警察1』
〜イントロダクション〜世界革命戦争宣言 / 赤軍兵士の詩/銃をとれ(Part 1) / さようなら世界夫人よ / 暗闇の人生 / 彼女は革命家 / 戦争しか知らない子供たち / お前が望むなら / 言い訳なんか要らねえよ / 銃をとれ(Part 2)


そして5月5日、スタジオでレコーディングしたアルバム『頭脳警察セカンド』が発売された。
ファースト・アルバムで問題だとされた部分の歌詞には修正をほどこし、それが無理な場合は楽曲を入れ替えて制作したものだった。

%e9%a0%ad%e8%84%b3%e8%ad%a6%e5%af%9f%ef%bc%92
『頭脳警察セカンド』
銃をとれ! / さようなら世界夫人よ / コミック雑誌なんか要らない / それでも私は/軍靴の響き / いとこの結婚式 / 暗闇の人生 / ふりかえってみたら / お前と別れたい


反体制バンドという面ばかり取り上げられた頭脳警察の魅力が、実はすぐれたメロディメーカーであるPANTAのリリカルな歌詞とロマンティシズムをかき立てるヴォーカルにあるということが、このアルバムから口コミで伝わり始めていった。

しかしいったん発売されたにもかかわらず、レコ倫(レコード倫理審査会)からのクレームで店頭から回収処分になった。
このアルバムが順調に音楽ファンの間に広まっていたら、日本のロックシーンはもう少し違う発展をしていただろう。
  
  「それでも私は」
  作詞・作曲 Pantax’s World 

  友達からは変わりすぎたといわれ
  教師からは許せない奴といわれ
  意味のない妥協の日々を強いられる
  恋人からも堕落しすぎたといわれ

  俺にはわからねえ 生きるということが
  自分の目だけに頼って
  頭から決めつける奴らが

  それでも俺は求めつづける
  何かを・・・何かを






それから5ヵ月後、頭脳警察のサード・アルバムが10月5日に発売になった。
タイトルを『歴史からとびだせ』とするアルバムは当初、ロマンティックかつファンタジックなものを予定していたという。

しかしレコ倫の問題などもあっったために「ここで引き下がっておとなしくなったのでは面子に関わる」と、A面の1曲目はストレートな「ふざけるんじゃねえよ」になった。

ファースト、セカンドと変なことになっちゃって、次のサードは実質的な一枚目になるわけだから、今度は絶対出すぞって(笑)、気が入ったね。ひっかからないように注意したよ。
例えば「ふざけるんじゃねえよ」なんかは、あらかじめ、自分でもこりゃひどいって思うようなとんでもない歌詞つけといて、レコ倫に提出する。当然チェックされて、はい直しましたって言って、できたものは、そこそこ自分で言いたい程度の言葉に、おちついてたりするわけだ。
(アルバム『頭脳警察3』について『歴史からとびだせ』より)


最終的に『頭脳警察3』と名付けられたアルバムは、3枚目にしてレコード店で誰もが購入できるようになったのだ。








Pocket
LINEで送る

スポンサーリンク

関連アーティスト

関連するコラム

[TAP the SONG]の最新コラム

このコラムへの感想・コメントを書く

Pagetop ↑