Bruce Springsteen

TAP the SONG

怒りを爆発させたブルースが書いた「Dancing in the Dark / ダンシン・イン・ザ・ダーク」

2014.01.24

1984年3月のとある日の明け方、ブルース・スプリングスティーンはニューヨークのホテルの1室で1人、ギターを抱えて曲を作っていた。

制作中のアルバム『Born in the U.S.A.』は、天才エンジニアと呼ばれるボブ・クリアマウンテンの手により、ほぼ完成に近づいていた。
二年以上も続いたレコーディングの中で作られた歌は70曲にも及び、そこから候補曲が十数曲ほど選ばれて、あとは最終的な選曲を残すのみという段階だった。

にも関わらず新曲にトライしていたのは、前の日にマネージャーであり、親友でもあるプロデューサーのジョン・ランダウから、
「オープニングを飾るにふさわしい歌、ヒット間違いなしのシングル曲がない」という言葉を聞かされたからだった。
自宅でアコースティック・ギターとハーモニカだけで録音された異色作だった『Nebraska』も支持してくれた熱心なブルースのファンのためには、『ああ、これぞブルースだ!』と言ってもらえるような会心のシングル・ヒットが必要だと、ジョンはこの期におよんでブルースに迫ったのである。

怒りを爆発させたブルースはジョンに言い放った。「俺はもう70曲も書いたんだ。また別のが欲しいんだったら、自分で書けよ!」と。
しばしば議論することはあっても滅多なことで感情的になることのない二人が、正面から衝突したのは珍しいことだった。

夜中に仕事を終えてホテルに戻ったブルースは、明け方になってジョンとの激しいやりとりを思い返して、ギターを手に簡単なリフを弾きながら思いついたフレーズを口ずさんでみた。

「朝起きると……」と歌い、「いや、俺は朝には起きないな」と歌い直す。

夕方に起き出しても 何も言うことなんてない
朝 家に帰り 結局同じような気分で布団に入る
ただただ疲れているだけ 自分自身にうんざりするだけなんだよ
ベイビー 少しばかり手を貸してくれないか

「まるでハートが直接、口から出てしゃべっているようだったよ。いちいち脳を通らないでね。サビの言葉が俺の中からほとばしり出たんだ」と、ブルースはその時のことを語っている。

積もり積もったうっぷんを一気に吐き出したかのような 「Dancing in the Dark」は、等身大で最新のブルースがそのまま詰まったような曲になった。

6月に発売されたアルバム『Born in the U.S.A.』は全米1位に輝き、シングルの 「Dancing in the Dark」も全米2位と、アルバム・アーティストだったブルースにとっては過去最大のシングル・ヒットとなったのだ。

Bruce Springsteen『Born in The U.S.A.』
Columbia

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