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ペンタトニックだったことで時代や言葉を超えて日本にも歌い継がれた「ジュピター」

2017.11.17

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イギリスが生んだ作曲家のグスターヴ・ホルストが20世紀になって発表した『惑星』作品32は管弦楽の組曲だが、とくに有名なのが第4曲「木星(ジュピター)」である。
神秘的かつ壮大なメロディーはイギリスのみならず世界中の音楽家やアーティストによって、様々なアレンジが加えられて各国の言語や歌詞で受け継がれている。



イギリスは第一次世界大戦で連合国側の中心として戦って勝利したが、約300万人ともいわれる死傷者を出し、多くの犠牲を払うことになった。
そんな終戦後のイギリスで「木星」のメロディーに歌詞がついた「I Vow to Thee, My Country(祖国よ、我は汝に誓う)」が誕生する。
歌詞には「失われた祖国への愛」と「犠牲になった人への愛」が織り込まれていた。

そのために戦没者追悼式典で歌われるようになり、時とともに広く浸透していったのである。

やがて愛国歌として広まってイングランド国教会の聖歌にもなり、今では王室行事などでも広く歌われている。
学生の頃から好きだったというダイアナ妃の場合は、婚礼の時にも追悼式典でも使用された。



メロディーが懐かしさや親しみやすさを感じさせるのは、ペンタトニック・スケールで作られているためだと言われている。
ペンタとは数字の「5」、トニックは「音」という意味で、日本語にすれば五音音階のことだ。

素朴な五音音階のメロディーは世界中の民謡に見られ、それに影響された歌もまた各国に数限りなくある。
日本人になじみの深い「蛍の光」もスコットランド民謡が原曲だ。

アメリカで愛唱されている「アメイジング・グレイス」も、やはりペンタトニックで出来ている。

「上を向いて歩こう」が1963年に日本語のまま、アメリカをはじめとする世界中で大ヒットしたときも、メロディーがペンタトニックだったことが要因ではないかといわれた。

池井戸潤の原作によるTBS系日曜ドラマ『陸王』のなかで流れた「ジュピター」が、第1回の放映直後から反響を呼んだのは2017年10月15日だった。
オンエアの直後から「感動的だった」「歌ってたのは誰?」 とネット上で動きが起こり、エンディング・クレジットでLittle Glee Monster(リトルー・グリー・モンスター)が歌ったと明示されると、情報はすぐにSNS経由で広まっていった。



ドラマを制作した伊與田英徳プロデューサーは今年の春に、リトグリのライブに足を運んでその歌声に感動して「ジュピター」を歌ってもらったと語った。

「純真無垢なパワーを感じました。フレッシュな力強さがドラマに合っているんじゃないかと思い、お願いしました」


クラッシックやポップス、歌謡曲を問わず、名曲といわれるかつての歌に新しい命を吹き込むのは、人間の歌声が持っているエネルギーや生命力であることが多い。

2003年12月に平原綾香のデビュー・シングルとして発表された「Jupiter」は、吉元由美の日本語詞を得たことでヒットした。
その日本語ヴァージョンが14年後に10代のヴォーカル・グループによって、歌い継がれてまたもや新しい命が吹き込まれたのだ。

コンピューターで操作されたサウンドやエフェクトされたヴォーカルに埋めつくされた感がある現代において、生の歌声による人間的なハーモニーの「ジュピター」がテレビドラマから流れたことから、多くの視聴者たちにも好意的な印象で受け入れられた。

そもそも日本人はイギリスに生まれた哀愁を帯びたペンタトニックメロディーとは、「故郷の空」や「誰かさんと誰かさんが麦畑」の例でもわかるように、もともとなじみがあっただけあって相性がいいのである。

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