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「宮本浩次の歌のうまさはダントツですね」と佐久間正英に言わしめたエレカシのヒット曲「今宵の月のように」

2017.12.29

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デビューから32年目にして初めてNHK紅白歌合戦に出演が決まった2017年12月、エレファントカシマシの宮本浩次は記者会見で、初出場への抱負をこう語った。

「メンバーみんなの夢でした。紅白歌合戦は日本の音楽の最高峰。精いっぱい歌いたい」


1981年に結成されたバンドのエレファントカシマシは、東京都北区の赤羽台にある中学校の同級生たちで結成された。
ヴォーカルの宮本浩次が加入したのは中学3年の時で、6人編成で洋楽のディープ・パープルやレインボー、日本のロックではRCサクセションのコピーから始まったという。

1986年に現在のメンバーがそろってCBSソニーの「SDオーディション」に入賞し、メジャーからデビューするチャンスをつかんだ。
そしてエピック・ソニーからアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』を1988年に出してデビュー、そこからはプロとしても30年のキャリアを積んできたベテランである。

しかしソニー時代のエレカシはきわめて個性的であり、ということはあまり一般的ではないということでもあった。

強力な存在感を放つカリスマ的なヴォーカルの宮本浩次と、どこかに線の細さを感じさせるほかのメンバーたちのギャップのせいなのか、彼らのライブには異様ともいえる緊張感が漂っていた。
それはエンターテイメントとは対極のもので、ときには無様さをさらけ出すこともいとわず、エレカシはありのままの姿で勝負し続けた。

やがて作品と活動の両方で異端的な存在と見なされるようになり、彼らは孤高のバンドとして音楽シーンの中心から外れていく。

売り上げ不振でソニーとの契約が危うくなった1994年、ボ・ガンボスのDr.kyOnや近藤等則といったゲスト・ミュージシャンを迎え、さらにオーケストラやオーバーダビングなどをも取り入れた意欲作、『東京の空』を発表した。



しかし、それを最後にエピック・ソニーとの契約が終了すると、彼らとともにあった所属事務所「双啓舎」もなくなってしまった。

その後、新たにFAITH A&R(現・フェイスミュージックエンタテインメント)と契約し、シングル「悲しみの果て/四月の風」を1996年4月に発表してから、エレカシは広く支持を得るようになっていく。

そして反商業主義的であったエピック・ソニー時代には考えられなかったタイアップや、メンバーたちのメディアへの登場によって売り上げを伸ばし、活動の基盤を整えたところで満を持したかのように、1997年7月にシングル「今宵の月のように」で初めてヒット曲をものにしたのだ。

くだらねえとつぶやいて
醒めたつらして歩く
いつの日か輝くだろう
あふれる熱い涙
いつまでも続くのか
吐きすてて寝転んだ
俺もまた輝くだろう
今宵の月のように



「今宵の月のように」のプロデュースを引き受けたのは佐久間正英である。
四人囃子やプラスチックスのベーシストにしても知られる、今はなき名プロデューサーは当時のことをこのように語っていた。

エレカシもちょうど、転機になる時期でした。エレカシも大変でしたよ、いろんな意味で。
宮本くんはああいう人なんで、逆に大変ではないんです。
ただバンドと歌い手の関係として、歌があそこまで強力で、それに対してその頃はまだバンドがちょっと弱かった。
なおかつ、中学生ぐらいからずっと仲良しのメンバーで、仲良しなくせにひとことも口をきかないという関係も独特で(笑)。
僕がその中に入っていかなきゃならないのが、難しいところでしたね。
みんながもっと軽く口をきける感じだといいんだけど、宮本くん経由でないと誰も口をきかないんですよ。


そうしたバンドを精神的な面でもまとめながら、宮本浩次の書いてきた個性的な楽曲を佐久間は見事なヒット曲に仕上げていった。

インタビューのなかで「特に印象的な作品は?」という質問に対して、バンドの魅力と本質をよくわかっている佐久間は、宮本浩次の歌のすごさについてこんな風に語っていた。

曲で言うと、「今宵の月のように」はすごいなと思いました。
宮本浩次は歌が本当にすごいですね。
その場で聴いていられる自分が幸せというか、感動します。
面白いのは、歌詞を間違えるケースがすごく多い。
そうすると、そこで止めて、また歌いだすという録り方で、全部通して歌うということがあんまりない。
力量的には、もちろん歌えるんですよ。
でもなぜか歌詞を間違えるのは、彼にとって言葉というのは、実はどうでもいいんですね。
彼自身がそう言ってたんだけど、「言葉なんかどうでもいい、言葉を歌ってるわけじゃない」と。
だから歌ってる時に、どんどんエモーショナルになってくると、言葉から意識が外れちゃう。
で、間違えるたびにだんだんイライラがつのってくるわけですよ(笑)。
それがさらにテンションを高めて、もっとすごい歌になっていく。
僕が経験したロックバンドの中で、テクニカルな意味も含めて、宮本浩次の歌のうまさはダントツですね。
本当にうまい。ピッチとかリズムがうんぬんということではなく、たとえば「北島三郎の歌ってすごいよね」というような意味合いにおいて。



(注)文中に引用した佐久間正英氏の発言は、下記サイトからの引用です。【月刊BARKS 佐久間正英 前進し続ける音楽家の軌跡~プロデューサー編 Vol.4】90年代のプロデュースその2~早川義夫、エレカシ、くるり https://www.barks.jp/news/?id=1000095241

エレファントカシマシ『All Time Best Album THE FIGHTING MAN』
Universal

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