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リンジー・バッキンガムが “きみはきみの道を行きなよ”と歌ったフリートウッド・マックの「オウン・ウェイ」

2018.04.12

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1970年代半ばからアメリカで驚異的ともいえるアルバム・セールスを誇ったフリートウッド・マックが、1977年に放ったメガヒットが1500万枚もの売上を記録したアルバムの『噂(Rumours)』だ。

そしてアルバムから先行発売されたシングルの「オウン・ウェイ(Go Your Own Way)」は、1976年12月にてビルボードのHOT100で10位まで上昇した。
ベストテン入りを果たすヒット曲になった「オウン・ウェイ」のソングライターは、ギタリストのリンジー・バッキンガムだった。

その曲の中で繰り返される歌詞の「You Can Go Your Own Way Go Your Own Way」は、聴くものによってさまざまなニュアンスで受けとめることが可能だ。

16ビートのノリで力強く歌われるラヴ・ソングなので、「あなたはあなたの道をゆけばいい あなたの道を」とも、「きみはきみの道を行きなよ さあ行きなよ」とも、「勝手にするがいいさ もう勝手にしろ」とも受け取れる。



『噂』のレコーディングに取りかかっていた頃、恋人同士だったリンジーとスティーヴィー・ニックスのカップルは破局に至っている。
しかしそうした状況下でスティーヴィーが書いた歌が、ビルボードの全米チャートでは1位に輝いたのだ。

「ドリームス(Dreams)」の歌詞は明らかに、リンジーに向けられていた。

Now here you go again
You say you want your freedom
Well who am I to keep you down

さあ、また始まったわ
あなたは自分の自由がほしいっていう
私があなたを縛りつけるって




アルバムのレコーディング中には、もう一組のカップルだったジョンとクリスティン・マクヴィー夫妻も離婚の危機にあった。
さらにはリーダーであるミック・フリートウッドまでも、離婚問題を抱えて苦しんでいたという。
メンバーの一人ひとりがそれぞれに、精神的には不安定な状態に置かれていたのだ。

〈参照コラム〉フリートウッド・マック〜二組のカップルの破局から生まれた歴史的ベストセラー『噂』

とりわけ二組のカップルの間には、いつも緊迫した空気が流れていて破局も離婚も進行していった。
しかし前作の10thアルバム『ファンタスティック・マック』で、バンドを結成してから初めて大きな成功をつかんだ彼らは、大勢のスタッフとともにアルバム制作に集中して取り組んでいく。

その結果、1年にもおよぶ時間をかけて完成したのが、アメリカの音楽史に残る傑作アルバムの『噂』だった。
当時のことをスティーヴィーが、後になってこう振り返っている。

一緒にいることが苦痛でした。
気持ちを切り替えられないからです。
でも精神的にイラついていた時、スタジオに音楽があることで救われました。


バンドという人間関係から生まれてくる音楽の場合、個人のソングライターによる作品であったとしても、共同体的な一員として意識や社会との関係などが、いつのまにか楽曲に反映されることがある。

一見すると制御されてよくまとまったアルバムに聴こえる『噂』だが、ハーモニーやコーラスからなどからは緊張感が伝わってくる。
とくにリーダーのドラムから、そのことを感じるときがある。

リンジーはアルバムについて「ミュージカル・ソープ・オペラ」、音楽による連続メロドラマと呼んだそうだが言い得て妙だ。
共同作業による音楽づくりで長い時間をかけることによって、人間関係から醸成されてくる生じる空気感は目に見えないし、確かめることも出来ない。
だが確実になにか共有された時間と空間が楽器の響きや音色、歌声やハーモニーとともにテープに記録されていく。

それこそがアナログ・レコードやテープの時代には、特質としてあった音楽のエッセンスなのだ。
当時のメンバー間にあった葛藤さえもが作品に影響して、大きな魅力になったのではないかと考えられる。

結成時から数多くのミュージシャンが出入りをしながらもその時代にあった音楽をつくることで、変化しながら発展してきたバンドにふさわしい究極のアルバム、それが『噂』だった。



アイルランドが生んだバンドのクランベリーズがカヴァーした「オウン・ウェイ」を聴くと、先ごろ46歳で急逝したドロレス・オリオーダンが歌っていることもあって、「You Can Go Your Own Way Go Your Own Way」という歌詞が、なんとも切実で切ない訴えとして聴こえてくる。




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