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ローリング・ストーンズの名盤『スティッキー・フィンガーズ』で渋い輝きを発していた「デッド・フラワーズ」

2019.04.26

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単純なコード進行でどれだでカッコいい曲が作れるのか、というのはポピュラー・ミュージックにとって、常に大きなテーマの一つだった。
たとえばスリーコードのシンプルなロックンロールを愛したルー・リードは、「あの最も基本的なコード進行ほど感心したものはほかにない」と語っていた。

「耳について離れないあのコード進行にメロディを乗せられたら素晴らしいと思わないか?
それに、ひとつのコードからもうひとつのコードへの進行と同じくらい、シンプルでエレガントで内容のあるリリックが加わったら素晴らしいと思わないか?」

<参照コラム>「アンディ・ウォーホルが手がける全く新しいショウでメインを務めたヴェルヴェット・アンダーグラウンド」


その点で実に見事な作りだと感心させられるのが、ローリング・ストーンズの「デッド・フラワーズ(Dead Flowers)」である。
D,A,G,というシンプルなスリーコードのカントリー・ロックなのだが、キャッチーなメロディーに意味深でフックが効いた歌詞がついている。
その結果、ストーンズらしい反逆児のイメージを保ちつつも、どこかにエレガントな気配を感じさせる仕上がりになった。


 布張りの椅子に座り
 金持ち野郎に話しかけるお前
 俺が汚らしい仲間と発し
 一緒にいるところに
 出くわさないといいんだがな
 それに俺はひとりじゃいられないのさ

 俺に恥をかかせりゃいい
 スージー
 鼻で笑えばいいぜ
 アンダーグラウンドの女王様気取りのお前
 俺に枯れた花でも送ってくれよ
 毎朝、郵便で送ってくれればいい
 俺もお前の墓に
 薔薇を添えることは忘れないから


1971年に発表されたアルバム『スティッキー・フィンガーズ(Sticky Fingers)』は、ロックにおける歴史的な名盤に数えられている。
これによってローリング・ストーンズは70年代に入って、完全にバンドとして蘇ったといわれるようになった。

発表当時はA面の1曲目が大ヒット曲「ブラウン・シュガー」で始まり、3曲目には名曲のほまれ高いカントリー・バラードの「ワイルド・ホース」が収められていた。
そのなかでB面4曲目という位置にありながら、なんとも渋い輝きを発していたのが「デッド・フラワーズ」だった。

レコーディングではブライアン・ジョーンズに変わって正式メンバーになったミック・テイラーが、ギタリストとしての本領を見事に発揮している。
またバンド結成時から6人目のメンバーといわれていた裏方で、ロード・マネージャーだったイアン・スチュアートの弾くピアノも、心地よく響いてくる。
さらには死の影など微塵も感じさせない生命力に満ちたドラミングで、チャーリー・ワッツがバンドを支えながら牽引していた。


ドラッグを想起させるミック・ジャガーの歌詞には、その頃のストーンズならではのセンスと毒気が含まれている。

 ピンクのバラ色キャデラックに
 お前がふんぞり返る時
 ケンタッキーダービーに賭けてる時
 ああ、俺は針とスプーンを手に
 地下室にいるのさ
 俺の痛みを取ってくれる別の娘とな


このアルバムのアートワークを手がけたのは、ポップ・アート界の第一人者だったアンディ・ウォーホールで、彼のアイデアによって本物のジッパーが付いている前代未聞のジャケットが作られることになった。



ウォーホルが主宰していたスタジオ「ファクトリー」は1960年代の半ばから、ニューヨークにおけるポップ・カルチャーの発信地となっていった。
したがってボブ・ディランやローリング・ストーンズのミック・ジャガー、作家のトルーマン・カポーティ、モデルのイーディー・セジウィックなど、ミュージシャンからモデル、アーティスト、文化人たちの集まる場にもなったのである。
その中には”アンダーグラウンドの女王”と目された者も複数いた。

アンディはルー・リードがいたヴェルヴェット・アンダーグラウンドを見出して、彼らのアルバム『he Velvet Underground & Nico 』でプロデュースを引き受けた人物でもあった。



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