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「ビギン・ザ・ビギン」~日本では越路吹雪が歌い継いだコール・ポーターの美しいスタンダート・ナンバー

2019.05.31

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「ビギンを始めよう!」

コ-ル・ポーターはミュージカルと映画音楽の分野で活躍したアメリカのソングライターで、フレッド・アステアが歌った「夜も昼も」を筆頭に多くのスタンダード・ナンバーを残した。

1935年、ミュージカル『ジュビリー』の楽曲を書いていたポーターは、当時パリで流行していたダンスのビギン=beguineと、英語のビギン=beginを結びつけるアイデアを思いついた。
「ビギン・ザ・ビギン(begin the beguine)」はソングライターらしい洒落た語呂合わせから生まれた。

ビギン=beguineはカリブ海に浮かぶ西インド諸島の一つ、フランス領マルティニ―クに生まれたカップル・ダンスで、流れるような軽いノリが特徴だ。
そしてヨーロッパに伝わる優雅な社交ダンスと、ラテン系民族の素朴なダンスによる異文化が結びついて名曲が誕生した。


ビギンの演奏が始まると
優しい調べがあたりをつつむ
輝ける南国の夜がよみがえる
色あせることのない思い出が浮かぶ

星空の下にまた君といる僕
浜辺ではオーケストラが音楽を奏で
ヤシの木々までがその葉をゆらす
ビギンの演奏が始まると


最初に使われたのはブロードウェイ・ミュージカル『ジュビリー』の挿入歌だったが、これを広めたのはクラリネット奏者のアーティ・ショウである。
彼がクラリネットを活かしたオーケストラ向けのインストゥルメンタルに編曲したところ、軽快なスイング・ナンバーとなった「ビギン・ザ・ビギン」は1938年にB 面の曲として発売されて、記録的な売上げの大ヒットになったのだ。


1941年にはコール・ポーターの伝記映画『夜も昼も(原題Night and Day)』が製作され、挿入歌に使われたことで世界中にまで広まっていった。

その後もフランク・シナトラやペリー・コモ、エラ・フィッツジェラルドほか、数えきれないほど多くのシンガーにカヴァーされて、スタンダード・ソングを代表する1曲になっている。

そんな「ビギン・ザ・ビギン」が日本でも広く知られるようになったのは、1950年にショウ・ビジネスの殿堂「日劇」で開かれた『歌う越路吹雪』のステージでカヴァーされてからのことだ。
その翌年に行われた帝国劇場公演のコミック・オペラ『モルガンお雪』でも、越路吹雪は劇中で「ビギン・ザ・ビギン」を歌って好評を博した。、

その時期の模様と思われる映像が、1951年12月に公開された東宝映画『結婚行進曲』に残されている。


ちなみにこの『モルガンお雪』の舞台が大評判となって、越路吹雪は日本のエンターティナーのトップの座についたと言われている。

また1982年にはフリオ・イグレシアスが歌うスペイン語ヴァージョンが、世界中でリバイバル・ヒットした。


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