TAP the STORY

エルヴィス、キャッシュ、パーキンス、ルイスによる奇跡のセッション「ミリオンダラー・カルテット」

2017.05.13

Pocket
LINEで送る

1956年12月4日、いくつもの偶然が重なって音楽史に残る奇跡のセッションが起こった。
世界中にロックンロールが広まったエポック・メイキングな年も、そろそろ終わりが近づいてきた頃のことである。

全米の若者を熱狂の渦に巻き込んでいたエルヴィス・プレスリーが、テネシー州メンフィスにある古巣のサン・レコードを予告もなく訪れたのがことの始まりだった。

1954年にメンフィスのインディーズ・レーベルだったサン・レコードからデビューしたエルヴィスは、、南部を中心に若者たちの間で旋風を巻き起こしていたが、翌年の夏を最後に当時としては破格の3万5000ドルの移籍金でメジャーのRCAに引きぬかれた。

1956年1月27日にRCAから発売されたシングル「ハートブレイク・ホテル(Heartbreak Hotel )」は、4月21日に初の全米チャート1位に輝いた。
そこから快進撃が始まり、その年にリリースしたすべてのシングル盤が全米1位を獲得した。

「アイ・ウォント・ユー、アイ・ニード・ユー、アイ・ラヴ・ユー (I Want You,I Need You,I Love You)」、「ハウンド・ドッグ (Hound Dog) 」、「冷たくしないで (Don’t Be Cruel) 」、「ラヴ・ミー・テンダー (Love Me Tender) 」と勢いは止まらず、エルヴィスは南部の人気者からアメリカのヒーローになっていく。

エルヴィス アルバム「 ジャケット

ファースト・アルバムの「エルヴィス・プレスリー登場!(Elvis Presley)」も10週連続1位を記録、RCAのポップス部門における最大のヒットアルバムになった。
ソロ・アーティストとしては史上初めて100万ドル以上の収益を記録したというニュースは、音楽とは関係なく巷の話題にのぼった。

移籍でエルヴィスを失ったサン・レコードのオーナーでプロデューサーのサム・フィリップスが、次のブレイク・アーティストとして売り出したのが、カントリー・シンガーのカール・パーキンスだ。

1月1日に発売された「ブルー・スウェード・シューズ」は全米3位まで上昇する大ヒットになり、「ハートブレイク・ホテル」よりも早くパーキンスは全米に知られる存在となった。

12月4日、サン・レコードのスタジオではパーキンスの新曲がレコーディングされていた。
そこに何の予告もなく、ガールフレンドを連れてエルヴィスが現れた。

elvis.sunstudio13スタジオ

レコーディング・セッションを聴いたエルヴィスは、コントロール・ルームでフィリップスと軽く話した後で、スタジオの中に入っていった。

新曲を厚いサウンドにしたいと考えていたサムは、まもなくデビューさせる予定だった期待の新人、ジェリー・リー・ルイスをピアノで参加させた。
やがてスタジオでは自然にジャム・セッションが始まり、ピアノを囲んだ3人は讃美歌を歌った。

レコーディングの様子を見ようと、ジョニー・キャッシュがスタジオにやってきたのは予想外のことだった。
キャッシュもセッションに加わって、ゴスペル、カントリー、リズム・アンド・ブルースと、4人は1時間以上も一緒に歌って楽しんだ。


それを録音しないのはもったいないと思ったエンジニアのジャック・クレメントは、テープレコーダーを回した。
これを記事にしないともったいないと思ったフィリップスも、地元の新聞社に電話を入れて記者とカメラマンを呼んだ。

ミリオンダラーズ写真 ガールフレンド

翌朝の新聞には「ミリオンダラー・カルテット」というタイトルで、奇跡のセッションについての記事が掲載された。(写真の右に写っているのがエルヴィスのガールフレンド、マリリン・エヴァンス)

アメリカの南部に生まれ4人には、毎週日曜日に讃美歌を歌って育ったという共通点があった。
娯楽を楽しむ環境も経済的な余裕もない子どもたちには、教会は音楽を学べる場所であり、ゴスペルは最も当たり前のルーツ・ミュージックだった。

もちろん4人にはゴスペル以外にも共通する音楽があった。
2003年にキャッシュがこの世を去った時、ジェリー・リー・ルイスが寄せた言葉にはこうある。 

ジョン(ジョニー・キャッシュ)やエルヴィス達はロカビリーで、私はロックンロールだった。
だが私たちには、皆やり方は違えど、明らかにカントリーがベースにあった。
突き詰めてしまえば、私たちは全員カントリーの人間なのだ。


その日に録音されたテープが発見されたのは13年後のことで、それは『ミリオン・ダラー・カルテット』と名付けられて発売された。

『ザ・コンプリート・ミリオン・ダラー・カルテット』
SMJ


(このコラムは2014年11月15日に公開されたものです)

Pocket
LINEで送る

スポンサーリンク

関連アーティスト

関連するコラム

[TAP the STORY]の最新コラム

このコラムへの感想・コメントを書く

Pagetop ↑