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いつも黒い服をまとう男、ジョニー・キャッシュ

2015.06.06

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20世紀の後半はロックとカントリーの間には、歴然とした境界線があった。

そうした時代だったにもかかわらず、ジョニー・キャッシュが立ちはだかる壁を越えて活躍し、両方のファンから一目置かれてきたのは、表現者としての存在自体が強烈なメッセージを放っていたからだ。

常に反骨の魂を持ち続け、弱者の側に立って歌い続ける姿勢が、多くの人たちから敬意の念を集めたのだ。

ジョニー・キャッシュは1980年、最年少で「カントリーの殿堂」入りを果たした。
そして1992年には「ロックの殿堂」に選出され、「カントリーの殿堂」と「ロックの殿堂」両方に選ばれた、最初のアーティストとなった。

晩年にはブルース・スプリングスティーン、ニール・ヤング、エルヴィス・コステロといった多くのロック・アーティストたちからオマージュを捧げられ、ジョー・ストラマーやU2とは時代を越えて、素晴らしいコラボレーションを残している。

トム・ウェイツがこんな明言を残している。

ジョニー・キャッシュがラジオから流れてきたら、誰も局を変えたりしない。
その声、その名前はすべての境界線を越える。それは誰もが信じられる声なのだ。



“マン・イン・ブラック”とも呼ばれたキャッシュは、いつでも黒い服を身に纏ってステージに立っていた。
ステージの上だけでなくオフステージでも、黒い服を好んで着ていたと言われている。

どうして俺がいつも黒装束なのかって思っているんだろう
いつも黒い色しか身につけず
陰気くさいのはどうしてと訝っているんだろう


その名も「Man In Black」という歌には、キャッシュの生き方や歌への想いが正直に綴られている。

俺は黒を着る 貧しく打ちのめされた人々のため
絶望の中、町の飢えた側にいる人々のため 
俺はそいつを着る 長い間罪を償ってきた受刑者たちのために
彼らは時代の犠牲者なのだ


そして実際に刑務所でのコンサートにも数多く出演し、囚人たちから何度も拍手喝采を受けていた。
それは有名なフォルサム刑務所におけるライブ・アルバム『At Folsom Prison』(1968年)や、『At San Quentin』(1969年)で確認できる。



歌詞に込めたその強烈なメッセージ性を、目に見える形で表していたのが、黒い服を身にまとい、毅然として生きる姿だった。

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