「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the STORY

世代を超えて通じ合う、アウトローの心

2024.04.05

Pocket
LINEで送る

カート・コバーンが「ジョニー・キャッシュのようなシンガー・ソングライターとして評価されたい」と憧れを公言していたように、カートの自殺の1ヶ月前にデビューを果たしたベックもまた、ジョニー・キャッシュに強く影響を受けたアーティストのひとりだった。

「私が、1995年にハリウッドのパンテージズ・シアターで演奏していた時に、ベックが私のためにショーを開いてくれたんだ。バックステージで彼の音楽を聴いていたんだけど、アパラチアン・ミュージックであるヒルビリーの演奏にとても感銘を受けたのを覚えている」

1997年、テレビ番組の取材を受け、ジョニー・キャッシュはベックについてこう語った。
40歳近い年の差がある二人だが、両者は共鳴しあう感覚を持っていた。

「彼はとても巧みだった。いろんな曲を演奏していたけれど、とくに〈Rowboat〉は好きだった。私が60年代に作っていたかもしれないような曲だ。当時、私も同じようにつらい経験をしたことがあったからね」

Johnny Cash talks about Beck documentary TV show 1997


ベックのライブで初めて聴いて以来、「Rowboat」は幾度かキャッシュのステージでも披露され、American Recordingシリーズで正式にレコーディングもされた。

船を漕げ 向こう岸まで連れてってくれ
彼女は 友達にもなりたくないんだと
彼女は穴を掘った 俺の心の奥底に
彼女は 友達にすらなりたくないんだと


芸術家の祖父、音楽家の父、ヴィジュアル・アーティストの母という家系に生まれたベックは、高校中退後、家を飛び出して、ヨーロッパやアメリカ国内を放浪して生活していた。

「僕が10代の頃はギリギリの生活だった。ただ、ホームレスをやっていても悲惨だって感じなかったね。僕には音楽があったから、いつも裕福だった」

パンテージズ・シアターでジョニー・キャッシュのために演奏したベック。彼はその時に、ジミー・ロジャースの「Waitin‘ For A Train」のカバーを披露している。この曲もまたジョニー・キャッシュの古いレパートリーであり、流れ者の歌であった。

ジョニー・キャッシュとベックは、時代を超えて、同じ景色を見ていた。

Beck「Waitin For A Train」Live at Pantages Theater 1995



Unchained+johnny_cash_
ジョニー・キャッシュ
『Unchained』
Lost Highway(1996年)

Johnny Cash「Rowboat」

beck
ベック
『Stereopathic Soulmanure』
Flipside(1994年)

Beck「Rowboat」


*本コラムは2014年2月8日に初回投稿された記事に加筆修正しました

●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the STORY]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ