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マリリン・マンソン27歳〜ドラッグの過剰摂取、精神崩壊の危機から生まれたアンチクライストスーパースター

2018.09.15

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「盲目の消費主義なんてクソくらえだ。バカな奴らはバカげたものを手に入れればいい。彼ら全員を殺してやりたいところだが、許してやるとしよう。俺が彼らにできる最悪の仕打ちは、毎朝彼らを目覚めさせ、バカげたクソ人生を送らせて、彼らのクソガキどもをクソ家庭で育てさせ、アンチクライスト・スーパースターというレコードを作って、彼らをことごとく閉口させ破滅させてやることなのだから。アメリカよ!クソ喰らえ!俺をやっつけるがいい。世界はクソったれスターの誕生に、その脚を開くのだ!」


お前が地獄を願う気持ちのおかげで俺はのし上がった
お前を売る必要はなかったな
お前は持ち金を全部小便井戸に投げ込んじまった
お前にできるのは奴らの言いなりに動くことだけさ

悔い改めよ それが俺の言いたいことだ
俺は自分を偽るために皮まで剥いだんだぜ
悔い改めよ それが俺の言いたいことだ
それはそうと…俺は誰の失敗作なんだろうな?


90年代の初頭に突如としてアメリカの音楽シーンに現れたマリリン・マンソン。
ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーがプロデュースを手がけ、ハードなリズムと破壊的なギター、マンソンの邪悪で暴力的なヴォーカルがあいまった“シアトリカルメタル”の極致といえるサウンドとパフォーマンスで世界を驚愕させた。
1996年、27歳を迎えた彼は2ndアルバム『Antichrist Superstar』をリリースしたことでより大きな成功を手にする。
同作は全米チャートにおいて初登場第3位に輝いた。
このアルバムの主人公“アンチクライスト”というキャラクターについて、彼はこう語る。

「あのキャラクターは、大人になる過程で俺が目にしてきたものの集約なんだ。」

頭を切り落としてみろよ
またすぐに生えてくる
俺はヒドラ
さあ!お前のスターの姿が見えてくるだろう

指を針で刺してみろよ 賽(サイ)は投げられた
今や月は太陽を覆い隠した
天使は羽を広げてる
苦難の時が始まったんだよ


幼少期に自身が家族から受けた虐待。
少年時代に通ったキリスト教系学校における悪夢の日々。
保守的キリスト教が多数派を占めるアメリカ社会に対して、幼いころから感じ続けてきた苦痛、抑圧、屈辱感、孤独感。
収録された曲からは、彼のパーソナリティと退廃的かつ反社会的な世界観を感じ取ることができる。
彼はローリングストーン誌のインタビューで、こんなことを語っている。

「ある時点の未来を舞台にした夢を見たんだ。場所はフォートローダーデールに似ていた。行き着くところまで行ったエンターテイメント業界は、人々をゾンビにして金儲けのために利用していた。完全に脳死状態にある女性たちが檻の中で、ペニスに噛み付かないよう顎に矯正装置を取り付けられた状態のまま踊っていて、その周囲で男どもがマスターベーションをしていた。まさにソドムとゴモラの世界。アンチクライストスーパースターという醜いキャラクターはそのヴィジョンから生まれたんだ。」


時は来た!もう疑いはない
俺たちのアンチキリストがそこまで来ている
時は来た!もう疑いはない
俺たちのアンチキリストがそこまで来ている
時は来た!もう疑いはない
俺たちのアンチキリストがそこまで来ている

お前が傷を負ったとき お前は俺の裏切りに気づくよ
お前が傷を負ったとき お前は俺の裏切りに気づくよ
お前が傷を負ったとき お前は俺の裏切りに気づくよ



「世界最期の日、つまり最期の審判の日に、ニューヨークで巨大な紙吹雪パレードをやっている光景。次の瞬間、人々は紙吹雪の代わりに野菜や腐った肉を投げている。俺は人間と動物の皮で作られたでっかいバルーンに括り付けられた巨大な十字架の上にいる。みんなが祝っていた。彼らは自分たちがついに死んでしまうことを喜んでいた。今となってはよくわからない。それが夢なのか現実なのか…」

製作当時、共同プロデューサーのトレント・レズナーと共に、ニューオーリンズでレコーディング臨んでいた彼は慢性的な躁状態にあったという。
ドラッグの過剰摂取や、メンバー間での大喧嘩などは日常茶飯事だったという。
そんな中、バンドのフロントマンである彼は精神崩壊の危機に瀕していた。

「モルヒネ、パーコセット、ヒドロコドン、ありとあらゆる薬を口に放り込んでいた。指と爪の間に縫い針を刺して、痛みを感じるかどうか試したりもした。俺の精神は完全に麻痺してしまっていたんだ。」


翌1997年、彼は同作からシングルカットされ大ヒットとなった「The Beautiful People」を披露するためMTV Video Music Awardsのステージに登場した。
両脇にシークレットサービスを従え、マーチングバンドとともに姿を現した彼は“Antichrist Superstar”のロゴが記された演壇に立ち、高らかに反キリストを訴えた。

「親愛なるアメリカの人々よ、キリスト教という名のファシズムに屈する時代は終わった。そして美というファシズムに囚われる時代も終わりを迎える。そこに座っているお前たちはみないつか天国にいけるように、自由でいれるように、そして常に美しくあろうと涙ぐましい努力を続けている。しかし、俺はあんたたちに聞きたい。一体何が嬉しいんだ?」



<参考文献『マリリン・マンソン自伝〜地獄からの帰還〜』マリリン・マンソン(著)ニール・ストラウス(著)村上ひさし(翻訳)/シンコーミュージック>

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