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ビリー・ホリデイ27歳〜歌手としての成功、結婚、夫の浮気、そして麻薬に溺れて行く日々…

2021.03.22

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伝説のジャズシンガーとして名高いビリー・ホリデイ。
44年間の生涯の中で、約25年も歌い続けた彼女。
その音楽人生はけっして順風満帆なものではなかった。
キャリア初期には驚くほどハリがあった声も、多量のアルコール・麻薬摂取により、晩年は別人のように枯れてしまい…声量も失われていった。
彼女が麻薬に手を染め始めたのは二十代だったという。


──1941年、当時26歳だった彼女は1930年代にハンガリー語から英訳された「Gloomy Sunday (暗い日曜日)」を歌った。
それは、自身最大のヒットとなった「Strange Fruit (奇妙な果実)」(1939年)に続く好セールスを記録した。
こうして彼女は成功への階段を着実に昇り詰めてゆく。
そんな中、トロンボーン奏者であり麻薬の密売人でもあったジミー・モンローと関係を深め、母と住む家を出て早々に結婚することとなる。
10歳の時に強姦され、相手が白人だったために(彼女が被害者なのに)逆に売春容疑で逮捕されるという理不尽な経験を強いられた過去を持つ彼女にとって、ジミーとの出会いは特別な意味を持つものだった。

「母はジミーとの結婚を“きっと後悔するに違いない”と私に忠告したわ。」

それは彼女が27歳の頃に経験した苦い思い出だった。
ある晩、ジミーがシャツに口紅をつけて帰宅した。
彼はビリーに気づかれたことを悟ると、言い訳の言葉を次々と並べ出したという。

「他の女と何をしてきたとしても、私に嘘をつく彼の態度がどうしても堪えられなかったの。彼の言い訳をさえぎって私はきっぱりと言い放ったわ。風呂にお入んなさい!Don’t explain!(言い訳しないで)」

これで一切は終わらせたはずだった。
しかし、彼女にはその夜のことがどうしても忘れられなかった。
自分が口にした“Don’t explain!(言い訳しないで)”という言葉が、頭の中で渦巻いていたのだ。
彼女はどうにかして、その苦しさから抜け出そうとした。
その不愉快な経験は“悲しい歌”となって後に自身が唄うこととなった。


言い訳はいいの
ただ「このまま一緒だよ」と言って
戻って来てくれたことが嬉しいの
だから今は黙って…言い訳はやめて

言い訳で何が得られると言うの?
その口紅の話なんて聞きたくない
だから今は黙って…言い訳はやめて


「Don’t Explain」は、ビリー・ホリデイと作曲家アーサー・ヘルツォーク・ジュニアが1944年に完成させ、1946年にデッカレコードからシングル盤としてリリースされた。
ジミーの兄クラーク・モンローは、ビバップが生まれた店として名高いハーレムのクラブ”モンローズ”の経営者だった。
ジミーは兄の店で演奏活動をしてたが、ヘロインの密売容疑で逮捕され、ビリーが多額の弁護費用を払う羽目となった。
男で苦労する彼女の姿と歌がシンクロして、この歌も大ヒットしたという。
生前、ビリーはこの歌についてコメントを残している。

「この歌を聴く女性は、女の悲しさに身をつまされるという。もしもこの歌の作者が誰かと訊かれたら…ジミー・モンローだと答えるわ。口紅をつけて帰宅するような男達が世の中からいなくならないかぎり、この歌は永遠に歌い継がれていくのかもしれないわね。」

ジミー・モンローと一緒になって、彼女はあることに気がついた。

「彼は私に隠れて変なものを吸っていたの。」

そして…ジミーは彼女にアヘンやコカインを覚えさせたのだ。
10歳の頃に強姦され、理不尽な逮捕を経験した彼女は、度々叫び声を上げながら恐怖で目覚めることがあったという。
麻薬はそんな彼女の心の弱さに付け込んできた。

「私たちの結婚生活は終りに近づいていた。私が麻薬の虜になったことをジミーになすりつけようとは思わない。自分のしたことは自分で責任を持つべきだから。誰もがこの習癖の虜になる時は同じような経過をたどるものよ…」

やがて彼女はビバップのトランペット奏者ジョー・ガイと出会い、ジョーの影響で今度はヘロインにも手を出すようになる。
黒人として初めて立ったメトロポリタン歌劇場での晴れやかな舞台でも、デッカと契約を交わしたときも、彼女はジョーの支配下にあり、ヘロイン漬けだったと言われる。
彼女は当時を振り返りってこんな言葉を残している。

「私は最も稼ぎのいい奴隷の一人になったわ。週に1,000ドルを稼いでいたけど、私にはバージニアで綿摘みをしている奴隷ほどの自由もなかったの。」

やがてホリデイの周りには「契約を守らない」「よく舞台に遅れる」「歌詞を間違える」といった噂が囁かれ始める…


<引用元・参考文献『奇妙な果実 ビリー・ホリデイ自伝』ビリー・ホリデイ(著)油井正一(翻訳)大橋巨泉(翻訳)/晶文社>




こちらのコラムの「書き手」である佐々木モトアキの音楽活動情報です♪
宜しくお願い致します。





【山部“YAMAZEN”善次郎×佐々木モトアキ ダブルネーム弾き語りTOUR
“ちょっと長い関係の歌旅2021”】


2月20日(土)福岡 Bassic.  
2月21日(日)札幌 Beggars Harlem 
2月27日(土)新潟 Live Bar Mush
2月28日(日)下北沢 Laguna(限定20名入場可+配信ライブ)
3月12日(金)久留米 農と音
3月13日(土)熊本・八代 7th chord 
3月14日(日)大牟田 陽炎
3月16日(火)行橋 Memphis
3月18日(木)東広島 pasta amare  
3月19日(金)大阪 新世界ヤンチャーズ
3月20日(土)静岡・御前崎 Cook House椿
3月21日(日)名古屋 ROLLINGMAN
4月2日(金)仙台 ホームラン酒場  
4月3日(土)山形 ヱレキ酒場オリハント 
4月4日(日)秋田 カウンターアクション 
4月8日(木)長崎 R-10 
4月10日(土)和歌山 OLD TIME
4月11日(日)所沢 音楽喫茶モジョ 
4月12日(月)横浜 Bar Take’s
4月15日(木)小郡 ジラソーレ〜8周年記念スペシャルライブ〜
4月16日(金)愛媛 スタジオOWL
4月17日(土)徳島 デラシネ
4月18日(日)高知 A’bar
4月21日(水)福岡 Bassic.(限定15名入場可+配信ライブ+TOUR総括スペシャルトーク&スライドショー)


↓チケットご予約&公演詳細はこちら
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12634659162.html






【佐々木モトアキ独り唄いTOUR“歌ものがたり2021”春夏】


5月1日(土)岡山Desperado 
5月2日(日)島根(出雲)Bar Soul  
5月3日(月・祝)鳥取(米子)シンワンメイク
5月4日(火・祝)昼-鳥取(米子)スナックCandy  
5月4日(火・祝)夜-鳥取(米子)LiveたちQ赤ラベル
5月8日(土)山口(下関)T-Gumbo 
5月9日(日)福岡(みやま)柿原酒店 
5月16日(日)茨城(水戸)音食座敷 開化亭
5月22日(土)青森Be on cafe 222  
5月23日(日)盛岡FEELGOOD 
5月28日(金)京都 夜想
5月29日(土)兵庫(宝塚)IL grazie
5月30(日)八幡DELSOL café
6月5日(土)広島OK鉄板
6月6日(日)佐賀LIVE BAR雷神 
6月12日(土)埼玉(新座)エアストリームカフェ
6月13日(日)新潟(三条)Gallery Bar Veronica 
6月25日(金)群馬(前橋)Cool Fool 
6月26日(土)東京(高円寺)MOONSTOMP
6月27日(日)埼玉(川越)大黒屋食堂  
7月3日(土)田川Diamond Moon
7月4日(日)行橋Rock ‘n Roll Bar Memphis 
7月6日(火)福岡(薬院)遊来友楽 
7月10日(土)熊本(八代)bar 7th chord
7月11日(日)山口(柳井)みんなの広場 Live Village 
7月16日(金)蒲郡Chot Bar VOODOO LOUNGE
7月17日(土)名古屋 喫茶ニューポピー 
7月18日(日)浜松(弁天島)LIVE & DISCOマルガリータ 
7月24日(土)群馬(渋川)Casa Midori 
7月30日(金)岩手(宮古)カントリーズcafe
7月31日(土)岩手(二戸)HOUSE OF PICNIC 
8月1日(日)秋田(能代)ハックルベリー 
8月3日(火)小郡 ジラソーレ 
8月7日(土)群馬(下仁田)otenki食堂
8月21日(土)久留米 農と音
8月22日(日)山口(萩)玉ネギ畑  
8月23日(月)東広島pasta amare
8月27日(金)福岡 Bassic. 
8月28日(土)LIVE BAR雷神
8月29日(日)大牟田 陽炎


↓チケットご予約&公演詳細・共演者情報はこちら
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12660274732.html




新作ミニアルバム『You』のタイトルナンバー「You」のミュージックビデオです♪
映像編集、ポートレート(写真)撮影共に、佐々木モトアキ本人が手掛けております。
とてもシンプルな技法ですが、何よりも登場する皆さんの表情が素敵です✨
人が“目を閉じている”表情。
その“瞼(まぶた)に浮かんでいる”誰かの顔。
繋がってゆく“一人ひとりの想い”が、100通りの、いや1000通りのドラマを描いてくれています。





佐々木モトアキ
執筆、動画編集、音楽・食・商品・街(地域)に関わるPRなどなど…様々なお仕事承ります。

例えば執筆・編集のお仕事として、、、
「ロック」「ジャズ」「ブルース」「R&B」「シャンソン」「カントリーミュージック」「フォークソング」「歌謡曲」「日本の古い歌」など、ほぼオールジャンルのページ企画・特集に対応いたします。
ライブイベントの紹介・宣伝文や、アーティストの紹介文なども対応できます。
音楽以外のライティングとして、WEBページの作成・リニューアル、各種パンフレット作成に伴う「店舗のご紹介」「メニューご紹介」「企業・会社のご紹介」「商品のご紹介」などなど様々なPRに関わるお仕事も承ります。


音楽、人、食、商品、街(地域)…私たちが関わるものすべてには“ものがたり”があります。
あらゆるものに存在する、ルーツや“人の想い”を伝えながら「誰が読んでもわかりすい読み物」をお作りいたします✒︎
お気軽にご依頼のご相談・ご連絡ください♪
sasa@barubora.jp
090-2669-2666

【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
http://www.tapthepop.net/author/sasaki

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