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スティーヴン・タイラーとジョー・ペリー〜運命的な出会い、探し求め合っていた“ミッシングリンク”

2019.06.08

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「1964年から1970年までに俺が在籍したバンドには、足りないものが一つあった。必須の材料が欠けていたんだ。ジョーがその“ミッシングリンク”だった。ミックとキース、ピート・タウンゼントとロジャー・ダルトリー、キンクスのデイヴィス兄弟みたいな関係ってやつだ。」(スティーヴン・タイラー)


1970年代の初頭、イギリスのバンドがロックシーンを席巻していた。
レッド・ツェッペリン、ザ・フー、ピンク・フロイド、ブラック・サバス、ディープ・パープル、そしてローリング・ストーンズ。
彼らはマーシャルのアンプをフルヴォリュームで鳴らしながら大西洋を渡り、アメリカの若者たちを熱狂させた。

「その頃、アメリカではいくつもバンドが現れては消えていった。ツェッペリンザウルスが踏みつけていく小さな茂みに群れて集まっていたんだ。俺もそんなチンケなバンドのメンバーだった。」(スティーヴン・タイラー)


ウッドストックフェスティバルが開催された夏、スティーヴン(当時21歳)はニューヨークの南東部にあるウエストチェスター郡タリータウンからニューハンプシャー州にあるサナピーに移り住んだばかりだった。

「すべてに行き詰まりを感じていたんだ。フォックス・チェイスというバンドを解散させたばかりだった。そのバンドはエアロスミスを始める前に俺が最後に在籍したグループで、ナイトクラブなんかで演奏活動しながら小銭を稼いでいた。」


ある日、スティーヴンはサナピー湖の側にあるザ・バーンというクラブでジョー・ペリーとトム・ハミルトンが組んでいたバンドを観ることとなる。
そのバンドは“ジャムバンド”と名乗っていた。
メンバー全員薄汚い身なりで、ボヘミアンスタイルを意識した60年代後期のイギリスのロックバンドみたいだったという。
ジョーはギタリストでありながら数曲リードヴォーカルを取っていた。
決して上手いとは言えないジョーの歌声に、スティーヴンは「酷い!ヘボだ!」と吐き捨ててクラブを出ようとした。
ところが、ジョーがギターソロを弾き始めた次の瞬間、スティーヴンの足が止まった。

「あいつはキース・リチャーズのような下に沈むような動きで、しかめっ面をしながらソロを弾きだしたんだ。チクショウ!あいつがギターを弾くのを聴いてナニが硬くなっちまったんだ!脳天がブッ飛んだよ!光が見えた!まさに運命の瞬間だった!」


アンプから次の曲のイントロが鳴り響いた。
それは、ヤードバーズがカヴァーしたことでも知られる名曲「Train Kept a Rollin’」だった。

「ジョーも俺と同じくヤードバーズのファンだった。のちにエアロスミスにとって“とどめの一曲”というべき曲が二人の運命を引き寄せたんだ。」



「スティーヴン・タラリコがあなたを気に入ってたみたいよ。あなたは本物だって言っていたわ。」


数日後、ジョー・ペリーの当時の恋人エリッサがジョーに告げた。
ジョーはその言葉に対して、素直に喜んだという。
当時ジョーはもちろんスティーヴンの存在を知っていた。

「彼が在籍してきたバンドはどれもプロって感じだったし、感情むき出しの彼のヴォーカルスタイルが大好きだった。何かが俺たちを結びつけようとしていたんだ。」


程なくして、ジョーのバンドのもとにレコーディングの依頼が舞い込んでくる。
スティーヴンの親しい友人でもあるドラマーが、オーディション用のデモテープを録音したいというのだ。
彼のドラムを軸に、ジョーのバンド+スティーヴンをヴォーカルに迎える形での編成だった。
彼はそのデモテープを持ってジェフ・ベックのオーディションを受けようとしていた。
レコーディングは、先日二人が出会ったクラブ(ザ・バーン)で行われた。
ジョーはその日のことを鮮明に憶えているという。

「録音を始める前にスティーヴンと話すチャンスがあったんだ。挨拶以上の会話を交わしたのはそれが初めてだった。軽くジョークを飛ばし合いながら、演奏する予定の曲について話し合った。スティーヴンは頭の回転が速く、愉快で、音楽にもやたら詳しくて、自分の成功に対して揺るぎない信念とやる気をみなぎらせていたよ。」


レコーディングはライブ録音のような形でステージ上で行われた。
曲はビートルズの「I’m Down」をハードロック調にアレンジしたもの。
そのバージョンは、のちにエアロスミスでも再現されることとなる。


その日のレコーディングはほぼ一発OKで終了。
そのままのステージセットで「もう一曲セッションしよう!」という雰囲気になったという。
ジョーは「Train Kept a Rollin’」のイントロを弾き始めた。
このセッションこそが、エアロスミス誕生の原点となる。
歌い終えたスティーヴンが、ジョーに向かって一言。

「そのうちまた一緒にやろうぜ!」


ジョーは親指を立てながら応えた。

「いつでもOKだ!」




<引用元・参考文献『スティーヴン・タイラー自伝』スティーヴン・タイラー(著)田中武人(翻訳)、岩木貴子(翻訳)、ラリー・フラムソン(翻訳)/ヤマハミュージックメディア>

<引用元・参考文献『ジョー・ペリー自伝~エアロスミスと俺の人生~』ジョー・ペリー (著), デヴィッド・リッツ (著), 細川真平 (監修), 森幸子 (翻訳), 前むつみ (翻訳), 渡部潮美 (翻訳), 久保田祐子 (翻訳), 木戸敦子 (翻訳)/ ヤマハミュージックメディア>

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