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マーヴィン・ゲイとタミー・テレル〜モータウンの看板歌手が出会った理想のデュエットパートナー

2019.07.13

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「彼女の歌唱スタイルは僕の歌い方に完璧に合っていた。僕たちが成し遂げたことは“マーヴィン=タミー”というキャラクターを作り出したことだった。演劇や小説から飛び出てきたような二人の恋人たち。歌っている間、僕たちは恋をしていた。そのヴァイブ(雰囲気)は素晴らしいものだったよ。曲が終わると頬にキスをして、さよならを言うんだ。」(マーヴィン・ゲイ)


マーヴィン・ゲイの代表曲といえば1971年に発表された「What’s Going On」だが、実はその数年前から彼は“デュエットの達人”とも言われ、モータウンの看板歌手として人気を博していた。
彼がデュオを組んだ女性は1964年のメリー・ウェルズ、次にキム・ウェストン、そして1967年からタミー・テレル、1973年のダイアナ・ロスという順番になる。
当時、タミーと出会った時のことをマーヴィンはこんな風に語っている。

「タミーは男に振り回されるような女じゃなかった。それが男を夢中にさせるんだ。彼女とは友達になれるとは思ったが、恋人にはなれないと思っていたよ。自立した女性は、僕に対してロマンティックな気持ちを持たないんだ。当時ジェームス・ブラウンとタミーは深い関係にあったが、僕との関係は完全に仕事面、クリエイティヴ面だけだった。」


十代でジェームス・ブラウンに見出された当時、彼女は“タミー・モンゴメリー”と名乗っていた。
ジェームス・ブラウンは彼女のデビュー盤「I Cried」をプロデュースし、自分のショーにもコーラスガールとして起用し売り出そうとしていた。
二十歳でモータウンと契約するが、この時にモンゴメリーという本名が覚えにくく長いことから、インパクトのある“テレル”に変えられる。
ほどなくして彼女は、同じモータウン所属の人気歌手マーヴィン・ゲイと組むチャンスに恵まれる。
彼女がマーヴィンと出会ったのは21歳の頃だった。
マーヴィンは27歳を迎える年だった。
最初に“声”を合わせたスタジオで、二人の間にマジックが生まれたという。

「僕の声と彼女の活き活きとしたソプラノというヴォーカル構成は絶妙な対比だった。僕らの声は、お互いの手と足を包み込むかのようだった。最初にフランク・シナトラとナンシー・シナトラのデュエット曲“Something Stupid(恋のひとこと)”を歌ったときなんか、僕らのハーモニーは完璧だったと思う。」



1967年4月、二人が出会って初めてのデュエットソング「Ain’t No Mountain High Enough」がリリースされる。
同曲はポップスチャート19位、R&Bチャート3位まで上昇する。
当初、二人はそれまでのデュオにならって別々の録音ブースでレコーディングをしようと試みていたが、この曲を歌う際に、思い切って同じ部屋で二人が並んで歌うスタイルに挑戦した。
そのテイクは素晴らしい輝きを放ち、臨場感溢れるデュエット曲として多くの人達に親しまれるものとなった。
タミー・テレルの声はダイナミックでメリハリがあり、女性ヴォーカル特有の艶っぽさも持ち合わせていて、それがマーヴィンの力強くセクシーな歌声と上手く重なり合い、まさに“ソウルミュージック史上最高峰”のデュエットとなっている。


私が必要なときは
どこにいても
どんなに遠くにいても大丈夫よ
私の名を呼んでね
そしたら、あなたの元に飛んでいくわ
心配する事はないのよ


もしも助けが必要なら
僕はできるだけ早く
君の元に飛んでいく
二人を引き離す高い山なんてない
どんなに深い谷や広い河でも
僕らは飛び越えて会うことができるんだ



それは、二人がデュオとしての活動を始めて間もない頃の出来事だった。
ヴァージニア州の大学で行われたイベントのステージに登場し、息の合ったパフォーマンスで客席を沸かせていたマーヴィンとテレル。
コンサートのハイライトで披露した新曲のソウルバラード「Your Precious Love」を歌い終わった瞬間、タミーは失神するようにマーヴィンの腕の中に倒れ込んでしまった。
当時、まだ21歳だった彼女は病院に担ぎ込まれた後、脳腫瘍と診断された。
その後、度重なる手術や苦しい闘病生活にも耐え、マーヴィンとの曲を収録するために、命がけでスタジオに通ったという。
そんな彼女の気丈な振る舞いを見て、マーヴィンは心を動かされていく。
マーヴィンと組んだことで大きな期待と注目を集めていたタミーだったが…1970年3月16日、脳梗塞を発症させ24歳でこの世を去る。
それは人気デュオとして絶頂期を迎えていたマーヴィン・ゲイ&タミー・テレル名義での3rdアルバムをレコーディングしている最中の出来事だった…


<引用元・参考文献『マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル』デイヴィッド・リッツ(著)吉岡正晴(翻訳)/スペースシャワーネットワーク>

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