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【野村太一(Yellow Studs)】〜ライブイベント「音楽愛」出演者スペシャルインタビュー④

2025.02.12

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TAP the POP初ライブイベント「音楽愛(ONGAKU LOVE)」
出演者スペシャルインタビュー④〜野村太一


ジャズやスウィングを基調に、ガレージロックやブルースなどルードな音楽をごちゃ混ぜにした独自のスタイルで音楽を奏でてきた、Yellow Studs(以下、イエロースタッズ)。その中心人物であり、しわがれ声の歌声が特徴的なボーカル、ピアノ担当の野村太一に、20年に渡って活動を続けるバンドについて、そして自身にとっての「音楽愛」を語ってもらった。(取材・文/宮内健)

他者に迎合する音楽を作れないまま
気づけば20年経っていた



──イエロースタッズは2003年に結成されたそうですが、どのような経緯で活動が始まったんですか?

野村 僕は群馬出身なんですが、音楽をやりたくて上京したというわけではないんです。なんとなく美容師になろうかなと思って上京してきたんですよ。だけど学校を中退してからはバイトに明け暮れて、居酒屋のバイト仲間と遊びでバンドを組んだのが、音楽活動を始めるきっかけでした。

──地元にいた頃は、バンド活動はしていなかった?

野村 まったく。そもそも人前に出るのが本当に苦手なんですよ。子供の頃にピアノはちょっと習っていたものの、ずっとやっていなかった。だけどバイト先の店に現在もイエロースタッズで一緒にやってるベースの植田大輔と、もう一人ギターを弾ける奴がいて。じゃあ俺もピアノだったらやれそうだから、とりあえずバンドでもやるかって始めたぐらいの感じだったから。

もしかしたら、何でもよかったのかもしれないですね。僕はデザインもするのでデザイナーとか、あるいは絵描きとか。カメラマンにもなりたかったし、バイクが好きだからバイク屋さんでもよかったし。いろいろやりたいことがある中で、一番好きなのが音楽でした。

──イエロースタッズは、ジャズやスウィングに、ガレージロックの疾走感をミクスチャーしたようなバンド・サウンドが魅力です。結成当初から、そういった音楽性は指向していたんですか。

野村 バンドを結成した当時は、たとえばEGO-WRAPPIN’や勝手にしやがれ、あとは行方知レズのような、ちょっと昭和なテイストを感じるスウィングに魅力を感じていましたね。それと同時に夜のストレンジャーズやバーレスクエンジン、THE NEATBEATS、デスマーチ艦隊あたりも大好きで。

やっぱりどこかアングラな香りのするものが好きだったから、自分たちで出来る表現を模索しながら、20年間葛藤してきたら今のようなスタイルになっていったというか。他者に迎合する音楽を作れないまま、20年も経ってしまったというか(笑)。

──なるほど(笑)。野村さんがそもそも音楽に触れるようになったきっかけは、どんなところからでしたか?

野村 俺が小学5年生の頃、当時の日本の流行りの音楽が好きで聴いていたんです。そうしたら、近所に住んでたおじちゃんが「そんなの聞いてるんだったら、これ聴いてみろ」って言って渡してくれたのが、ビートルズやディープ・パープル、レッド・ツェッぺリンだった。

それで初めて洋楽を聴いて「これはヤバい!」って衝撃を受けましたね。そこから洋楽も聴くようになったら、もともと父親も母親も洋楽どっぷりな人だったから、ジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリックスも教えてくれて、それでまた衝撃を受けて。中学生~高校生ぐらいは70年代のロックやフォークばっかり聴いてましたね。

──まわりには、そういう音楽を聴いてる同年代の子は少なかったんじゃないですか?

野村 ほとんどいなかったですね。みんなGLAYかHi-STANDARDを聴いてた世代だったから。文化祭もそのコピーバンドばかりで。それで、ちょうど高校の頃にOASISが出てきて。あのギターを一生懸命練習してたのはよく覚えてます。あとはBLANKEY JET CITYとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTですよね。これは否が応でも耳に入ってくるじゃないですか。上京してからは友達の家に行ったらだいたいかかってるし。

──冒頭で挙げていたバンドも、ブランキーやミッシェルあたりから数珠つなぎ的に耳にしていって、若い野村さんに衝撃を与えたのかもしれないですね。

野村 そうかもしれない。勝手にしやがれにしろデスマーチ艦隊にしろ、アングラが持つ力っていうのかな、なんだかわからないけど、当時の若い僕には突き刺さりましたね。同じ類の人間だからか、だいたい音楽を続けてやっている人って変なところで臆病なところがあったりするんですよね。反骨でいて繊細というか、弱さと強さが美しく絡み合ってる人たち。

───その源流に、たとえばトム・ウェイツあたりもいたりして。

そうそう。自分の歌詞づくりで一番大きな存在なのは、夜のストレンジャーズですね。夜ストの三浦(雅也)さんの、カッコよさ加減とダメさ加減もどちらもさらけ出してるあの歌詞の世界感。。10代の頃はダメな生活をしてたけど、夜ストの音楽に出会ったことで「これでいいじゃん」って気付かされて、僕の現実で起きた生々しい歌詞で歌うというスタイルが形成されていった。そんなバンドの一つではありますね。


魂が通った音楽がもっとこの国で拡がってほしいという願いを込めて、イベントに
参戦させていただきます。音楽に捧げた20余年の音に共鳴してもらえたら幸いです。
(野村太一)

言葉に言霊が宿るように
音楽にも魂がのっている



──今回のイベントは「音楽愛」をテーマにしていますが、野村さん自身が音楽によって何かを救われたということはありますか?

野村 実は4年前に体を壊して、いったん音楽を辞めていた時期があったんです。結成時からずっとDIY(Do It Yourself)でやってきて。一時期はメンバーが5人いたけど、みんなを食わせようと思って法人を立てて回してたんです。

少ないですけど毎月一定の金額を渡して、メンバーみんな音楽に専念できるようにしていたつもりだったけど、みんな苦しかったですね。とくに僕は無理がたたって心身ともに壊れてしまいまして。

体を壊す前、かなり長い間ですけど、音楽を聴けない時期があった。持ってたCDも全部捨てちゃったし。だけど、体を壊して音楽を辞めてから、また音楽を聴くようになったんです。

──それは不思議な感覚ですね。

野村 僕の中で、音楽ってその時々のセーブポイントみたいなものだなって思ってるんです。あるいは、人生における栞みたいなもの。あの曲を聴けばこの人を思い出す、この曲を聴けばあの時を思い出す。その時の匂いもしてきたりして。そして、その時々の自分の心境や、当時の背景だったり、人付き合いのことが思い浮かぶ。

──たとえば野村さんにとって、そんな思いになる曲はなんですか?

野村 そうだなあ、Coccoさんの「Raining」とかビョークの「Hyper-ballad」とか、あとはトム・ウェイツの「Tom Traubert’s Blues」に引用されている「Waltzing Matilda」を聴くと、その時その時の記憶が蘇ってくるようで。なんていうか、音楽に救われるというよりは、やる気スイッチに似てるんですかね。

──やる気スイッチ。なんとなく分かるような気がします。

野村 僕は、曲を作る時はすべて実体験を元にしているんです。誰かに向けて手紙を書く感じ。それは特定の人を思い浮かべていることもあるし、あるいは自分自身に向けて書くこともある。だから、不特定多数の誰かを救おうと思って書いたことなんて、一度もない。

だけど、たとえば自分たちの音楽を聴いてくれる人たちが大地震や災害などに被災して、その後にライブを観にきてくれた時に、「ここまで生きてこれたのは、あなたたちのおかげです」とか言ってくれたり、俺と会った途端に「やっとイエロースタッズに会えた」といきなり泣き出す人がいたり。

長くバンドをやっていると、そういう言葉をもらうことばたびたびある。巡り巡って誰かの役に立つんだったら、自分たちの音楽も捨てたもんじゃないなって、そう思います。

──今回のイベントに参加するにあたって、野村さんの今の心境を最後に伺えますか?

野村 「音楽愛」のクラウドファンディングページに、イベントを企画する中野充浩さんが書いていた文章が、なんだか印象に残っていて。記事のライティングにもAIが浸透してきて、絵や写真はもちろん、音楽にも乗り込んできてる。だけど、ライティングをAIに飲み込まれるわけにはいかないって一文があった。それに感化されて、試しにAIが音楽を作ってくれるアプリで曲を作ってみたんです。

──最近、テーマやキーワードを入れると、自動で曲を生成するアプリがあるそうですね。

野村 それで作ってみたら、一応それなりの曲がちゃんとできたんですね。だけど、聴いてみるとやっぱりAIが作ったものだなって感じてしまう。その違いってなんなのかなというと、魂がのってるかのってないか(宿っているか、宿っていないか)だと思ってるんです。

言葉も文字もそうですけど、その人なりの人間性が表れるし、人から発せられた言葉には言霊が宿るわけで。人から発した音楽にもやっぱり魂がのっている。

──たしかにそうですね。

野村 よく共鳴とかバイブレーションっていうけど、なんかアホらしい言葉だと思ってたんだけど、やっぱりそれはあるんですよね。たとえば音楽を奏でる側の振動、文章を書く人の振動。それが、受け取った人の心にハウリングする。同調した時、音って大きくなるじゃないですか。

──共鳴することで、自分自身の記憶や感情と共鳴して、たとえば涙してしまったり、やる気スイッチが押される感じがしたり。

野村 そうです。だから自分の中では、共鳴という言葉が最近のコンセプトになっている。今回のイベントでもライブをやらせてもらいますが、イエロースタッズの音楽が魂がのったものかどうか、ぜひ会場に来て判断してほしいですね。

野村太一(写真右)。イエスタのステージはイベント最長の約30分を予定。熱いステージが今から楽しみ。左胸に染み込むバラードも聴けるかも。


    イエロースタッズ
    2003年結成。東京を中心に全国的に活動。ガレージ、ロック、ジャズ、様々な要素を楽曲に取り入れ、Vo. 野村太一の独特のしゃがれ声で独自の世界観を繰り広げる。TVCMなどへの楽曲提供、演奏、歌唱、ナレーションなど活躍は多岐に渡る。通称はイエスタ。

    イエロースタッズ公式サイト

★2つの大切なお知らせ★


【一夜限りのスペシャルライブが実現! 人気のチケットはお早めに!!】

TAP the POPが初ライブイベント『音楽愛』(ONGAKU LOVE)を開催します。
豪華6組の弾き語り&バンドが出演。さらにゲストを迎えたトークショー、
次世代の音楽シーンを担う新しい才能も紹介します。
二度とないアーティストの組み合わせは、誰かに語れる貴重な体験になります。

「もう何年も何十年もライブハウスに行ってない」
「生で音楽を楽しむことの興奮を取り戻したい」
……そんな人も大歓迎。“音楽愛”の復活を共に祝福しましょう!

TAP the POP 音楽愛 (ONGAKU LOVE)
2025.2.28 FRI @横浜 ReNY β
OPEN18:00/START18:30


▼出演
冷牟田竜之(ex東京スカパラダイスオーケストラ/Taboo)
山口洋 (HEATWAVE)
ショコラ&アキト(片寄明人/ GREAT3)
イエロースタッズ
THESE THREE WORDS(冷牟田竜之)
金子駿平
佐々木モトアキ
吉澤成友(YOUR SONG IS GOOD)


★チケット入手方法

※「通常チケット「スペシャルチケット」の2種類があります。

①通常チケット (人気上昇中につきお早めに!)
受付 : e+(イープラス)
受付期間 : なくなり次第終了
料金 : ¥6,600

▼通常チケットの購入はこちらから
https://eplus.jp/sf/detail/4257420001-P0030001P021001?P1=1221

②スペシャルチケット(リハ見学・記念撮影・サイン入りTシャツ・書籍・特設ページ名前入れなど数量限定)
受付 : CAMPFIRE(クラウドファンディング)
受付期間 : 2025年2月20日(木)18時まで
料金 : ¥8,000~¥50,000

▼スペシャルチケットの詳細・お申し込みはこちらから
https://camp-fire.jp/projects/view/811070

▼スペシャルライブイベント『音楽愛』について
https://www.tapthepop.net/extra/127354


【ご支援ご協力のお願い】

「音楽が秘めた力を、もっと多くの人々に広めたい」
「音楽が持つ繋がりや物語を、次の世代に伝えたい」
音楽コラムサイト『TAP the POP』は、今後の活動に向けてクラウドファンディングを実施中です。



豪華6組の弾き語り&バンドが出演する一夜限りライブの「スペシャルチケット」をはじめ、参加できない人のために、“ここでしか手に入らない”グッズや書籍のリターンをご用意しました。

この機会にぜひ❝音楽愛❞を一緒に育ててくれませんか。応援よろしくお願いいたします(下記の「音楽愛」ページで経緯や想いを綴りました)。

~リターンメニューのご紹介~
♪初開催ライブイベントのスペシャルチケット(数量限定/2月20日締切)
♪Tシャツなど7種の限定デザイン&ロゴ入りグッズ
♪約4,000本の原稿から厳選するベスト盤的書籍
♪ご支援いただいた全員の方を「音楽愛メンバーの証」として特設ページで名前入れ

▼ TAP the POPクラファン「音楽愛」ページ(CAMPFIRE内)
https://camp-fire.jp/projects/view/811070

●CAMPFIREでアカウントを作成してから(簡単にできます)、TAP the POPのクラファンページに「お気に入り登録」をよろしくお願いします。最新情報がいち早く届くのでオススメです。
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