1971年。1960年代の革命と変革に疲れ切ったアメリカにそよ風が吹くように、優しい歌声が木霊した。アン・マレーの大ヒット曲としても知られる、ロギンス&メッシーナの「ダニーの歌」である。政治に疲れた若者は、恋愛に、新しい家庭生活に癒しを求めていた。
♪ お金はないけど
君を心から愛しているんだよ
すべては愛の鎖で
つながれているのさ
朝目を覚まし、君がいると
喜びの涙が浮かぶ
そして君は
すべてはうまくいくと
言ってくれるのさ ♪
ロギンス&メッシーナのファースト・アルバム『シッティン・イン』には、「プー横丁の家」という名曲も収められているが、こちらもアメリカの古き良き時代への回帰を思わせる歌だ。
アン・マレーやヴィッキー・カーに歌われたことからもわかるように、ダニーという青年が主人公のこの歌は、女性たちに支持された。女性らしい、優しさの時代の幕開けである。
♪ 僕を見るとみんな微笑んで
ラッキーなやつだと言うのさ
僕らふたりはまだ始まったばかり
男の子が欲しいと思ってるのさ
彼はきっとふたりに似て
鳩のように自由で
愛を信じてる
きっと太陽も明るく
照らしてくれるはずさ ♪
タイトルのダニーという名前は、歌詞の中に一切登場しない。ダニーというのは、ケニー・ロギンスの兄、ダン・ロギンスの愛称だ。
ケニーがまだ18歳の頃、兄ダンと奥さんの間に初めての子供が生まれた。ケニー同様、音楽が好きで、大の仲良しだった兄に贈った歌が「ダニーの歌」だったのである。
ケニー・ロギンスのコンサートでは、この歌がコーラス部分に差し掛かると、ケニーは歌うのを止め、聴衆の合唱に微笑みながら耳を傾けるのだ。
♪ お金はないけど
君を心から愛しているんだよ
すべては愛の鎖で
つながれているのさ
朝目を覚まし、君がいると
喜びの涙が浮かぶ
そして君は
すべてはうまくいくと
言ってくれるのさ ♪
そしてこの歌は、結婚式の定番ソングとなっていく。
ジューン・ブライド。6月がジューンというのは、ローマ神話の女神ユノ(ジュノー)からきている。ユピテル(ジュピター)の妻ユノー(ジュノー)が結婚生活の守護神だということから、6月に結婚すると女神に祝福されると信じられるようになった、という話がある。
ちなみに、5月はメイ。こちらは豊穣を司る女神マイアからきているのだが、メイには「もしかしたら」という意味があるのは意味深だ。春に出会った男女が、「もしかしたら」という運命の岐路、5月を乗り越えて6月に結ばれるわけだ。
6月は梅雨で、ホテルの回転が悪いから、ビジネス上の理由でジューン・ブライドを流行らせた、なんていうゲスな説は少しの間だけ忘れていよう。
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