前回のコラムで紹介した「ウィーン」は、ビリー・ジョエルの代表作となったアルバム『ストレンジャー』のB面1曲目に収録された作品である。
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スピードを落とすんだ
クレイジー・チャイルド
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自らに言い聞かせるようにして歌われるその歌は、ビリーが長く音信不通だった父とウィーンで再会した時の出来事をきっかけに書かれたものだった。
そしてアルバム『ストレンジャー』のA面1曲目に収録されている「ムーヴィン・アウト」にも、同じ視線が注がれている。
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雑貨屋で働くアンソニーは
将来のために小銭を貯めている
母親のレオーネがドアに
残したメモ書きは
「ソニー、国に帰りましょう」
必死に働いても
心臓発作を起こすたけ
わかったほうがいい
ハッケンサックの家が必要なのは誰?
稼いだ金で手にするのはそれだけ?
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ニュージャージー州の北東部に位置するハッケンサックは、バーゲン郡の郡庁所在地だ。ビリーがこの歌を書いた1970年代後半、この街は、ニューヨークのベッドタウンとして、特に移民たちの脚光を浴びた。
マンハッタンの中心部から20キロ弱、ワシントン・ハイツからジョージ・ワシントン橋を渡ってニュージャージー州フォートリーに入れば、そこからは10キロとちょっとの距離にあった。
そこは「移民たちにとっての約束の地」だった。バーゲン郡に住む者の4割弱が外国生まれ、というのが2013年の統計である。ちなみに、現在では、イタリア系、アイルランド系の住民が減り、アジア系の住民が増えている。
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時間の無駄ってことだな
もし、そういうことなら
ママ、成り上がるのはよして
ここを出てくさ
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「僕にもそんな友人がたくさんいたんだよ」と、ビリーは2014年、ハワード・スターンのトーク・ショーで語っている。
「必死になって家族のために働いてきた人たちをね。そして彼らが満たされることはないんだ。
誰もがやりたいことを持っているはずだし、発揮すべき才能を持っている。でも、みんな人生を無駄に過ごしてしまう。たとえば、キャディラックを手に入れることで、人生をよし、としてしまうんだ」
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街をパトロールするオリーリー巡査
夜はバーテンダーになる
サリバン通り
メディカル・センターの向かいにある
ミスター・カチャトーレの店だ
シボレーをキャディラックに
乗り換えようってわけさ
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ニューヨークの魅力が詰まっている作品だと思われている『ストレンジャー』だが、実は、アメリカ型の成功物語から距離を置こうとするビリーとその仲間たちの物語だったのである。
ところで、この曲は「ウィーン」同様、スローな曲調だった。だが、ビリーがスタジオでバンドのメンバーに聞かせると、こんな反応が返ってきた。
「ニール・セダカの『雨に微笑を』みたいだな」
かくして、テンポアップされることとなった「ムーヴィン・アウト」からは、自動車の音も聞こえてくる。この音を録ったのは、ベーシストのダグ・ステッグマイヤー。彼の愛車、60年代のコルヴェットの音である。
「ムーヴィン・アウト」はビリーの代表曲のひとつとなり、2002年からブロードウェイで上演された芝居のタイトルともなったことは、記憶に新しい。
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(このコラムは2016年3月17日に公開されました)
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