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国分寺三中の先輩・忌野清志郎と後輩・ハナレグミのデュエット~「サヨナラCOLOR」

めったにはないことだが、レコーディング中にOKテイクが録れた瞬間、いずれはスタンダード・ソングになると予感させる歌がある。

2001年に出たスーパー・バター・ドッグのシングル曲、「サヨナラCOLOR」はぼくにとってそんな歌だった。

バンドのヴォーカル担当だった永積タカシが自分自身の体験から生まれてきた夢と、現実のはざまにおける切実な”思い”を素直につづった歌詞が秀逸だ。

この歌を最初に広める役割を果たしたのは小泉今日子、アイドルから女優への道に活動をシフトしつつあったKYON2だ。2003年の春に出した25枚目のアルバム『厚木I.C』のなかで、誰よりも早くカヴァーしたのである。


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初めて聴いたときからすっかり歌に惚れ込んだという竹中直人は、「この歌をテーマに映画を撮りたい」と思うようになっていく。それから4年後、原田知世と自らの主演で『サヨナラCOLOR』を監督して、その思いを実現させることになった。

そのとき、竹中はもうひとつの夢を抱いていた。歌に触発されて生まれた映画のエンディング・テーマを、忌野清志郎と永積タカシのデュエットでいきたいという夢だった。

RCサクセションのシングルとして1976年に発表された「スローバラード」は、忌野清志郎による”夢”と”予感”についての歌だった。

発売当時はまったくヒットしなかった「スローバラード」だったが、口コミで少しずつ発見されて、時の経過とともに聴き手に共有されて名曲と呼ばれるようになった。

忌野清志郎は「竹中、映画を撮っているそうじゃないか、出番はないか」と、映画を撮るたびに必ず駆けつけてくれるほど親しい友人だった。そして永積タカシとは偶然にも、国分寺市立第三中学校の先輩と後輩の関係にあった。

竹中の”思い”と”夢”は、こうして叶うことになるのだった。

映画には中島みゆきを筆頭に、忌野清志郎、永積タカシ、高野寛、三宅伸治、斉藤和義、ビッケ、原田郁子(クラムボン)、スチャダラパーなど、自身の交友関係から多くのミュージシャンが友情出演してくれた。

映画が公開された後、2006年に大阪城ホールで行われた忌野清志郎のイベント『新・ナニワサリバンショー』で、二人はライブでも共演している。

その夜、清志郎に「国分寺第三中学校の後輩!」と呼ばれて登場したハナレグミこと永積タカシは、二人でギターを持って楽しそうにRCサクセションの「君が僕を知ってる」をデュエットし、開口一番、「先輩、気持ちいいです!」と場内をわかせた。

それに続いて「サヨナラCOLOR」が始まると、ざわついていた会場全体は一瞬にして静まり返った。忌野清志郎の哀切な声がハーモニーで加わり、名曲は広くスタンダードとして知られていくことになった。






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