TAP the POP

ロックの殿堂入り1993〜ドアーズ/スライ&ザ・ファミリー・ストーンほか

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「TAP the COLOR」連載第159回

1986年から始まった「ロックの殿堂」(Rock and Roll Hall of Fame) は、デビュー25年以上のミュージシャンやバンドを対象としているが、1993年のセレモニーではルース・ブラウン、フランキー・ライモン&ザ・ティーンエイジャーズ、エタ・ジェイムズ、クリーム、ヴァン・モリソン、ドアーズ、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル、スライ&ザ・ファミリー・ストーンらが殿堂入りした。

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ドアーズ『Greatest Hits』(1980)
ドアーズのベスト盤は数多くリリースされているが、最もよく売れたのは1985年の『The Best of The Doors』で全米だけで1000万枚以上。本作は一つ手前のベスト盤ということになるが、それでもチャートの17位まで上昇。300万以上売れた。時は1980年。ジム・モリソンというカリスマの死によってとっくに解散した60年代の伝説的バンドが、何もかもポップになろうとしていた10年間のスタートに放った衝撃は大きすぎる。繰り返し聴きたくなる選曲だ。

スライ&ザ・ファミリー・ストーン『There’s a Riot Goin’ On』(1971)
70年代のブラック・ミュージックはスライのファンクから始まった。そしてファンクはスライが出発点だ。白人黒人男女混成グループである点、サンフランシスコ出身である点など、スライ独特な個性を総括したのは70年発表の『Greatest Hits』だったが、続く本作では下降感覚や苦悩風景が漂う冷たいファンクを創造。聴くこと自体が一つの体験となる。


クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル『Cosmo’s Factory』(1970)
シンプルでストレートな土臭いロックンロール。ブルーズ、R&B、カントリー、ロカビリーといったルーツ・ミュージックが骨の髄まで染み込んだサウンド。CCRのブレない美学は、60年代後半〜70年代前半に大量のシングル・ヒットとアルバムとなって刻まれている。オールド・ロックと揶揄されようが、ジョン・フォガティが生んだ名曲の数々は今聴いてもたまらなくカッコいいことは事実だ。


ヴァン・モリソン『Inarticulate Speech of the Heart』(1983)
メロウで癒されるようサウンド世界。1983年という時代を考えると、華やかで騒々しいMTVポップとはまったく逆を行くアプローチ。だがこれがどこまでも心地いいのだ。11曲中4曲がインスト。「僕は内なる平和をもたらす音楽形式を作ろうと努めていたが、インスト音楽はその要求を満たすものを供給してくれる。何の付属物もなく、音楽があり、それに合わせて瞑想できる。騒々しい曲すべてへの解毒剤なんだ」。(五十嵐正監修のヴァン・モリソン本より)


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