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忌野清志郎が歌ってスタンダードになった日本語詞の「デイドリーム・ビリーバー」

1964年の初めからビートルズが全米を制覇して空前のブームを巻き起こしたことに対抗して、アメリカのエンターテインメント業界が用意したのがモンキーズだった。

ビートルズのようなバンド・スタイルのロック・グループが歌うポップスをテレビ番組と融合させて、新しいスターを作ろうとオーディションで選出された4人からなるモンキーズは、1966年8月に「恋の終列車 」をリリースしてデビューした。

9月から始まった30分番組『ザ・モンキーズ・ショー』が全米ネットワークのNBC系列でオンエアされたこともあって、「恋の終列車 」は幸先良く全米チャートの1位になった。

そこからは思惑通りにシングルが連続して大ヒットし、「アイム・ア・ビリーヴァー(I’m A Believer)」と「デイドリーム(Daydream Believer)」の2曲が全米ナンバーワンに輝いた。

だが番組が長引くに連れて人気が下降していったモンキーズは、70年代を待たずに音楽シーンから姿を消してしまうことになる。

プロのヒットメイカーたちによって作られていた楽曲は、実に良質のポップスではあっても、ビートルズのように独創的なオリジナリティはなかった。


そんなモンキーズの懐かしい楽曲が1989年に日本でよみがえったのは、忌野清志郎が三宅伸治らとともに結成した覆面バンドのタイマーズが、「デイドリーム」を日本語でカヴァーしてからのことである。

原詩とはまったく異なる日本語の「デイ・ドリーム・ビリーバー」からは、なんとも言えない慈しみの気持ちや、深い情愛を感じるという声も多い。


父と母がともに実の両親ではないと知らされたのは、清志郎を育ててくれた母が他界した1986年のことだったという。そして父からも、「俺は本当の父親ではない」と告げられた。

その父も2年後に突然、亡くなってしまった。親戚のおばさんがその後で持ってきてくれたのは、育ての母の妹にあたる富貴子さん、すなわち実母が残した遺品であった。

そこには写真や書き残した文章、短歌などがアルバムにていねいに保存されていた。そればかりか彼女が吹き込んだ、ソノシートのレコードまであったのだ。

2014年に入ってから公表された当時のノート『ネズミに捧ぐ詩』には、生みの母への思いや遺品を目にした時の抑えきれない喜びが、「HAPPY」と題して記されている。

「わーい、ぼくのお母さんて こんなに可愛い顔してたんだぜ こんなに可愛い顔して 歩いたり、笑ったり、手紙を書いたり 歌ったり 泣いたりしてたんだね」


実母の富貴子さんは当時の人がなかなか着こなせない派手な赤や緑の洋服を、平気で着てしまえるアカ抜けたセンスを持っていたという。

いつもおもしろいことを言ってまわりのみんなを笑わせて、歌が好きで上手だったという母のエピソードを知って、本当にうれしかったに違いない。

日本語で「デイドリーム・ビリーバー」がカヴァーされてからすでに30年以上の月日が経っているのに、それを歌う清志郎の声がいつまでもエバーグリーンに感じられるのは、日本語詞を書いたときの「HAPPY」な気持ちが伝わってくるからだろう。

「37年近く生きてきて とにかく初めての気持ちなんだ 
とっても幸福な気持ち だけど、涙がどんどん出てきちゃうのさ 
気がつくと、ぼくの目に涙があふれてる 涙が流れ落ちるんだ 
その可愛い顔が見えなくなっちゃうんだ」


(注)本コラムは2014年6月27日 に初公開されました。

忌野清志郎『ネズミに捧ぐ詩』
(2014/KADOKAWA)

THE TIMERS『ザ・タイマーズ』
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