TAP the POP

少年時代のジェフ・ベックの心に焼き付いたレス・ポールのサウンド

2010年1月31日にロサンゼルスで開催された第52回グラミー賞。“最優秀インストゥルメンタル・パフォーマンス”に選ばれたのは、ジェフ・ベックの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」だった。

日本では「三大ギタリスト」の一人としても知られるジェフ・ベック。1986年に「エスケープ」で受賞して以来、これが通算5回目の受賞となった。


その授賞式でジェフは、アイルランドの女性シンガー、イメルダ・メイをボーカルに迎え、前年の8月に亡くなったレス・ポールに追悼の意を込めて、1951年のヒット曲「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」を披露している。

レス・ポールといえばその名を冠したギブソン社のギターが有名だが、レス・ポール自身もまた、ギタリストとして多くのアーティストから敬意を払われている。

そしてジェフにとっては、エレキギターの魅力を教えてくれた最初の存在なのだという。

1944年生まれのジェフ・ベックがはじめて「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」を聴いたのは6歳の頃だ。当時ラジオ番組のテーマ曲として使われていたのを何度も耳にし、その度にジェフは母親に「ママ、またあの曲だよ」と興奮気味に話しかけた。

しかし、当時は新鮮だったエレクトリック・ギターの音色に対し、母親は「こんなのはトリックよ」と取るに足らない様子だったという。

「全然気にしなかったよ。僕にとって最高な音なのは間違いなかったからね」(2011年 ギター・ワールド誌のインタビューより)



レス・ポールがギターを弾き、メリー・フォードが歌って大ヒットした「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」は、元々は1940年にミュージカルのために書かれたラブソングだ。

レス・ポールは、自分とメリーがこの曲をやればヒットするはずだと自信を持っていたが、レコード会社からは「くだらない歌詞」だとしてリリースすることを猛反対されたという。(詳しくはこちらのコラムへ

だがメロディやコード進行が印象的なこの曲は、レス・ポールのギターの魅力を引き出すのに打って付けのナンバーだった。現にこの曲は大ヒットし、6歳の少年だったジェフ・ベックを夢中にさせたのである。

「それまであんな音を出す楽器は聞いたことがなかったよ」


ジェフが実際にギターを弾くようになるのは10代になってからだが、エレキギターへの憧れはこのときに芽生えたのである。

2010年の6月9日。もしレス・ポールが生きていれば95歳の誕生日となったこの日、彼が毎週出演していたニューヨークのイリジウム・ジャズ・クラブでは、ジェフ・ベックらによるレス・ポールのトリビュート・コンサートが催された。

グラミー賞に引き続きイメルダ・メイをボーカルに迎えた演奏した「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」は、幼い頃に焼き付けられた鮮烈な印象さながらに眩しい光を放っている。

*このコラムは2018年11月に公開されました。



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