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ティム・バックリィを偲んで〜“フォーク界のカルト的ヒーロー”と呼ばれた男の足跡と功績

1975年6月29日、米国カリフォルニア州サンタモニカで、“フォーク界のカルト的ヒーロー”と呼ばれた男が28歳という若さでこの世を去った。死因はアルコール及び薬物の過剰摂取だったと言われている。

彼の名はティム・バックリィ。フォーク、ロック、ジャズ、そしてサイケデリックまでを取り入れた幅広いサウンドで、後のミュージックシーンにも大きな影響を与えた存在である。

その死から17年後…1992年、トリビュートコンサートに、最初の妻との間の息子であるジェフ・バックリー(当時25歳)が出演した。

ジェフはその公演での演奏をきっかけにレコードデビューを果たす。しかし…オリジナルアルバムを1枚リリースしただけで、水難事故により急死してしまう。ジェフもまた父親と同じく30歳という若さでの死だった。

夭折したジムへの注目と共に、父ティムへの再評価の機運が高まっていく。本人達がこの世にいないにも関わらず、バックリー親子が遺した足跡(作品)は今も多くの音楽ファンを魅了し続けているのだ。

UKインディーズシーンの“良心”とも言うべきレーベル、4ADのディス・モータル・コイルが1983年にティムの楽曲「Song To The Siren」をカヴァーし、スマッシュヒットを記録。

後(1997年)に、このカヴァーがデヴィッド・リンチ監督の映画『Lost Highway』で使われたことで、ティムの名が次世代にも広く知られることとなる。2006年、オーストラリア映画『Candy』では、同曲のオリジナルヴァージョンが挿入歌として使用され話題となる。



時代がサイケデリック最盛期を迎えていた1967年、ビートルズが『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』を発表。同年、ティムは2ndアルバム『Goodbye And Hello』を完成させる。

収録された全10曲には、孤独で、寂しくて…どこか人を信じる事が出来ないティムのパーソナリティが散りばめられている。反戦への思いを込めた爆発音から始まる本作は、「Summer in the City」や「Do You Believe in Magic(魔法を信じるかい?)」の大ヒットで知られるラヴィン・スプーンフルのジェリー・イースターがプロデュースを担当。

多用されたストリングスやティム自身による12弦ギターの響きは、アメリカというよりも英国的な雰囲気を醸し出していた。ティムのソングライティングのパートナーだった詩人ラリー・ベケットによる時代の変革を掲げる歌詞は、当時のアメリカの若者たちの気持ちを代弁していたという。

本作の最後を飾る「Morning Glory」では、抑制の効いた演奏と共に聖歌隊のようなコーラスがティムの歌声を包み込み、最高傑作と言われるアルバムのラストに相応しい世界観を堪能することができる。


同作はビルボード誌が発表したチャートでも高く評価され、表題曲「Goodbye And Hello」は、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズのデビュー作『Child Is Father To The Man(子供は人類の父である)』(1968年)や、フェアポート・コンヴェンション、イアン・マシューズによってカヴァーされた。

カヴァーといえば、1973年に発表したアルバム『Sefronia』に収録した、トム・ウェイツの楽曲「Martha」のカヴァーは、オリジナルと甲乙つけがたいほど秀逸だ。

当時まだデビューしたばかりだったトムが、このカヴァーに対してどんな感想を持っていたのか?(あの皮肉まじりの口調で)是非聞いてみたいものだ。




Goodbye & Hello

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執筆者
【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html