TAP the POP

BLUESの旅路③〜スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブルほか

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「TAP the COLOR」連載第173回

ブルース(正確にはブルーズ)を聴いたり目の前の演奏に接したりすることは、言うまでもなく一つの体験であると同時に、それは時と場所を巡る旅でもある。スタート地点はミシシッピ川、綿花畑、ハイウェイ61……といったところだろうか。長い旅路では様々な人生、苦悩、歓喜といった風景を見ることになる。旅人たちはそれを決して忘れることはできない。

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ジョン・メイオール&ザ・ブルース・ブレイカーズ『Blues Breakers with Eric Clapton』(1966)
まだアートスクールの学生だった頃、エリック・クラプトンは友人からロバート・ジョンソンのアルバムを渡された。ジャケットの解説には「恥ずかしがり屋のジョンソンはホテルの一室で録音のためのオーディションをしていた時、部屋の隅に向かって演奏した」と書いてあった。控えめな性格だったクラプトンの気持ちは晴れ渡り、すぐに共感したという。売れ線に走ったヤードバーズに愛想を尽かしたクラプトンは、次なる試練場としてジョン・メイオールのもとに向かったのだ。


ポール・バターフィールド・ブルース・バンド『East-West』(1966)
ロンドンのブルーズ熱に対抗できた最初のアメリカン・バンドが彼ら。白人と黒人混成というのも、本場シカゴ出身ならでは。本作は代表作となったセカンド。マイク・ブルームフィールドの表情豊かで正確なギター、ポール・バターフィールドのブルーズへの愛情が込められたハーモニカなど、音楽的技能とセンスは同じホワイト・ブルーズ・ロッカーの中でも群を抜いていた。

オールマン・ブラザーズ・バンド『Idlewild South』(1970)
デュアンとグレッグ兄弟によって1969年に結成されたオールマンズ。ツイン・ギターによるブルーズ・サウンドは、後に続くサザン・ロックの高度な指標となった。デビューから2年で500回近くものギグを行ったという彼ら。本作はそんな渦中で録音されたセカンド。

スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブル『In Step』(1989)
ブルーズ・ロックというより、ロック・ブルーズ。アメリカのブルーズ・サーキットで磨き上げられたスティーヴィーと仲間たち。レコードデビュー前の1982年夏、モントルー・ジャズ・フェスティバルでまさかのブーイングの嵐を浴びる。観客はブルーズに身を捧げたとしか言い様のない凄まじい画期的なプレイを受け入れられなかったのだ。怒りと悲しみの狭間でSRVはステージを後にする。しかし、3年後。もう彼らを歓迎しない者はいなかった。本作はドラッグとアルコール中毒を克服後にリリースした4枚目の復活作。ダブル・トラブル名義としては最後の作品(遺作)となってしまった。SRVは今も伝説であり続ける。

(『THE BLUES』シリーズはこちらでお読みください)
フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』(Feel Like Going Home/マーティン・スコセッシ監督)
ソウル・オブ・マン』(The Soul Of A Man/ヴィム・ヴェンダーズ監督)
『ロード・トゥ・メンフィス』(The Road To Memphis/リチャード・ピアース監督)
『デビルズ・ファイヤー』(Warming By The Devil’s Fire/チャールズ・バーネット監督)
『ゴッドファーザー&サン』(The Godfathers And Sons/マーク・レヴィン監督)
『レッド、ホワイト&ブルース』(Red, White & Blues/マイク・フィギス監督)
『ピアノ・ブルース』(Piano Blues/クリント・イーストウッド監督)

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