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アメリカ音楽を変える! スーパーバンドがいよいよ来日

2016.07.22

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アメリカン・ルーツ・ミュージックの影響を受けて生まれた”アメリカーナ”。
今では次世代を担うアーティストによる現代的なアレンジも加わり”ニュー・アメリカーナ”という言い方までされるほど、細かくその動向に注目が集まっている。今回はその中でも”史上最高”と称されるバンド〈パンチ・ブラザーズ〉の中心人物、クリス・シーリーにインタビューを敢行した。


interview & text = Tadd Igarashi
PR coordinator / Artist = Kei Kato
Photo by Benko Photographics

バンジョーやフィドルを擁し、見た目はブルーグラス・バンドだが、その多様な音楽性ゆえ、風変わりでプログレッシヴなストリング・クインテットとでも呼ぶべきだろう。当のパンチ・ブラザーズのリーダー、クリス・シーリーも同意する。

まさにその通りさ。確かに僕らはブルーグラス・バンドみたいに見える。でも、そのサウンドは説明するのがすごくむずかしいものなんだよ(笑)


クリスは5歳でマンドリンを弾き始め、8歳でニッケル・クリークを結成し、12歳でソロ・アルバムを録音した早熟の天才だ。00年のニッケル・クリークのアルバムがアコースティック・ミュージックで異例の百万枚を売り上げた成功は、アメリカーナの盛り上がりのきっかけともなった。ジャンルをまたぐ活動はヨーヨー・マとのコラボやバッハ作品集の制作など、クラシックの分野にも及び、12年にはマッカーサー財団からマッカーサー・フェロー(通称「天才賞」)と副賞50万ドルを授与された。

そんな大忙しのクリスだが、もちろん彼の活動の主体は、06年に結成したパンチ・ブラザーズだ。

まだニッケル・クリークをやっていた頃だったけど、ブルーグラスのアンサンブルにそれまで聞いたこともないような演奏をさせる作品を構想し、ブルーグラス・バンド編成の弦楽5重奏の40分の作品を書いた。ベラ・フレックやエドガー・マイヤーとやろうかとも考えたんだけど、作曲と指揮をする男が一番年下だと、バンド内の力関係が妙な感じになって、やりにくいかもと思った。そこで同年代の仲間を探したんだ


集まったメンバーは、ノーム・ピクルニー(バンジョー)、ゲイブ・ウィッチャー(フィドル)、クリス・エルドリッジ(ギター)、08年参加のポール・ コート(ベース)という凄腕揃いだ。バンジョー不在のニッケル・クリークと異なり、編成自体は標準的ブルーグラス・バンドと同じ。

伝統的なブルーグラス・バンドのテクスチャーと色彩を求めた。そして、そこからバンジョー入りのブルーグラス・バンドがそれまで行ったことのないところを目指し、何をできるかを見てみたかった。パンチ・ブラザーズは音楽の可能性を探究し、実験するために結成されたんだよ


そのバンド名はマーク・トウェインの短編小説の題名に由来するが、彼らの音楽はジャンルを隔てる壁を壊す強烈なパンチでもある。

ジャンルという考えを取り去りたいね。それは役に立つものでないと思う。僕が興味のあるミュージシャンは、自分の育ったジャンルを超越して、まったく新しいものを作り出す。僕はブルーグラス育ちだけど、他の音楽を聴き始めて、ひとつのジャンルに縛られる必要はないと理解した。素晴らしい音楽があらゆるところにあるんだから


そんな言葉通り、彼らの音楽はブルーグラスを出発点に、フォーク、カントリー、ジャズ、ロック(レディオヘッドのカヴァーは十八番だ)、そしてクラシックまでを消化したもの。最新作『燐光ブルーズ』でも、途中の展開でビーチ・ボーイズ風コーラスまで出てくる10分超えの曲で始まり、アコースティックながらロックする曲もあれば、伝統歌もあるし、ドビュッシーやスクリャービンまで取り上げ、それらが違和感なく並んでいる。そして、歌われる主題はとても現代的なものだ。

アルバムの主題はスマートフォンやソーシャルメディアがどのように僕らの生活に影響を与えているかの考察で、こういった驚くべきテクノロジーに囲まれながら、どうやったら活気に溢れたリアリティのある人生を過ごせるだろうかという重要な問いかけをしている。この状況が僕らをどこに連れていくのか、といつも考えているんだ。テクノロジーを利用していたはずなのに、どこかで立場が入れ変わって、テクノロジーにどこかへ連れて行かれるんじゃないかとね


最後に、現在のアメリカーナ~アコースティック・ルーツ・ミュージックを「すごく良い状況だと思う。興味深い音楽がすごくたくさんあるよ」というクリスに、何故人びとはアコースティック・ミュージックに惹かれるのでしょう?と問うと、答えは意外に簡単なものだった。

いつだってみんなは電気がなくても演奏できる音楽が好きなんじゃない?(笑)。狭い部屋で電気がなくっても、人さえ集まれば、音楽を楽しめる。そこが僕も大好きだよ


以下、TAP the POP限定! クリス・シーリーによるメンバー紹介!!

僕ら全員がかなりの部分でブルーグラスで育っているんだけど、他の部分はそれぞれに異なるね。

フィドルのゲイブ・ウィッチャーは1~2歳の違いだけど、バンドで最年長のメンバーだ。ゲイブはロックで育って、若い頃はプログレみたいなバンドもやっていたんだ。彼は優れたプロデューサーでもあって、サラ(・ワトキンズ)のニュー・アルバムを手がけているね。ストリングスの編曲もやるし、いろんな才能の持ち主だよ。そうそう、ジャズ・ギターを勉強していたこともあるんだ。

ノーム・ピクルニーはメンバーを探し始めたとき、テルライド・ブルーグラス・フェスティヴァルで会って、そのバンジョー演奏にすごく感銘を受けて、僕のバンドの一員になるべきだと思った。ノームは古い伝統的なカントリー・ミュージックをすごく愛している。僕ら全員を足したよりも、そういった音楽をたくさん聴いているよ。

ベースのポール・コートはクラシック・ミュージックのものすごい知識を持っている。世界でも最も優れたクラシックの音楽学校、カーティス音楽院を卒業した。だから、クラシックをバンドに持ち込んでいる。

そしてクリッターことクリス・エルドリッジはブルーグラス界の王族の一員だからね。お父さんがセルダム・シーンのメンバー(ベン・エルドリッジ)なんだ。でも、彼もあらゆる音楽が好きで、ブルーグラス育ちの部分とそれ以外の両方を持ち込んでいる。ジャズ・ギタリストのジュリアン・ラージとデュオ・アルバムを出しているね。

メンバー全員が音楽に関してはいろんな方向性を持っている。彼らと一緒に音楽をやれて、僕はとても幸運だよ。彼らも僕と一緒にやれて幸運だと思ってくれたらいいんだけど(笑)


現代アメリカーナ/ブルーグラスのスーパー・グループが待望の初来日!!
2016年8月3・4・5日の『ブルーノート東京』公演の詳細情報はこちらから

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2006年結成。左からポール・ コート、ゲイブ・ウィッチャー、クリス・シーリー、クリス・エルドリッジ、ノーム・ピクルニー。『Antifogmatic』(2010)はグラミー賞にもノミネート。

Phosphorescent_Blues
『The Phosphorescent Blues / 燐光ブルース』
(ワーナーミュージック・ジャパン/Nonesuch)※国内盤 2016 7.20発売

dvd-how--to-grow-02
『ハウ・トゥ・グロウ・ア・バンド~パンチ・ブラザーズの作り方~』
(ジェットリンク/ポニーキャニオン)
※Blue-ray2枚組、DVD2枚組
※2016 7.20発売

アメリカーナとは?
フォーク、ブルーズ、オールドタイム、ブルーグラス、リズム&ブルース、カントリーといったアメリカン・ルーツ・ミュージックに影響を受けた音楽の総称。

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