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TAP the POP

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TAP the POPスペシャルライブイベント〜『音楽愛(ONGAKU LOVE)』リポート

2025.03.10

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それは、個人的な想いだけで始まった。


TAP the POP 音楽愛 (ONGAKU LOVE)
2025.2.28 FRI @横浜 ReNY β
OPEN18:00/START18:30

その時が来た。18時25分、主催者としての挨拶が始まる。昨年夏の終わり、横浜の海の近くのカフェバーで、冷牟田竜之氏との約30年ぶりとなる再会がきっかけで動き始めた、TAPthePOPの初イベント「音楽愛」。

今時オンラインでやれるはずのミーティングを、二人はわざわざ馴染みの店で待ち合わせをして、対面で何度も話し合いながら、そのテーマは決められた。

「TAPが掲げるいい音楽を広める、伝えるというテーマに、中野と冷牟田が信頼を寄せるミュージシャンを揃え、そこに未来を担う新しい才能を加えて紹介する。名付けて“音楽愛”」

それは「金曜夜」「月末」「横浜のライブハウス」「音楽性がバラバラな6組」でやるのは大きな賭けでもあった。普通なら慌ただしい月末は避け、休みの「土曜に都心のハコ」で、「音楽性や世界観が共通」するアーティストやバンドを集めて、「2組か3組」で演るのが常識の世界。一組あたりの演奏時間も確保されるから、固定のファンもそれならばと駆けつけてくれる。チケットもそれなりに売れてくれる。

しかし、“ライブイベント初主催”の自分にはそんなことは知る由もなかった。いい年をして得体の知れない情熱が放出されていたのか、そして百戦錬磨の冷牟田竜之でさえも、そこは強く指摘できなかったのだと思う。それくらい夢中になっていた。AIに相談もせず(その発想すらなかった)、試行錯誤しながら、相手の立場になりながら、自分なりにカタチにした。

「その年齢で新しいことをやるのって勇気ありますね」と言われたこともあった。でもやりたいから仕方がない。それに全ての逆を行くんだから、むしろ面白いことになるかもしれない。TAPthePOPは初めからいろんな音楽性や世界観の集合体。音楽を愛する人たちの合言葉だ。今更変えられない。辞められない。それで行くよ。


伝説は、いつも静かに幕開ける。


当日は不安をよそに、徐々にフロアに人が集まり始め、トータルで150名くらいのお客さんが参加してくれた。“真逆”の状況の中、何よりもお金や時間を使って来てくれた人たちに感謝します。そして協力してくれたスタッフやアーティストに感謝します。

ライブハウス規模でこんなスペシャルなイベントは他にないと自負しています。協賛サポートも何もない中での“DIY開催”で確かに背負うものもできたけど、おそらく二度とない特別な一瞬や機会を、みんなで共有できたことが嬉しかった。出演アーティスト6組それぞれが、何かが宿っているような物凄いパフォーマンスを披露してくれた。それがもう最高でたまらなかった。

いつもより言葉がたくさん出てこない。いつもより単純な言葉しか綴れない。小学生のような文章しか打てない。

なぜだろう。それは今、頭で考えていないからだ。あの時、心で思っていた感情だけが溢れ出てくる。もう35年以上も文章を書いてるけど、何かを本気で伝えるって、そんなものなのかもしれない。でも、こんなのでリポートにはならないよね。すみません。

今回はその代わり、素晴らしいリポートを送ってくれた人がいます。音楽愛のクラウドファンディングでライブイベントを支援してくれたcodaさんです。なんとライブ直後に書いてくれたそうで、全てが終わって帰路につく疲れ切った心を癒してくれました。ホントにありがとう。

今回は本人の許諾を得て、そのまま掲載させていただきます。第2回目の音楽愛イベント、いつかまたやりたいな。

TAPthePOPの書き手・プロデューサー/中野充浩


トップを飾ったのは、佐々木モトアキ渾身の一曲


「そうだ、音楽はこんなにも尊かった」

TAPthePOPの中野氏と、THESE THREE WORDSの冷牟田氏が発起人となって開催された本日のイベント、音楽愛(ONGAKU LOVE)。

クラウドファンディングの事前説明の時点で、私は「今この時代に、やっと音楽に投資できるイベントが来た」と喜んだ。迷わず最大の投資をし、中野氏に感謝を述べた。

そして当日を迎え、最高の音楽体験をした私は、目の当たりにしたものを拙い文章ではあるが伝えられたらと思い、文章を紡ぐ。

──佐々木モトアキ



全国の酒場や小さなライブハウスで鍛え上げた、佐々木モトアキのステージから始まった。

岩手出身のゲイバーのママの物語を唄にしたためた弾き語りを、持ち時間いっぱい披露していただいた。私は新潟出身なので、東北の雪と近しい雪を知っている。氏の歌を聴きながら、湿った重たいボタ雪が視界にちらついた。

雪の中息絶えたというママの身体に、しんしんと積もるその雪が手に取るようにわかる。東北の雪はとても冷たく、重い。

人生はまた時に冷たく、時に重くのしかかる。魂に刺さる歌声であった。


グロリア・ロッソ、美輪明宏で知られる「Bon Voyage」を12分にわたって披露してくれた。


実は40年も前に知り合っていた片寄明人と山口洋


──Chocolat & Akito

Vocal、AG/片寄明人
Vocal、Percussion/ショコラ


グレイト3とはまた違うショコラ&アキトの歌世界。片寄明人のソングライティングの抜群なセンス、深い音楽への愛を感じた。

なんて美しく甘く透き通ったハーモニーなのだろう。

Chocolat氏の透き通った小鳥の囀りのような歌声と、Akito氏の洒落たギターサウンド。そして何より、お二方のお子様の小さな合いの手。

お子様の合いの手を見ていたら、自然と指がスナップを刻んでいた。「音楽は聴けば自然に身体が動くものであり、それもまた音楽」と、音楽教師の母が常々言っていた。

きっとあの場にいた全員がこのステージの間、ミュージシャンでもあったのではないだろうか。

1. Kiss Me Black
2. 虹と雨
3. Time
4. One
5. ベランダ


「生ショコラさんを観たい」という声も高かった今回のイベント。彼女の“完璧”と言える歌や音の合わせ方に感動。


──山口洋(HEATWAVE)



演る曲はその場に立ってから決める。山口洋が最初に歌い始めたのは「トーキョーシティー・ヒエラルキー」

圧倒されるほどのギタースキル、当たり前だが、流石HEATWAVEの山口氏としか言いようがない。1人でバンドセットを組み上げていた、とでも言えば伝わるだろうか。

ルーパー(エフェクターの一種。生演奏を録音してループ再生したまま演奏ができる)をあそこまで使いこなしている人を初めて目の当たりにした。痺れた。その一言に尽きる。

そして氏が最後の曲で歌っていた「マイノリティでもいい」という言葉に、私はとても勇気づけられた。氏の歌の中でマイノリティの存在は目の不自由な方であった。私の中のマイノリティは発達障害であり、ジェンダーマイノリティであることだ。

だが、私はこうして音楽を楽しんでいる。

音楽の前でマイノリティはボーダーを失う。そこに垣根はない。ブラック、ホワイト、ダブル、ジェンダーマイノリティ、ハンディキャップ……そんなものは音楽の前では考えなくてもいい。改めてそう考えさせられる素晴らしいライブだった。


何かが宿る。そんな表現がぴったりな凄いステージ。初体験した人たちからは「震えた」との声が続出した。


楽しいMCを務めてくれたInterFMのDJ、古川タロヲ氏(左)。
右はイベントを企画主催したTAPプロデューサーの中野充浩。


トークショーに参加してくれた、TAPthePOPのロゴデザイン担当で、
Your Song Is Goodのギタリストでもある吉澤成友氏(右)。
左はTAPメンバーでもある編集ライターの宮内健氏。


新しい才能とバンドの本気を目撃した


──金子駿平 and The Red List

金子駿平(ヴォーカル/ギター)
中西和音(ドラム)
井上健太(ベース)
伊藤里文(キーボード)
松本啓聖(ギター)
山﨑くるみ(コーラス)


夏の終わり。冷牟田竜之氏から「金子くんっていう才能を見つけた」と言われ、以来、生ステージを見るのが待ち遠しかった。それは間違いではなかった。

氏の音楽を聴いた瞬間、私はサイダーを初めて飲んだ時のことを思い出していた。弾けるシュワシュワとした泡。水面にのぼり、泡沫と消える。それでいて透明で、爽やかで、どこか懐かしい。

私は年間100本ほどのライブに通うほどライブが好きなのだが、そこまでの数を通い詰める理由の一つに、「まだ見ぬ素晴らしい才能のバンドに出会いたい」というものがある。

今日がその日だ。冷牟田さんが見込んだ才能は確かだ、と確信した。素晴らしい才能と出会えたことが、今日の何よりの思い出だ。

1.光る靴
2.宇宙はなかったのに
3.竜胆(りんどう)
4.寝ても覚めても


「竜胆」を初めて聴いた時、すでに“名曲”であることに驚かされた。共作者である山崎くるみさんも、三重から駆けつけてステージに立った。

──Yellow Studs

Vo&Key 野村太一
B 植田大輔
G 中屋智祐
Dr 高野玲


今回、最長となる約30分のステージに、多くのイエスタ・ファンが駆けつけた。痛みを感じさせない野村太一の歌。この笑顔に救われた。

いま私が、もっと飛躍してほしいと願うバンドである。

vo.野村太一氏。ぎっくり腰になったとのこと、なんと私たちファンも当日の午前にブログで知らされた。
「太一さん、ステージ立てるのか……?」

シンプルな心配をしながら開演SEが鳴り、緞帳が上がる。
ーーあ、コルセットしてない。本気だ。

察した通り太一さんは本気で弾きあげ、歌い上げ続けた。額の脂汗が物語る、まさに鬼気迫る決死のライブだった。激痛だろうと最後までやり切るそのプロ意識。見習うべきだと痛感した。

このイベントでイエスタの魅力に取り憑かれた方がいらっしゃるなら、是非ワンマンにも足を運んでいただきたいと切に願うばかりだ。

1.コメディ
2.さえずり
3.見栄と意地
4.カナリヤ
5.シンデレラ
6.やじろべえ
7.ライブハウス


イエスタの魅力の一つ、ステージでのパフォーマンス。横浜の夢と空気が漂った熱いロックンロールショーだった。


codaさんが描いたイエスタのイラストリポート


身体が自然に反応する。TAPthePOPは続いていく


──THESE THREE WORDS

冷牟田竜之(A-sax/Tos)
KOSE(Bass)
荒木怜(Drums)
Seco.Sunchez(Per)
細谷侑生(Tp)
タケチエ(Key)
矢野(Ts)


冷牟田竜之には“プロフェッショナル”という言葉がよく似合う。イエスタの後にどんな登場をするのかと思いきや、何と荒木怜のドラムソロからスタートというサプライズ! さらにスカパラ時代の曲もアレンジして披露してくれた。

「そっか、音楽って実はすごく単純で、聴いた音に身体が反応するまま踊ればいいんだ」

そう音楽で教えてくれたのは、冷牟田竜之氏率いるTHESE THREE WORDSだ。

心地よいリズム、高鳴るサウンド、脳を揺さぶるブラス。氏のバンドとの出会いは昨年末、革ジャンブランド「STRUM」主催のイベントだったのを鮮明に覚えている。あの日のサウンドとアクトは、初見だったのに未だに忘れられない。

閃光のようなサウンドは私の鼓膜にしっかりと焼き付いていた。今回のイベント出演者が発表になった際、「またあのサウンドが聴ける!」と大いに喜んだ。

最初から最後までずっと踊っていた。また聴ける機会があるなら是非足を運びたい。


ベースのKOSE、そして所狭しと動きながらトランペットを吹く細谷侑生。とにかくカッコいい。THESE THREE WORDSの今後の活動に注目。


──「TAP the POP」の音楽コラム、私も若輩者ながらいくつか拝見したことがある。

「あの文章を紡いでいた方々が企画したイベントだから楽しいは保証されている」
そう思って最大の投資をした。結果はもちろん何一つ後悔はない、最高のイベントだった。

この一回だけではなく、ずっと続いていって欲しいと思う最高のイベントがこの世に誕生した記念日を、音楽を愛する皆様と共有できたことを誇りに思う。

リポート/coda、写真/朋-tomo-、キャプション/中野充浩


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