カントリー・ミュージックの大物アーティスト、グレン・キャンベルが81才で亡くなったのは2017年8月8日のことだった。
訃報を聞いたキャロル・キングはすぐに、追悼メッセージをツイッターで寄せた。
「RIP グレン・キャンベル。偉大なるシンガーで曲も書けるミュージシャン、そして素晴らしい楽曲を選んでカヴァーした人物」
RIP Glen Campbell – a great singer and musician who wrote and chose to cover great songs.@GlenCampbell https://t.co/iZzAU5UWD7
— Carole King (@Carole_King) 2017年8月8日
50年以上のキャリアを持つグレン・キャンベルは、キャロル・キングの言うとおりに、偉大なシンガーで自分でも多くの曲を書いたが、大ヒットした曲にはカヴァー曲が多かった。
ジョン・ハートフォードの「ジェントル・オン・マイ・マインド(Gentle on My Mind)」、ジミー・ウェッブの「恋はフェニックス(By the Time I Get to Phoenix)」、「ウィチタ・ラインマン(Wichita Lineman)」、「ガルベストン(Galveston)」、ラリー・ワイスの「ラインストーン・カウボーイ(Rhinestone Cowboy)」、アラン・トゥーサンの「サザン・ナイツ(Southern Nights)」などが思い浮かぶ。
ジミー・ウェッブが作詞作曲した「ウィチタ・ラインマン」の主人公は架線作業員、電線の工事夫で、アメリカ中西部の田舎町ウィチタの電線点検を仕事にしている。誰もいない荒野に伸びる一本道で、男は電柱に登って電線を点検しながら、孤独のなかで愛しい人を想って歌う。
ローリング・ストーン誌の「偉大な歌500曲」において192位にランクインしたとき、この曲は「(アメリカの)実体を捉えたはじめてのカントリー・ソング」として紹介された。
俺はウイチタ郡の電線の工事夫
州のメイン・ロードを車でまわっている
日が照るなかで負荷のかかった電線を探す
おまえの歌声が電線の中で聞こえる
おまえの声が聞こえてる
グレン・キャンベルが1968年に甘い歌声でヒットさせた後になって、トム・ジョーンズやフランク・シナトラ、R.E.M.、ジョニー・キャッシュらによってカヴァーされている。
ところでグレン・キャンベルには若い頃にもうひとつ、カントリーシンガーとしてではなく大活躍していた時代があった。
彼はギタリストとして腕利きのスタジオ・ミュージシャンであり、ザ・バーズ、ソニー&シェール、ナンシー・シナトラ、ママス&パパス、サイモン&ガーファンクル、フィフス・ディメンション、モンキーズ、フランク・シナトラ、エルヴィス・プレスリーなど、ジャンルの壁をこえてヒット曲を産み出す「レッキング・クルー」の一員として、数多くのレコーディングでギターやベースを弾いていたのだ。
〈参照コラム〉「レッキング・クルー」①~モンキーズの音楽を支えていた腕利きのスタジオ・ミュージシャンたち
とくにビーチ・ボーイズではレコーディングのみならず、リーダーのブライアン・ウィルソンが家にこもりがちになった1964年から65年にかけて、ツアーに参加してベースを弾きながらファルセットのコーラスも受け持っていたという。
そんな時期を経て1967年に「ジェントル・オン・マイ・マインド」がカントリー部門で、「恋はフェニックス」がポップス部門で、それぞれグラミー賞に選ばれた。ここからソロ・アーティストとしての飛躍が始まったのである。
晩年のグレン・キャンベルが大ヒット曲「ガルベストン」を歌いながら、途中から見事なソロ・ギターを聴かせてくれる下記の動画で、当時の片鱗が見られる。

グレン・キャンベル「ウィチタ・ラインマン」
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