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混沌としたアメリカに鳴り響いたMC5の叫び

2026.02.01

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みんなに騒ぎを起こしてほしいんだ!
兄弟、オレはここから世界に向けて革命を起こしたいんだ!


MCによる強烈なアジテーションと共に幕を開ける、MC5のライヴ・アルバムにしてデビュー・アルバム『キック・アウト・ザ・ジャムズ』。アンプを何台も並べて生み出される怒号のようなサウンドと過激な歌詞は、当時のアメリカ社会に大きな衝撃を与えた。

MC5が結成されたのは1964年。デトロイトでR&Bを聴いて育ち、チャック・ベリーやリトル・リチャードのカバーなどを演奏していた彼らだったが、イギリスからやってきたロックの洗礼、中でもザ・フーのような荒々しいサウンドに強い影響を受けると、アップテンポでエネルギッシュな音楽を追求していく。

一方では後期のジョン・コルトレーンやオーネット・コールマン、サン・ラといったフリー・ジャズにも影響を受け、長い即興演奏や実験的なサウンドにも積極的に挑戦していった。

そして1966年、ジョン・シンクレアとの出会いがバンドの方向性を決定づける。詩人、ジャズ評論家、活動家など様々な顔を持つシンクレアは、若者たちから支持を集めるカリスマ的な存在だった。(余談だが、ジョン・レノンとオノ・ヨーコは1972年に、その名も「ジョン・シンクレア」という曲を捧げている)

シンクレアに気に入られたことで、彼をマネージャーとして迎えたMC5は、荒々しいサウンドに加えて政治的なメッセージも積極的に発信するようになり、若者を中心に人気を集めていくが、同時に警察からも目をつけられる存在となっていった。

ギターのフレッド・スミスによれば、それは必然の流れだったという。

「イギリスじゃどうか知らないけど、少なくともアメリカでは、バンドでも、ある程度の政治意識を持たなければならない。アメリカの社会では今、ものすごくいろんなことが起きてるから」


海外ではベトナム戦争の真っ只中、国内ではキング牧師を先頭に黒人の公民権運動が大きな盛り上がりを見せるなど、アメリカは大きな問題をいくつも抱えていた。

そして1968年8月25日、バンドは1つの歴史的事件に巻き込まれることになる。

この日、シカゴのリンカーン・センターでは、大統領選挙を目前に民主党全国大会が行われていた。会場の周りは反戦デモの参加者たちに取り囲まれ、シカゴ市は暴動を防ぐという名目で、6000人の軍隊と7500の機動隊を配備し、街全体に緊張が走っていた。

そして午後11時頃、市が外出禁止令を発令すると一斉に警官隊と軍隊が動き出し、武力によるデモ参加者への弾圧が始まった。

MC5は、同会場で青年国際党が主催するフェスティバル・オブ・ライフに参加していた。何組かのバンドが出演する予定だったが、暴動に巻き込まれることを危惧して、他のバンドは全てドタキャンしてしまい、MC5は何時間もステージで演奏するハメとなった。

そこへ警官隊と軍隊による弾圧が押し寄せたため演奏は中止。メンバーは警棒や催涙ガスから逃れるようにしてステージを後にした。

バンドにとっては散々な1日だったが、その一部始終を見ていたのが、ドアーズの所属するエレクトラ・レコードのA&R、ダニー・フィールズだった。

そして9月にMC5はエレクトラとの契約を果たし、翌年2月に『キック・アウト・ザ・ジャムズ』でアルバム・デビューを果たすこととなる。

混迷するアメリカ社会で生み落とされたこのアルバムは、ローリング・ストーン誌をはじめとするメディアから低い評価を受けたにも関わらず、若者たちの支持を集めてビルボードで30位にチャートインした。

その後、時代の変化とともに各メディアから再評価され、2011年にNMEが発表した“もっとも偉大なライブアルバム50”では9位に、2015年4月にローリング・ストーン誌が発表した“史上もっとも素晴らしいライブアルバムTOP50”では8位にランクインしている。




参考サイト:
MC5 Japan(http://www.mc5japan.jp/


MC5『Kick Out the Jams』
Warner

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