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【スペシャルインタビュー】パディ・モローニ(ザ・チーフタンズ)──山口洋からの4つの質問 後編

2013.11.22

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パディ・モローニ──アイルランドの国宝級バンド、ザ・チーフタンズのフロントマン。
1962年の結成以来、彼らは様々なジャンルの音楽との融合を通じて、
アイルランド伝統音楽の魅力とケルト文化の深みを世界中の人々に伝えてきた。
自らの50年以上にも及ぶ活動を「素晴らしい音楽の旅路」と語るパディ・モローニ。
そんなアイルランドの音楽を源流とする男、HEATWAVEの山口洋が彼のもとに向かった。


聞き手・タイトル写真/山口洋(HEATWAVE)
構成・文/TAP the POP
取材協力/川島恵子(プランクトン)
アイルランド風景撮影/山口洋(HEATWAVE)

【スペシャルインタビュー】パディ・モローニ(ザ・チーフタンズ)〜山口洋からの4つの質問・前編

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常に取り組むべきことが目の前にある。神様に時間を残してくれるよう祈ってる。

Q3──長い旅路の中で道に迷われたり、どこに行っていいのか分からなくなったこともあると思うんですが、そういった時のパディさんにとって、北極星はどんな空に輝いていましたか?

実はそういう風に迷ったことは、正直言って一度もないんだよ(笑)。やるべきことにしろプロジェクトにしろ、これをやらなきゃ!ってことを、目の前に突き出されているような日々を送ってきたからね。たとえば『San Patricio』(2010年)というアルバムがあるけれど、あれなんかは構想25年だからね。ライ・クーダーが途中から関わるようになって、早くリリースしようってせっつかれてからも更に10年掛かった。とにかくその時々で当然これをやるべきだというものが目の前にあるので、不安を覚えたとかアイディアに事欠いたということが一切ないんだ。

今こうして話している間にも、4本のプロジェクトが僕を待っている。それが実際にいつ形になるのか、どのように形にしていくのかは分からないけれど、そうやって常に取り組むべきことがある。そのためにも神様がぜひとも僕に時間を残してくれるようにと祈るばかりなんだ。もちろん、家族との生活も大切にしたい。

長い歴史の中で一度だけ、どんなグループでもあるような辞める辞めないの話が出たことがあった。クリスマスを過ぎたら辞めるっていうメンバーがいて、そういう時期だったし1月になったら考えようって思ってそのままにしておいたら、なんとなくほとぼりが冷めて戻ってきてね。そういうメンバーもいれば、辞めていったメンバーもいたし。そこでメンバーが入れ替わったりして、それがまたありがたいことに落ち着いていって。だから本当に恵まれているんだ。支えてくれる人、協力してくれる仲間っていうのが、僕の周りには常にいてくれる。

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音楽なくして世界はないと思う。音楽を通じて人々にできることがある。

Q4──僕が最初に夢中になった音楽はロックでした。その音楽が生まれた場所を訪ねているうちに、だんだんと源流に近づいていって、アイルランドにたどり着いた。そう感じています。そして源流で教えられたことは「お前はお前の道を往け」というメッセージでした。僕がアイリッシュトラッドを演奏したとしても、コピーや研究にしかならないからです。パディさんが“アイリッシュであること”の意味を教えて頂けませんか?

アイリッシュ・ミュージックについては、偉大なるフォーク・アートなんて言われ方もするけれど、自分にとっては、おじいさんがフルート奏者だったということもあって、当たり前のように囲まれて育った音楽なんだ。家族や親戚そして友達を通じて、僕は自然と楽しみながら受け継いできたんだと思う。神様が与えてくれた才能として、その曲を1、2回聴けば覚えてしまうことが僕にはできたので、食べ物やワインのように生活の中になくてはならないものとして、ずっと音楽とともに育ってきた。音楽なくして世界はないと思ってる。

楽器が弾けない、歌が歌えないという人にとっても、「聴く」ということは、その人の世界において音楽というのは不可欠なものなんだと思う。僕にとってはエッセンシャルな欠かせないものだし、今度は音楽を通じて聴く人たちを哀切な気持ち、楽しい気持ちなりにしていくことが僕にとっての運命なんだと思う。本当にささやかな運命だけれどね。

ヒロシがチャリティ活動をやっているように、僕も2年前にハイチの子供たちのためにチャリティ企画を行った。ハイチの子供たちの合唱隊をケンタッキーに招いて、僕らもケンタッキーに行って、一緒に「アメイジング・グレイス」を演奏した。その印税収益をハイチの貧困の子供たちに送ったんだ。そして今度はダブリンで、貧しい子供たちのための野外コンサートをダブリン市長の企画で開催するよ。

こういう環境に生まれ、それが自然ななりゆきだったというのはすごく幸運だよ。逆にこういう環境に育たずに、勉強して音楽をやっているという人もいるだろうけど、ある程度のとこまで身につけてしまえば、あとは考えなくてもできる。音楽は放っておけば生まれてくる、というところまで達することができると思う。僕は今そういうところにまできているので、放っておくとどんどん浮かんできてしまって、飛行機の座席の前にあるエチケット袋とか、そこらへんにある紙にちょくちょくメモしてるんだけどね(笑)。だから、ヒロシのように別の大陸からわざわざアイルランドまで足を運んで、それを突き詰めようとしている方がいることがとても嬉しいし、光栄なことだと思ってるよ。(おわり)

*このインタビューは結成50周年公演として来日した2012年12月6日に行われました。

【スペシャルインタビュー】パディ・モローニ(ザ・チーフタンズ)〜山口洋からの4つの質問・前編

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パディ・モローニ
1938年アイルランドの首都ダブリン生まれ。ザ・チーフタンズの敏腕リーダー/イーリアン・パイプ、ホイッスル担当として、1962年の結成以来50年以上にも渡って、アイルランド伝統音楽の魅力を世界中に広めてきたプロデューサー/コンポーザー/アレンジャー。現在まで40枚以上のアルバムを制作、映画音楽も多数こなし、アカデミー賞/グラミー賞7回受賞。最新作は『Voice Of Ages』(2012)。日本には1991年の初来日。2012年で10回目の来日を果たしている。
The Chieftains – Voice of Ages

山口洋(やまぐち・ひろし)
1963年福岡県生まれ。1979年HEATWAVEを結成。ヴォーカル/ギターのフロントマンとして、ほぼ全曲の作詞作曲を担当。山口洋名義のアルバムとして、阿蘇でレコーディングした『made in ASO』(2007)や、宮城県白石市のカフェでライヴ録音した『Live atCafe Milton』(2009)がある。2011年には細海魚との共作『SPEECHLESS』を発表。また、ポール・ブレイディ、ドロレス・キーン、ドーナル・ラニー、シャロン・シャノン、キーラ、リアム・オ・メンリィなど、アイルランドを代表するミュージシャンとの共演も多い。東日本大震災以降は、福島県相馬市の人々たちと共に復興に取り組むプロジェクト「MY LIFE IS MY MESSAGE」を主宰。
オフィシャルBLOG:ROCK’N’ROLL DIARY

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