いまではラブ・ソングのスタンダードとなった「Just The Way You Are(素顔のままで)」だが、プロデューサーのフィル・ラモーンとの出逢いがなかったならば、日の目を見ることがなかったという可能性が高い。
デビュー以来、一貫してロック・アーティストとしてのイメージにこだわってきたビリー・ジョエルは、この曲が甘すぎると思ってアルバムに収録することに躊躇していた。
いろいろと異なるアプローチがどれもしっくり来なくて暗礁に乗り上げたような状態にもあったので、外そうかと思っていたビリーに入れるべきだと助言したのは、ビリー夫人だったエリザベスがマネージメントしていた歌手のフィービー・スノウで、「絶対にアルバムに入れるべきよ」って主張したのだ。
俺達が「本当に?」って聞くと、「収録しないつもりなの?」って逆に聞かれた。「分かんないよ」って答えると、「バカな人達ね」って言われた。
その意見に賛同したのが、初めてビリーのプロデュースを引き受けていたラモーンである。迷っているビリーに対して、ドラムにサンバのビートを取り入れるなど、曲を完成させるためにさまざまなアイデアを出してヒットソングに仕上げた。
そもそもは夫人のエリザベスに誕生日プレゼントとして贈った「素顔のままで」は、シングル化されると大ヒットし、後にウェディング・ソングの定番となった。
僕を喜ばすために変わろうなんて思わないで
君にがっかりしたことなんてないんだから
皮肉なことにエリザベスとは後に離婚訴訟でたいへんな泥試合を演じることになるのだが、わかりやすいテーマと洒落たメロディ、ジャズ・テイストの都会的なサウンドのこの曲のおかげで、ビリーは初めてポピュラリティを獲得したのである。
この曲が収められた5枚目のアルバム『ストレンジャー』は1978年のグラミー賞でレコード・オブ・ジ・イヤーに輝き、「素顔のままで」もソング・オブ・ジ・イヤーに選ばれた。
ただし日本で大好評だったのは、オープニングに印象的な口笛が入る「ストレンジャー」のほうだった。アメリカではシングル発売がなかったのに、シングル化されて「素顔のままで」を凌ぐ大ヒットになった。

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