TAP the SCENE

ダーティ・ダンシング/ミーン・ストリート〜史上最高のラブソング「Be My Baby」

2016.08.20

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これから観る映画のオープニングに、期待に胸躍らせる人は多いと思う。
──長い予告編が終わってスクリーンが広がり、映画会社のロゴマークが現れていよいよ本編が始まる。これから映し出される物語の入口。観る者の心の鼓動を左右する大切な数分間。

そんな中、誰だって釘付けになるような、ひときわ印象的なオープニングを放つ映画がある。その余韻が次のシーンになっても呼吸していて、全編に渡って一貫したスピリットを与えている。

今回紹介したいのは、ジャンルはまったく違うのに奇しくも幕開けに“同じ曲”を使用した映画2本。その曲があったからこそ、長く語り継がれるような作品になっているかもしれないほど、そのオープニングのインパクトが余りにも大きい。曲と場面が完璧に溶け合っていて、何年経っても何度観ても胸が熱くなってしまう。

まともに暮らそうと心の葛藤に苦しむチャーリー(ハーヴェイ・カイテル)と、その親友で酒・女・ギャンブル・借金とトラブル続きの日々を送るジョニーボーイ(ロバート・デ・ニーロ)のどうしようもない友情を軸に、チンピラな青春模様を“みすぼらしい街角”を舞台に描いた『ミーン・ストリート』(Mean Streets/1973年)。監督はあのマーティン・スコセッシで彼自身の自伝的作品。デ・ニーロとの黄金コンビの記念すべき第1作目となる。本作によって二人の輝かしい70年代のキャリアがスタートした。

物語は、チャーリーが暗闇の夢から目覚めるところから始まる。薄汚いアパートのチープなベッド。映像的には暗く決して美しいものではない。だが、チャーリーが物思いに耽るように再びベッドに倒れ込んだ瞬間、あの「ドッ・ドドッ・ドッ」という世界一有名なドラム音が響く。フィル・スペクター不滅の名曲として知られるロネッツの「Be My Baby」だ。

そこから手持ちのカメラで撮らえた、リトル・イタリー街の人々と主人公チャーリーとの交流フィルムをバックにクレジットが流れていく。聴こえるのはストリングスの調べ、甘美な声とコーラス、極上のポップなラブソング。はっきり言って世界観は一致していない。でも、そこが痺れる。

大編成のミュージシャンによる複数の楽器を一斉に演奏させ、すべてが溶け合い、深いエコーで包み込んで一つの塊となる。そんな“音の壁=ウォール・オブ・サウンド”で、独自の音世界を創り上げたフィル・スペクターの美学の頂点「Be My Baby」(1963年)。恋愛青春賛歌として既にスタンダードになっていたこの曲を、いきなりこんなギャップのあるシーンや映像にブチ込むセンスがたまらないのだ。

左胸直撃といえば、『ダーティ・ダンシング』(Dirty Dancing/1987年)のオープニングも忘れられない。裕福な家庭に育つ女の子が両親に連れられてやって来た退屈な避暑施設で、ダンスのインストラクターと出逢って恋に堕ちて大人になっていくという、物語的にはよくあるティーン系サマーロマンス。

しかし、ここでもやはり冒頭から流れる「Be My Baby」一発で、そんなことはどうでも良くなってしまう。その証拠に低予算のこの映画は大ヒット。同曲を収録したサントラ盤に至っては全米だけで1100万枚、世界では3200万枚も売れた。たった一曲が、すべてのムードを作って多くの人々の心を打つという好例だった。

ダンスの躍動感や恋の歓喜、古き良き時代への郷愁が見事に表現されたわずか2分にも満たないオープニングクレジットが、永遠になった瞬間だ。


『ミーン・ストリート』のオープニング

『ダーティ・ダンシング』のオープニング

♪Be My Baby


『ミーン・ストリート』


『ダーティ・ダンシング』


*日本公開時のチラシ
スクリーンショット(2014-06-24 18.16.44)
スクリーンショット(2014-06-30 15.29.43)
*このコラムは2014年7月16日に初回公開されたものに一部加筆しました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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