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ミーン・ストリート〜NYの下町に流れた不朽のラブソング「Be My Baby」

2019.10.25

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ある曲を聴くと、特定の映像や風景を思い浮かべることがある。人によってそれは個人的な想い出であったり、ミュージック・ビデオのワンシーンかもしれない。例えば、不朽の名曲であるロネッツの「Be My Baby」。あの冒頭の「ドッ・ドドッ・ドッ」というドラム音が響くと、反射的に2本の映画のオープニングが蘇る。

1つは『ダーティ・ダンシング』。そしてもう一つは今回紹介する『ミーン・ストリート』(Mean Streets/1973)。前者がこれから始まる青春の躍動の示唆的役割を果たしているのに対し、後者ははっきり言って世界観がまるっきり一致していない。映っているのはNYの下町の薄暗いアパートにチープなベッド。完全に意表を突く選曲なのだ。

(このあたりのことはこちらのコラムで)
ダーティ・ダンシング/ミーン・ストリート〜史上最高のラブソング「Be My Baby」

『ミーン・ストリート』は、マーチン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロのコンビ第1作としても知られ、反逆精神溢れる両者はこの作品を機にアメリカ映画界のメインストリームへと踏み込んでいく。チンピラやギャングを描かせたら右に出る者はいないスコセッシにとって、本作は後の『タクシー・ドライバー』『グッドフェローズ』『カジノ』『ディパーテッド』などへの布石となった。

「幼馴染みたちが違和感を感じたら失敗作。でも気に入ってくれた」と語っているように、リトル・イタリー地区で育ったスコセッシの自伝的要素が強い作品。自らが抱えていた想いや葛藤が詰まった当時の集大成と言い切る。

たった一ヶ月、夜の街をロケに撮影したというだけあって、『ミーン・ストリート』にはリアルな空気が呼吸している。そこが特筆すべき点だ。1973年といえば、『エクソシスト』『スティング』『燃えよドラゴン』など“完璧な映画”がヒットしていた年。

また同年は、ジョージ・ルーカスが『アメリカン・グラフィティ』を、テレンス・マリックが『地獄の逃避行(バッドランズ)』を、ピーター・ボグダノヴィッチが『ペーパームーン』を撮り上げ、続々と新しい才能が開花していた。そんな中で最も革新的だったのがスコセッシだった。

NYの下町、リトル・イタリー地区。厳格なカトリックの教養とマフィアの叔父の仕事との間で揺れ動くチャーリー(ハーヴェイ・カイテル)は、いつか救済されることを願いながら葛藤の日々を過ごしている。同じアパートのテレサからは山の手での同棲を迫られているが、チャーリーは今いる場所を離れたくない。

親友のジョニー・ボーイ(ロバート・デ・ニーロ)は、酒・女・博打に溺れるどうしようもないトラブルメーカー。しかも借金まみれでいつも尻拭いをする羽目に。それでも付き合っているのは、友を正しい道へと導けば“自らの救済”がチラつくからだ。映画はみすぼらしい街角(ミーン・ストリート)を舞台に、彼らの姿をドキュメントタッチで追っていく。

スコセッシといえば、オープニングのロネッツでも分かるように選曲センスが抜群の人。本作でもローリング・ストーンズの「Tell Me」「Jumpin’ Jack Flash」、デレク・アンド・ザ・ドミノス「I Looked Away」などが絶妙のタイミングで聴こえてくる。

ただ観て眺めているだけでいい。このゾグゾクする感覚は何なのだろう。

「Be My Baby」が流れる伝説のオープニング。


予告編

『ミーン・ストリート』

『ミーン・ストリート』


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『ミーン・ストリート』パンフレット、DVD特典映像

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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