ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー(Stand By Me)」は、1961年5月29日のビルボード誌R&Bチャートで1位になり、3週間後には全米チャートでも4位まで上昇した。
この曲が生まれたのは1961年という時代背景に目を向けると、黒人たちが「我々にも公平な権利を」と訴えた公民権運動の萌芽を、どこかに感じさせる作品であることに気づくかもしれない。
アフロ・アメリカンのベン・E・キングによって作られた原曲は、黒人霊歌の「Stand By Me」とゴスペル・ナンバーの「Oh Lord, Stand By Me」をヒントにしたものだが、それを極上のポップスに仕上げたのは二人のユダヤ系アメリカ人だった。
ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーは、エルヴィス・プレスリーが大きくブレイクした「ハウンド・ドッグ(Hound Dog)」や「監獄ロック(Jailhouse Rock)」を書いたソングライターのコンビで、ロックンロールの時代を先導したプロデューサーでもある。
二人はソングライターとしてその後も「ラストダンスは私に(Save the Last Dance for Me)」、「ラブ・ポーション・NO.9(Love potion number 9)」など、黒人が歌うR&Bのヒット曲を数多く書いた。
プロデューサーとしてはR&Bにバイオリンとチェロによるストリングスを導入し、ポップス的な味付けを加えて後世に大きな影響を与えている。
キングとリーバー&ストーラーは音楽の世界でいち早く、黒人と白人との垣根を取り払い、両者の文化を隔てていた大きな川に、ロックンロールとR&Bによって大きな架け橋を作る先駆者となった。
もし僕らが見上げている空が
崩れ落ちてきても
山々が海にまで崩れ落ちても
僕は泣かない 泣かないよ
そう涙はこぼさない
ただ 君が 君がそばにいれば
その後も様々なアーティストによってカヴァーされたことによって、「スタンド・バイ・ミー」はオールディーズのなかでも特に人気が高い曲となった。
1975年にはジョン・レノンが、ロックのスタンダードを収録したアルバム『ロックンロール(Rock’n’Roll)』で取り上げている。
作家のスティーブン・キングは1974年に長編小説「キャリー」でデビューした後、アメリカのごく平凡な町を舞台にした新しいタイプのホラー小説、モダン・ホラーで一時代を築き上げた。
小説がベストセラーになっただけでなく、1976年の『キャリー』を皮切りに『シャイニング 』『クリープショー』『クジョー』と次々に映画化されてヒットを記録した。
キングの短編小説「The Body」を原作にした映画『スタンド・バイ・ミー』は、広大な自然に恵まれたオレゴン州の片田舎に住む4人の少年たちが、“死体探し”の旅に出たひと夏の冒険を描いた映画だ。
映画監督のロブ・ライナーは映画化にあたって、キングの小説「ザ・ボディ(死体)」が前面に出るとホラー映画と間違われるので、少年たちの成長譚にふさわしいタイトルとして、「スタンド・バイ・ミー」を使いたいとマイク・ストーラーに相談した。
マイクに快諾してもらってから数日後、「テーマ曲にしたい」という連絡がロブから入った。
1986年に映画が公開されると世界中で大ヒットし、主題歌に使われた「スタンド・バイ・ミー」もリヴァイヴァル・ヒット、25年ぶりで全米チャートのベストテン入りした。
こうして世界中で新しい音楽ファンをつかみ、世代を超えて歌い継がれるスタンダード・ソングとなった。
(映画『スタンド・バイ・ミー』についてはこちらのコラムがオススメです)
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