映画『タクシー・ドライバー』

TAP the SCENE

タクシー・ドライバー〜大都会の孤独の中で愛を失った男がある日実行した壮絶なこと

2017.10.22

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都会で生きていると、孤独になることがある。それは避けられない試練として存在する。

例えば東京の都心。他の場所からやって来る人々でこの都市は形成されている。彼らの目に映っているのは東京ではなく、流行都市としてのTOKYOに他ならない。東京で生まれ育ってすぐそこに帰る場所があるような人には、この感覚を理解するのは難しいかもしれない。要するに並行する同時世界。TOKYOはパラレルワールドなのだ。そこで感じる孤独はとても虚ろで、いつも群衆の中にひっそりと潜んでいる。

映画『タクシー・ドライバー』(TAXI DRIVER/1976)は、ビルや人々や喧騒に囲まれながら生きざるを得なかった独りの若者の心の葛藤を描く作品だった。ニューヨークという大都会の片隅に生きる、一人の孤独なタクシー運転手が主役の物語。脚本を書いたポール・シュレイダーは「都会の孤独をテーマに描きたかった」と言う。

監督はマーティン・スコセッシ。主演はロバート・デ・ニーロ。二人も脚本を読んで、自分たちも同じ孤独を知る人間として共感した。メソッド演技で知られるデ・ニーロは役柄になりきるために、まずはタクシー免許を取得して実際にニューヨークの街を流した。彼は当時イタリアで『1900年』を撮影中だったが、内面からの役作りのためにわざわざ行き来していたのだ。

そしてわずか12歳のジョディ・フォスターも売春婦という衝撃の役で出演。実際の境遇にいる女の子との交流を通じてリアルに演じ、アカデミー助演女優賞にノミネートされて一躍有名になった。映画はカンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを獲得した。

雨はクズどもを歩道から洗い流してくれる。
奴らを根こそぎ洗い流す雨はいつ降るんだ?


トラビス(ロバート・デ・ニーロ)は26歳でベトナム戦争の帰還兵。大都会ニューヨークのマンハッタンでタクシー運転手の職に就き始めた。不眠症に悩まされる彼が勤務明けにやることといえば、映画館でポルノを観たり部屋で日記を書くことくらいだった。街を走っていると、麻薬や売春がはびこる汚れた退廃ぶりに頭が痛くなった。

毎日が過ぎて行くが終わりはない。
俺の人生に必要なのはきっかけだ。
自分の殻に閉じこもって一生を過ごすのは馬鹿げている。
人並みに生きるべきだ。


彼はある日、一人の女性を見つける。次期大統領候補のパランタイン議員の選挙事務所で働くベツィ(シビル・シェパード)だった。彼女が好きなクリス・クリストファーソンのレコードをプレゼントして、デートに出向くトラビス。しかしポルノ映画館に誘ってベツィは激怒。

以来、電話も無視され、花束の贈り物も突き返される。彼は彼女に悪態をつき再び孤独になった。こんなどうしようもない日々を「ここから抜け出して何かをやりたい」という言葉に変えて先輩のタクシー運転手に相談するが、「俺たちは負け犬さ。なるようにしかならねえ」というどうしようもない答えが返ってくるだけ。

どこにいても淋しさがつきまとう。
バー、車、歩道、店の中でも。
逃げ場はない。俺は孤独だ。
漠然とした毎日が長い鎖のように続いていく。


そしてトラビスの頭の中にある計画が生まれた。裏ルートで銃を買い、鈍った身体を鍛え上げ、射撃の訓練に取り組み始める。鏡に向かって「俺に用か?(You talkin’ to me?)」と言う映画史上最も有名なシーンの一つはこのあたりだ。

パランタイン狙撃を企てるトラビスは、売春婦のアイリス(ジョディ・フォスター)と出逢う。彼女がまだ12歳だと知ったトラビスは、「君はまだ子供だ。ちゃんとした服を着て家に戻れ。君を逃がしてやる」と説得する。ヒモでポン引きのスポーツ(ハーヴェイ・カイテル)に怒りを覚えて、「ああいう最低の人間は始末しなければ」と零す。そして頭をモヒカンに刈ったトラビスは遂に行動に出る……。

音楽的観点では、映画の全編に渡ってバーナード・ハーマンによる都会的なスコアが響く中、ひときわ印象的な旋律がある。馴染みのスーパーマーケットで遭遇した強盗を撃ったトラビスが、次のカットで部屋でTVを眺めるシーンに切り替わるところから流れ出す「Late for the Sky」だ。なぜかカリフォルニアのシンガー・ソングライター、ジャクソン・ブラウンの歌。だが、その愛の喪失を綴った歌詞はトラビスの孤独な心とシンクロしていた。

また目が覚める。もう偽りの心に耐えられそうにもない
僕は独りなんだ
僕たちが分かち合ったあの愛も、もう終わりに近づいたようだ
僕はどのくらい眠っていたのだろう?
どれくらい彷徨っていたのだろう?
夜の中をたった独りで……


映画のエンディング。トラビスが夜の街へ再び戻って行くその眼差しに、繰り返される孤独と一筋の狂気が潜んでいたのが忘れられない。

「Late for the Sky」が流れるシーン。孤独に捧げられた名シーンだ。

映画史上最も有名な演技の一つ「You talkin’ to me?」はアドリブだった!
12歳のジョディ・フォスターは実際の境遇にいる女の子と話してからこのシーンに挑んだ。

タクシー・ドライバー

『タクシー・ドライバー』


*日本公開時チラシ
タクシー・ドライバー チラシ
*このコラムは2014年9月10日に初回公開されました。

*参考/『タクシー・ドライバー』DVD特典映像

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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