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スティング〜スコット・ジョプリンのラグタイムを復活させた名作

2018.05.30

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当初は酷評されながらも名作となった『明日に向かって撃て!』(1969)から4年。ジョージ・ロイ・ヒル監督がポール・ニューマンとロバート・レッドフォードを主演に迎え、再び組んだのが『スティング』(The Sting/1973)。

説明するのも野暮なほどこちらも名作だが、大恐慌時代のシカゴを舞台に大仕掛けの詐欺を描いたこの物語は、演出も脚本も美術も衣装も音楽もすべてが“完璧”で、今でも観る者に映画の楽しさを理屈抜きにプレゼントしてくれる超一級作品。

アカデミー賞7部門(作品/監督/脚本/美術/編集/編曲/衣装)を受賞したのは当然のことながら、ロバート・ショウ、レイ・ウォルストン、チャールズ・ダーニング、アイリーン・ブレナンといった名バイプレイヤーの存在がこの作品の評価を高めたことを忘れてはならないだろう。

2人のスターも刺激を受けたに違いない。ニューマンはカードゲームのイカサマ行為を技術コンサルタントからマスターして代役なしで撮影に挑んだというし、三流詐欺師役のレッドフォードは当時のインタビューでこんなことを話している。

あえてカッコよく演じようとしないことでしか、いい演技は生まれない。カッコ悪く演じるというリスクを冒した分だけ、いい俳優になるんだ。


1936年のシカゴ。その日、フッカー(ロバート・レッドフォード)が裏通りで男を騙して手にしたのは思いもよらぬ大金。ベテランの相棒ルーサーは悪い予感を覚えるが、若いフッカーは調子に乗ってギャンブルですべてを使い果たしてしまう。

ルーサーの読み通り、それは大物ギャングのロネガン(ロバート・ショウ)の組織の金だったことから、二人の命は狙われる。無惨にもルーサーは消され、悲しみの中で復讐を誓ったフッカーは大物詐欺師ゴンドーフ(ポール・ニューマン)の元へ向かう。しかし、頼みのゴンドーフは酒浸りで売春宿に身を隠している有様だった。

物語は、結束したフッカーとゴンドーフが別人になりすまし、昔の仲間たちの協力を得ながら、大物ギャング相手に競馬絡みの大詐欺(約10億円)を仕掛けるというもの。そこにフッカーの顔を知る刑事や殺し屋、FBIが追ってきて……という流れ。間を挟んでくる構成も見事だ。

そして、とどめの一撃(クライマックス)まで映画の世界にどっぷり浸れるのは、やはりあのピアノの響き。スコット・ジョプリンのラグタイム・ミュージックがあってこそ。「The Entertainer」(1902)、「Pine Apple Rag」(1908)、「Solace」(1909)といった20世紀初頭の楽曲が、マーヴィン・ハムリッシュの手によって鮮やかに蘇る。監督には当初からジョプリンの音楽を復活させるアイデアがあった。

余談だが、この頃のニューマンとレッドフォードは同時代のロックスターも顔負けの悪ふざけ好き。それを象徴するエピソードがあるので紹介しておこう。

140キロで電柱に衝突して大破したポルシェの後始末に困ったレッドフォードは、ニューマンにプレゼントしようと思いつく。つまりある朝ニューマンが起きると、エンジンもシートもないポルシェが自宅の前に停められていた。そこでニューマンはやり返す。ボルシェをスクラップして木箱に詰めてレッドフォードの自宅に贈り返したのだ。

『スティング』のパーティでは、ヒル監督が犠牲になった。新しいスポーツカーで帰宅しようと会場から表に出ると、何と車は真っ二つに割れていた。監督の驚いた表情は、ニューマンにとって弁償代以上の価値があったという。

予告編


『スティング』

『スティング』


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『スティング』DVD特典映像

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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