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5月のナンバーワンアルバム⑤〜『スティング』/ポール・マッカートニーほか

2018.05.23

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「TAP the COLOR」連載第260回〜RED〜

1990年代以降、ビルボードのアルバムチャートは売り上げに基づいた集計方法に変わった。さらにゼロ年代に入るとネット配信が普及してCDやアルバムが売れなくなった。その影響もあって現在のチャートはほぼ毎週のようにナンバーワンが入れ替わり、すぐにトップ10圏外へランクダウンしてしまう(その代わりに年に数枚だけビッグヒットが生まれる)。だが70〜80年代はナンバーワンになること自体が困難で、言い換えればそれらは「時代のサウンドトラック」として確かに機能していた。5月にはどんなアルバムがナンバーワンになったのだろう?


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サウンドトラック『The Sting』(1973)
ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード主演、ジョージ・ロイ・ヒル監督という『明日に向かって撃て!』のトリオが再び生んだ名作。映画もいいが音楽もいい。スコット・ジョプリンのラグタイム・ピアノを使うアイデアは当初から監督にあり、『追憶』のマーヴィン・ハムリッシュを起用。これがハマりまくってサントラ盤も大当たりした(5週連続1位)。


シカゴ『Chicago VIII』(1975)
人気を不動のものとしたブラス・ロック路線から一時期脱却したシカゴが、再び戻って来た感があった8枚目のアルバム(2週連続1位)。「Old Days」「Harry Truman」などのヒットを収録。シカゴと言えば、バンドのロゴがデザインされたジャケット(毎作変わる)で何となく時代の移り変わりを実感できるのも楽しい。

ポール・マッカートニー『Tug of War』(1982)
70年代のウイングス時代は、ビートルズという余りにも巨大な足跡を意識しなければならなかったポール。迎えた80年は台頭したニュー・ウェイヴを意識しすぎて迷走。そして同年末、ジョンが永遠の眠りにつく。本作は新たな決意と「ポールの80年代」を印象づけたアルバム(3週連続1位)。プロデュースにジョージ・マーティンを迎え、ナンバーワン・ヒットとなったスティーヴィー・ワンダーとのデュエット「Ebony and Ivory」や自身のアイドルの一人であるカール・パーキンスとのデュエット「Get It」などを収録。ここにメロディメーカーが復活した。

ライブ『Throwing Copper』(1994)
オルタナティヴ・ロック全盛期の90年代半ばに大ブレイク。全米1位(1週)と800万枚以上のセールスを記録。「Selling the Drama」「I Alone」「Lightning Crashes」「All Over You」などが立て続けにヒット。ゼロ年代には人気が失速してしまうが、この頃の勢いは記憶に残る(日本ではほぼ無名)。1983年、REMが蒔いたアメリカン・インディーズの種。あの時、誰もこんな大木になるとは想像できなかったに違いない。

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