ダウンロード/ストリーミング時代の色彩別アルバムガイド
「TAP the COLOR」連載第31回(番外編)
ヒプノシス(Hipgnosis)
ヒプノシスは、ストーム・トーガソンとオーブリー・パウエルによって結成された英国のデザインチーム(1968年〜1983年解散)。トーガソンは、ピンク・フロイドのシド・バレットやロジャー・ウォーターズと学生時代より親交があり、彼らのアルバムのジャケットデザインを手掛けるようになった。フロイドとヒプノシスは、ロックにヴィジュアル革命を起こす。
フロイドの作品群に象徴されるように、アーティスト名やタイトルの文字を排除した、演出された写真や斬新なデザインだけの表現手段はヒプノシスの真髄であり、ロックのレコードジャケットが芸術的なキャンバスとなり得ることを証明した歴史的な仕事だった。70年代にはコンピュータ処理に対応するため、ピーター・クリストファーソンが新たに加入。
70年代ロックの肥大化するビジネス(レコード売り上げや大掛かりなツアー)と向き合いながらも、本来の“夢や物語”を綴ったアートワークは、ロックファンたちの胸に永遠に展示されることになった(日本でも実は松任谷由実の作品で慣れ親しんでいる人も多数)。そして80年代半ばにはMTV時代を見据えてビデオ制作会社へとシフトチェンジするも、あえなく倒産。
トーガソンはデザイン仕事を再開。90年代以降もフロイドのほか、オーディオスレイヴ、マーズ・ヴォルタ、ミューズなどの新世代バンドのヴィジュアル世界を創造した(2013年4月死去)。また、2012年のロンドン五輪開会式イベントでは、ヒプノシスとフロイドの作品群(『狂気』『あなたがここにいてほしい』『アニマルズ』など)がオマージュされていたことは有名。
(ヒプノシスが手掛けた主なアーティスト)*アルファベット順
10CC、AC/DC、バッド・カンパニー、シド・パレット、ブラック・サバス、ブランドX、デフ・レパード、ELO、EL&P、ピーター・フランプトン、ピーター・ガブリエル、ジェネシス、デイヴィッド・ギルモア、サミー・ヘイガー、ロイ・ハーパー、レッド・ツェッペリン、松任谷由実、ポール・マッカートニー、ナイス、アラン・パーソンズ・プロジェクト、ピンク・フロイド、ロバート・プラント、プリティ・シングス、レインボー、トッド・ラングレン、スコーピオンズ、アル・スチュワート、スティクス、Tレックス、ミック・テイラー、UFO、ウイングス、ウィッシュボーン・アッシュ、XTC、イエス
ピンク・フロイド『Wish You Were Here』(1975)
ピーター・ガブリエル『Peter Gabriel』(1980)
レッド・ツェッペリン『Houses of the Holy』(1973)
スコーピオンズ『Lovedrive』(1979)
『For the Love of Vinyl』
ヒプノシスのアルバムアートが収録された書籍作品集。めくっているだけで1970年代ロックの鼓動が聴こえてきそうな凄さ。200ページ以上に渡り、本人たちによって詳細に解説されている(英語版)。楽曲単位のダウンロード購入が主流の人にはぜひお薦めしたい一冊。
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*このコラムは2014年5月に公開されたものを更新しました。
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