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明日に向かって撃て!〜批評家たちの“知的想定内”を外れて酷評された伝説の名作

2017.09.23

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当時は人々はまさに映画を撮っていた。
今ではまず予算とスケジュールだ。誰かのボーナスや封切り日を気にかける。
この映画が色褪せないのは、映画を作ることの喜びだ。
映画とは喜びなんだ。
仲間意識が感染しなきゃダメなんだよ。


ポール・ニューマンは自ら主演した映画『明日に向かって撃て!』(Butch Cassidy and the Sundance Kid/1969)を振り返ってそう言った。

公開当時、この映画は批評家たちから酷評された。ユーモアやロマンス、悲劇や友情が絡み合った物語が、彼らの“知的想定内”を大きくはみ出していたことも理由の一つだが、何といってもそれまでの西部劇では考えられなかった「主人公が逃亡する」という姿が信じられなかったのだ。勇敢なジョン・ウェインやゲイリー・クーパーなら目の前の追っ手から逃げ出したりするだろうか?

しかし、1969年という時代に生きる大衆の見方は違った。『明日に向かって撃て!』が持つ“想定外”のストーリーと人間臭さに多くの人々は共感した。アメリカン・ニューシネマを代表する傑作となった大きな要因はこの点にこそある。

ウィリアム・ゴールドマンは、1890年代にアメリカ西部から南米にかけて悪名を轟かせた実在のアウトロー、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの物語を8年もの歳月を掛けて脚本にした。監督のジョージ・ロイ・ヒルは、その脚本を新しい感覚でフィルムに捉えた。

映画の始まりからしばらくはセピア色だが、やがて観る者を当時の風景へ誘うように徐々に色が付けられていく。物語途中でもセピア色の演出は活用されているが、1911年に南米ボリビアで射殺される壮絶なクライマックスとの対照的な時間の流れが心から離れない。

主演はポール・ニューマンとロバート・レッドフォード。まだ売れていなかったレッドフォードの起用は映画会社から猛反対にあうが、ニューマンの妻や監督の強い推しの甲斐あって無事キャスティング。本作で大スターとなった。レッドフォードと言えばサンダンス映画祭でも知られるが、その名はこの映画で演じたサンダンス・キッドに由来する。なお、このトリオはのちに『スティング』でもオスカーを獲得した。

数々の銀行や列車強盗を繰り返すリーダーのブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)と早撃の名手サンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)は、度重なる被害に怒った権力者が莫大な金で編成したやり手集団による執拗な追跡を逃れ、サンダンスの女エッタ(キャサリン・ロス)を引き連れて生活を改めるべく南米ボリビアへと向かう。

ボリビアに着くものの、ブッチが想像していたようなゴールドラッシュの土地ではなく、二人は元の銀行強盗に立ち返る羽目になる。アメリカの例の追っ手が現地にいることを知ると、当初の目的に戻って給料運びのガードマンとしての堅気な仕事を得る二人。だがある日、山賊たちに襲われて逆に殺してしまう。強く賢いエッタはそんな二人の死に様を見たくないと言ってアメリカに帰ってしまう。

ブッチとサンダンスは再び強盗稼業に手を染めるが、子供の密告によって土地の警官隊との銃撃戦に巻き込まれる。負傷しながらも「オーストラリアに行こう。今度は英語が通じるから」と言って次の夢を語り出すブッチ。アメリカからの手強い追っ手がいないことを知ると、勝算が芽生えた二人は拳銃片手に飛び出すことを決意する。包囲した軍隊の一斉射撃を浴びることも知らずに……。

ブッチとエッタが自転車に乗って束の間の牧場デートを楽しむシーンがある。作曲家のバート・バカラックはこの映像を見ながら「Raindrops Keep Fallin’ On My Head」(歌はB.J.トーマス)を書いたそうだ。

自転車デートのシーン


有名なラストシーン

『明日に向かって撃て!』

『明日に向かって撃て!』


*日本公開時チラシ
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*参考・引用/『明日に向かって撃て!』DVD特典映像

*このコラムは2016年4月20日に公開されました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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